近年、人気が再燃している熱海に2023年12月、ラグジュアリー旅館リゾート「熱海・伊豆山 佳ら久(からく)」が開業。日頃、忙しく動き回るビジネスパーソンの癒しの宿として早くも評判と聞き、実際に訪れてみた。
文豪たちも愛した伊豆山、その絶景を抱く隠れ宿
「熱海・伊豆山 佳ら久」(以下、佳ら久)が位置するのは、熱海駅前の喧騒から少し離れた位置にある伊豆山。谷崎潤一郎、志賀直哉ら文豪が愛したことでも知られるエリアだ。
宿に到着し、まず通される最上階のラウンジに足を踏み入れた瞬間、かの文豪たちがなぜ伊豆山に居を構えたのかがわかる。目の前には、抜けるように青い空と煌めく水面、そこを渡りゆく舟影が織りなす相模湾の情景がパノラマのように広がっているのだ。「佳ら久」で過ごす時間が、心身を癒してくれるであろうことは想像にかたくない。
「佳ら久」に57室ある客室は、すべて温泉露天風呂付き。ゆとりのある室内とテラス、そこに設らえられた露天風呂も十分な広さがあり、すべてが相模湾に面している。さらに部屋の設備として、美容ドライヤー、スチーマー、電動のお香など、部屋での時間をより豊かにしてくれる“おもてなし”アイテムがそこかしこに配置されている。
佳ら久全体としては、ラウンジ2箇所、大浴場、ダイニング、ジム・スパというシンプルな構成なのだが、その心は「部屋で過ごす時間を存分に楽しんでほしい」ことにあるのだろう。
絶景・美食・おもてなし尽くしの滞在
先ほど、佳ら久全体の設備は「シンプル」という話をしたが、その質は俄然高い。まずはゲストラウンジ。最上階に位置する「間(AWAI)」では、アルコール類を含むドリンクや軽食のフリーフロータイムを設けている。蛸のマリネや生ハムなど、お酒に合うおつまみはもちろん、スイーツ類も充実しているので、小腹を満たすには最適だ。
もうひとつのゲストラウンジ「刻(TOKI)」はライブラリーのような空間で、スタッフが1杯1杯淹れてくれるコーヒーや紅茶を楽しめる。気分や時間帯に合わせて、ラウンジを使い分けられるのは嬉しい。
大浴場は、他ではなかなかない、開放感あるインフィニティ仕様。女性なら特に感じることだが、たとえ絶景風呂でも、安全面上、湯に浸かるとその景色を拝めなくなくことは多々ある話。しかしこの宿では、深さがある浴槽を採用することで、目隠しのパーテーション無しで直に相模湾を望むことができるよう設計されている。これは何者にも変えがたい贅沢だ。
サウナも2種類あり、がっつり汗をかいたあとはテラスで外気浴をし「ととのう」こともできる。
湯に浸かり、ラウンジで一息ついたあとは、いよいよ夕食タイム。ダイニング「六つ喜」では、その日、最も旬な地の物を用いた和食を会席スタイルで提供する。
ユニークなのは、メインを選べるプリフィックススタイルになっていること。3月・4月は「からすがれいの西京焼き」「クエ香味蒸し」「鰆と海老芋の煮卸し」の3種から選択可能で、“海の幸”別に選べるあたりは、相模湾に面したこの土地ならではだ。もちろん、海の幸はコース全体を通してふんだんに用いられていて、そのどれもが、味わい深くも飾らない、滋味に富んだ味わい。新鮮な素材を生かすことを計算した、丁寧な料理であることがわかる。
その丁寧な仕事は、翌朝の朝食の一品一品にも光っている。
メインである「釡炊きの白米」はゲストの朝食時間に合わせて炊き上げられ、目の前でお釜の蓋が開けられた瞬間、香り立つ湯気に思わずお腹が鳴る。そして、重箱に入った小鉢や煮物、焼き物すべてが白米に合い、朝から何杯でもお替りしたくなるのだ。
息を呑むような眺望と、その地ならではの自然の恵みをゲストに満喫してほしい。「佳ら久」には、その想いが細部にまで宿っているのだろう。部屋で過ごす時間、食事を楽しむ時間、湯を楽しむ時間。その間にある何気ない時間にもゲストがくつろげるような、おもてなしの心が行き届いている。
「熱海・伊豆山 佳ら久」には、心身ともに解きほぐしてくれる、上質な時間が流れていた。
熱海・伊豆山 佳ら久
住所:静岡県熱海市伊豆山630番地1
TEL:0557-55-7900
客室数:57 室
料金:デラックスルーム¥58,300、佳ら久スイートルーム¥140,000〜(2名1室利用時の1人当たりの料金。夕朝食付き)