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2026.06.19

なぜ富裕層は熱海を選ぶ? 次世代リゾート都市へ進化する熱海の今

ACAOの再編に象徴されるように、温泉観光地から海・食・アート・ホテル滞在が融合する、次世代のリゾート都市へ進化している熱海。その現状と未来とは。【特集 偏愛リゾート軽井沢&熱海】

「COEDA HOUSE」
建築家・隈研吾氏が設計した絶景のカフェ「COEDA HOUSE」。海抜約150mの高台でパノラマの相模湾を望む。

エネルギー溢れる熱海

熱海は、矛盾している。人口は減り、空き家率は日本トップクラスの52%超。かつて賑わった大型ホテルは老朽化し、街には昭和の記憶が色濃く残る。一方で、駅前には若い旅行者が列をなし、海の見える別邸に向かう海外のVIPたちがヘリコプターでやってくる──。

「熱海にある負の遺産を、どうポジティブなものに変えていくか。そこに難しさがあり、面白さがある。可能性も課題も同時に抱えたカオスな街なんです」

そう語るのは約20万坪の広大な敷地を持つリゾートパークACAO FORESTなどを運営するACAO SPA & RESORTのCEO山﨑勇輝氏だ。この会社はかつて熱海を代表する大箱ホテル「ホテルニューアカオ」を所有・運営していた企業である。

「『熱海』を『あつうみ』と読む日本人はいません、それほどブランド力があり、長い間インバウンドに頼らず内需だけでこの街は成り立っていました。古い旅館は古いスタイルのまま、変化しない。その時代を経て今、多くの人が変えようと動き始めています」

熱海の観光客は2010年頃に底を打ち、コロナ禍もあってホテルニューアカオの負債は2020年には120億円にものぼった。その再建に乗りだしたのが元寺田倉庫の中野善壽前CEOだ。山﨑氏はともに熱海の変革に努めてきた。同社は2022年にはホテルニューアカオを、アメリカの投資運用会社フォートレス・インベストメント・グループに売却。ホテルの名前も従業員も引き継ぐことを売却先に約束させた。そして2023年にグランドオープンしたホテルニューアカオは「昭和レトロを感じる」と今、多くの観光客を呼び寄せている。働く人も、熱海で長く愛されてきたホテルも、正しい売却で守り切ったのだ。

2021年には「アカオハーブ&ローズガーデン」と呼ばれていた庭園を大幅リニューアル。世界的建築家、隈研吾氏による建築を中心に、アート展示やイベントなどを展開し新たな客層を熱海に呼びこむことに成功した。

「古いまま変わらない、そのことに焦りを感じた若者たちも、Uターンを始め、古いマンションをリノベーションして新しい店や事業を始めています。古い温泉地なのに若い観光客が多いのはそのためでしょう。若い人はお金を落とさないと言われていますが、価値を感じたものには確かに落としていく。多くの若者が訪れてくれることは、街の可能性を広げてくれています」

静岡空港にプライベートジェットを駐めて熱海へ

また山﨑氏は熱海と世界の富裕層は相性がいいと説く。

「羽田空港は離着陸が多いためプライベートジェットの着陸許可が降りにくく、むしろ熱海近くの静岡空港のほうが降りやすい。そこからヘリですぐなので来やすいのです。実際にそのようにいらっしゃるVIPの方も。また海外の方は土地を購入する際に『地震は大丈夫か』を気にされます。熱海は地盤が強いため別荘地としても選ばれ始めているんです」

ACAO SPA & RESORTは過去にACAO FOREST内にラグジュアリーヴィラを建設する構想を発表。高台の森にスモールラグジュアリーなホテルが完成するイメージを世界に発信した。

この時点で、会社の負債は60億円まで減っていた。けれどなるべく早くこの開発が進むよう、民事再生法を申請し、ラグジュアリーリゾートを展開するシンガポールのTPCグループをスポンサーに得た。

「彼らは買い叩くことをいっさいせず、熱海に可能性を感じて投資をしてくれた。人々の心身の健康に貢献するリトリートをここにつくっていく計画です」

ACAO FOREST内ラグジュアリーヴィラ完成予想図
かつて発表したACAO FOREST敷地内にラグジュアリーヴィラを建てる計画の完成イメージ図。現在はACAO FORESTの土地所有権をTPCグループに売却。TPCグループが独自のリゾート計画を進行しており、ACAO SPA & RESORTはその開発計画をサポートしている。

負の遺産を街の財産に変えるべく自社での開発には固執しなかった。それよりも早い変化を望んだのだ。

「インバウンドが増えているとはいえ、近郊の温泉地に比べればその数字は少ない。海外へのアピールは必要です。同時に街にある古い物件を負の遺産とせず、リノベーションし新たな文化を生みだせるかどうか。そういうことも含め今、まさに熱海は過渡期にあり、ここからが大事になってくるのです」

ACAO SPA & RESORTは中野前CEOが行った組織改革にあたり、「よそ者、若者、変わり者が能力を発揮できる組織づくり」を掲げた。人口約3.2万人に対して、日帰り客も含めると毎年600万人以上が訪れる熱海は、そもそも「よそ者」を受け入れることのできる懐のある場所だ。

「熱海はもともと遊郭エリアがあり、昭和の時代にそこをスナックや飲み屋にしてきました。とにかくいろんな文化や時代が混じっている。街の居酒屋に、誰もが知る大企業の経営者の方が座っていたり、分け隔てない。そういう懐の深さこそさらなる発展の可能性だと思うんです」

熱海はまだまだ未完で、だからこそ面白い。

ACAO FOREST
「アカオハーブ&ローズガーデン」から2021年にACAO FORESTにリニューアル。隈研吾氏デザインのカフェや、自然の中でアートを楽しむプログラムART STAMP RALLYを展開。ハロウィンなど季節ごとのイベントに加え、ドッグフェスティバルや謎解きなども開催。オンラインゲーム「フォートナイト」内にフィールドを展開している。敷地内にはバラ園や、海に迫りだすようなブランコなどフォトスポットが多く設置されている。

山﨑勇輝氏

山﨑勇輝
ACAO SPA & RESORT 代表取締役CEO。1980年東京都生まれ。アパレル、外装建材会社で役員を務めたのち、2018年寺田倉庫入社。2019年に寺田倉庫グループのGVIDO代表取締役に就任。その後2020年にACAO SPA & RESORTに参画、2024年より現職。

不動産市況の今

熱海の地価は2021年の土砂災害の際に一時的に市場が冷えこんだものの、現在は回復し、好調です。坪単価も上がり、場所によってはさらに高値になっています。ホテルの宿泊稼働率も上がっており、外資も含めた開発計画がいくつか進んでいるので、今後かなり期待されるエリアであることは間違いありません。熱海は土砂の関係から開発許可が厳しく、そもそも土地が少ないため新たな建物が建ちにくく、リノベーションを前提としてリニューアルオープンしていくホテルが増えるでしょう。

また海外からも注目され始めています。アジア圏では「熱海ブランド」の人気が上がっていて、箱根など近隣の温泉地よりも物件がまだ安く買えるため、戸建ての購入を考えている外国人の方は多くいらっしゃいます。

熱海の土地の魅力はなんといっても海の見え方。絶壁から見下ろす、透明度が高く、穏やかな波の海の風景は圧巻で、さらに崖の上はプライベート感もあり崖の上の家がさらに人気になっていくと考えられます。

赤羽一
リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ ウェルスマネジメント事業本部

【特集 偏愛リゾート軽井沢&熱海】

この記事はGOETHE 2026年7月号「総力特集:偏愛リゾート最前線!」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=安井桃子

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