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2023.10.22

不倫が起きやすい家庭、“科学的”4つの環境とは

日本ではメディアを騒がせることも多い不倫。不倫をしない人もいれば、繰り返す人もいる。その差を生み出す脳のメカニズムについて、1万人以上に脳科学的ノウハウを講演してきた脳科学者・西剛志が考察する。■連載「何気ない勝者の思考」とは

Unsplash/Adrian Swancar ※写真はイメージ

前回は日本人既婚男性の約4割が不倫をしている現状をお伝えしました。

ただ、不倫はその人の(脳の)問題だけでなく、周りの環境が生み出すこともわかってきています。今回は、近年のリサーチから判明した新たな事実にも触れたいと思います。

浮気する人は声が低い!?

面白いことに、世界的に声と不倫の関係が調べられています。

その結果、欧米でもアジアでも統計学的に次のような傾向がわかってきました(*1)。

【女性 → 声の低い男性を浮気相手として選ぶ(魅力まで高まる)】

低い声は女性に安心感を与え、好意を感じさせやすくなる効果が数々のリサーチで証明されています。つまり、低い声を持つ男性は、本人の意思によらず、女性にモテやすくなるのです。

そのため、いっそう不倫のリスクが高まってしまいます(ちなみに、男性は逆に自分よりも声が高い女性を好むようです)。

科学的に不倫を生み出す4つの環境

また浮気や不倫は自らの責任だけでなく、声以外の環境によっても生み出されることが数々の研究でわかっています。

1. 高い収入

年収と不倫の関係を調べたワシントン大学の研究では、年収が3万ドル(日本円で約450万円)を超えると、不倫歴が増える傾向にあることがわかりました(*2)。

特にこの傾向は男性に顕著で、女性は世帯収入が増えると逆に不倫をしない人が増えるそうです(*3)。男性は不倫するにもコストがかかるため、ある程度のお金が必要と言えるのかもしれません。ただ、これはあくまでも相関関係なので、必ずしも「高収入だから必ず浮気をする」訳ではありせんので注意してください。

2.夫婦が離れた場所にいること

同じワシントン大学の研究では、パートナー同士が日常生活で離れている時間が長いほど、不倫をしやすくなることが確かめられています(*3)。

つまり、リモートで2人とも自宅など同じ場所にいると、不倫リスクは下がるということです。研究では特に一方が家庭で他方が会社という環境が、最も不倫リスクが高まりました(*4)。

現在はスマホアプリの出会い系サイトなどの普及で、実情は少し変わってきているかもしれません。しかし、一般的に多くの不倫は、職場の異性が相手になっていることが多いため(*5)、不倫を作り出す温床となっています。出張が多い、単身赴任、別居している状況も危険を秘めています。

3.夫婦の収入差

女性がたくさん稼いでいる場合も、男性が不倫に走りやすくなる傾向があります。2015年のコネチカット大学の研究では、約2800人の18~32歳を調査した結果、収入の大きな割合をパートナーに頼る人は浮気をするリスクが高いことが分かりました(*6)。経済的に依存していると、男性は約15%が不倫をしていたそうです。

世帯収入の70%以上を男性が稼ぐようになると、再び浮気しがちになるため、男性が高収入になると浮気をするというデータとも一致します。一方で、女性は稼ぐほど不倫率が下がります。

有名女優や芸能人が収入の低い男性と結婚するとその後よく不倫される報道を見ることがありますが、まさに典型的な例と言えるでしょう。

勝者の思考

4.夫婦関係の満足度

不倫をする人は、心のどこかで何かしらの不満を抱えていることがわかっています。不貞に走る人は、夫婦関係の満足度が低かったり(*7)、セックスの頻度が少ない(*8)などが報告されています。また、女性でも結婚への不満が大きい人は浮気をしている人が多いそうです(*9)。

愛はウイルスが作っていた!?

このように私達は、不倫をしてしまう罠がいたるところに張り巡らされています。

しかも、地球上の生命界全体としては、そもそも一夫一婦制は稀で、哺乳類では約95%以上の動物が乱婚状態とも言われています。

こんな中、不倫はそもそも防ぐことができるのでしょうか。

そのヒントとなるのが、私達はどんな自由な環境にいても社会的な力が働く現象が観察されることです。世の中にはアフリカ諸国など一夫多妻を実現しているコミュニティがありますが、実際に複数の妻を持つ人は全体の10〜25%と意外に少ないのが事実です(*10)。

昔は「人には愛があるから」と冗談で言う科学者もいましたが、2016年の研究で、人類が一夫一婦制をとる理由は、経済的な理由だけでなく、ウイルスや細菌感染から守るためではないかということが示唆されています(*11)。

