英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第240回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
「おかず」って英語で言える?
先日のアメリカ出張の間、夜にショッピングセンターのフードコートで食事をテイクアウトしてホテルの部屋で食べるということを何度かやっていました。
ある夜もめぼしいものを探していると、タイ料理コーナーで好きなおかず3品が選べ、ライスもつけられるセットを発見。美味しそうだったのでその日の夕食はタイ料理に決定しました。ただ夜遅かったので炭水化物は控えたく、「ご飯はいらないから、もう1品おかずをもらえないかな? でも英語でなんて言えばいいんだろう……」と悩んでいたら、すかさず日本から同行していた先輩が店員さんに向かってこう言いました。
Is it possible to get one more OKAZU instead of rice?
(米の代わりにもうひとつおかずをもらうことはできますか?)
フレーズは完璧ですが、先輩は「おかず」を英訳できず、とっさにそのまま日本語で言っていました。あまりにはっきりとした「おかず」という日本語の発音、しかし堂々と大きな声でしっかりと伝えている様子を見て、思いました。
「こんなに堂々と日本語を混ぜ込んで……でももしかして通じるのでは……?」
OK! What would you like?
(いいよ、(あと1品)何がいい?)
店員さんは間髪入れずに笑顔でそう言ってくれました。
「OKAZU」見事に通じていました。
おじけず堂々と話せば、言葉って通じるのかも。英語の文法が正しくて、ちゃんと大きな声で言えたら、ひとつくらい日本語の単語入っていても、ニュアンスで通じるのかも。そう思ってなんだか感動してしまいました。
辞書にも載っていた“OKAZU”
念のため、スラングの英英辞書「Urban Dictionary」を引いてみたら。「OKAZU」、ちゃんと載っていました。以下のような説明でした。
Okazu=Japanese for side dish.(サイドディッシュの日本語)
例文:This okazu is delicious!(このおかず、美味しい!)
「OKAZU」は英訳するとside dishでいいんだということにこの時やっと気がつきました。
さすがにケンブリッジやオックスフォードといったちゃんとした辞書には載っていなかったものの、スラングの辞典にはしっかりと「OKAZU」の正しい意味が載っていて、またちょっと感動してしまいました。
スペイン語の「ピンチョス」とか「タパス」がそのまま世界中で使われているように、なんとなく「おかず」という言葉も世界の人々の間で広がりつつあるようです。特に私が行ったエリアは、日系人や日本人がかなり多く住んでいて、周囲の人たちもなんとなくいくつかの日本語単語をそのまま英語に取り込んでいるようでした。そのエリアの別のフードコードに行った際は「OKAZU」と書かれた「おかずコーナー」もありました。
とはいえ逆に、日系人がほとんどいないエリアだと、通じないと思われます。今回はたまたまタイ料理コーナーの店員さんが知っていただけ、あるいはOne moreというフレーズから推測してくれただけということも考えられます。ちなみにそのタイ料理コーナーには閉店間際の時間にかけこんでいたため、店員さんも早く店を閉めたくて、残っているおかずをほぼ全部お持ち帰りボックスに詰め込んでくれました。
その夜は1品増えたおかずを戦利品に、おじけず堂々と話すことって大事だなと噛み締めながら、先輩たちと分け合って美味しくいただきました。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
英語力ゼロのまま渡英、行けばなんとかなると思いつつなんともならなかった2年間のイギリス生活。帰国後はせっかく覚えたいくつかの英単語も忘れ去り、それでも時々は英語と格闘してみる現在、40歳。
「その英語でよく外国に行ったね」「めちゃくちゃカタカナ英語だね」と、なぜか日本人に笑われながらも、覚えたフレーズの数々。いつかはうまくなりたいから、恥を忍んで今日もブロークンイングリッシュ。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。人のイングリッシュを笑うな。