コロナの世界的なパンデミックは記憶に新しいですが、あのとき、いろいろな人と肉体的な関係を持つ人が無数にいたら、人類はかなりの数が死滅してしまったと予想されます。

つまり、感染から身を守るために、人は無意識に一夫一婦制を進化的に選んできたというのです。

誠実な人は脳の3つの場所が活性化している

不倫を防ぐもう1つのヒントが、誠実さの研究です。世の中には誠実な人と、平気で倫理的な行為から外れる人がいます。

その違いを研究していくと、誠実な人ほど、後帯状皮質、側頭頭頂接合部、内側前頭前皮質の3つの箇所が活性化していることがわかってきました(*12)。

実はこれらの部位は、全体から自他の区別をつけたり、視点を転換するとき、客観的に物事を見るときに働く場所です。

つまり、誠実でない人ほど自己中心的な視点(たった1つの視点)でしか状況を見ませんが、他者のことを考えたり、自分のキャリアや将来、大切な人が泣く姿を考えたり、視点を数多く持つことで、誠実さが得られることを示しています。

誘惑が起きたら、これをやったら最悪どんなことが起きるのか? リアルに感じられるまで一度想像してみる、声を高くしてみる、夫婦で過ごす時間を長くしてみるなど数々のことが、不倫を遠ざける鍵となるでしょう。危ないときは、是非思い出してください。

脳科学者・西剛志「勝者の思考」
西剛志/Takeyuki Nishi
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて1万人以上に講演会を提供。メディア出演も多数。著書に『世界一やさしい 自分を変える方法』『あなたの世界をガラリと変える認知バイアスの教科書』『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』など海外を含めて累計32万部突破。

<参考文献>
1. O’Connor, J. J. M., Re, D. E., & Feinberg, D. R. (2011). Voice Pitch Influences Perceptions of Sexual Infidelity. Evolutionary Psychology, 9(1)/Zhang J, Tao S. Vocal Characteristics Influence Women's Perceptions of Infidelity and Relationship Investment in China. Evol Psychol. 2022 Jul-Sep;20(3):14747049221108883.
2. Atkins, D. C., Baucom, D. H., & Jacobson, N. S. (2001). Understanding infidelity: Correlates in a national random sample. Journal of Family Psychology, 15, 735–749.
3. Janus, S. S., & Janus, C. L. (1993). The Janus report on sexual behavior. New York: Wiley.
4. Glass, S. P., 2003, Not Just Friends: Protect Your Relationship from Infidelity and Heal the Trauma of Betrayal, New York: Free Press.
5. Munsch, C. L., 2015,“Her Support, His Support: Money, Masculinity, and Marital Infidelity,”American Sociological Review, 8(0 3): 469–95. Yamaguchi, K. and Y. Wang, 2002,“Class Identification of Married Employed Women and Men in America,”Ameri- can Journal of Sociology, 10(8 2): 440–75.
6. Munsch, C. L. (2015). Her Support, His Support: Money, Masculinity, and Marital Infidelity. American Sociological Review80(3), 469–495.
7. Thompson 1983; Mark et al. 2011
8. Thompson, A. P., 1983,“Extramarital Sex: A Review of the Research Literature,”Journal of Sex Research, 1(9 1): 1–22/ Liu, C., 2000,“A Theory of Marital Sexual Life,”Journal of Marriage and Family, 6(2 2): 363–74.
9. Weis, David L.; Jurich, Joan, ” Size of Community of Residence as a Predictor of Attitudes toward Extramarital Sexual Relations”, Journal of Marriage and the Family, Vol.47 p173-78, 1985
10. Van Den Berghe, P. L. 1979. “Human family system: An evolutionary view” Elsevier Press; Fisher, 1989. p. 333
11. Bauch CT, McElreath R. Disease dynamics and costly punishment can foster socially imposed monogamy. Nat Commun. 2016 Apr 5;7:11219. doi: 10.1038/ncomms11219. PMID: 27044573; PMCID: PMC4832056.
12. Speer SPH, Smidts A, Boksem MAS. Cognitive control increases honesty in cheaters but cheating in those who are honest. Proc Natl Acad Sci U S A. 2020 Aug 11;117(32):19080-19091. 

■連載「何気ない勝者の思考」とは……
日常の何気ないシーンでの思考や行動にこそ、ビジネスパーソンが成功するためのエッセンスが現れる。会議、接待、夫婦やパートナーとの関係や子育てなど、日常生活のひとコマで試される成功者の思考法を気鋭の脳科学者・西剛志が解説する。

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TEXT=西剛志

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