枕を見た第一印象は「この枕のどこがいいんだろう?」。整形外科医が開発したという枕は、まさに病院のベッドにでも置かれていそうな味気ないルックス。親子2代、40年以上の研究の末にたどり着いたというこの形状だが、あまり“効きそう”に思えない。ところが、実際にオーダーして試してみると、わずか5ミリの違いで寝返りの感覚が激変。さらに自宅で使い始めると、思いもよらない変化が起きた――。【特集 睡眠投資2026】

少し触っただけで首に走る激痛。まずは睡眠の悩みを診てもらう
洒落たショップではない。神奈川県相模原市の「16号整形外科」内にある山田朱織枕研究所は、まさに病院、治療院といったストイックな雰囲気だ。整形外科医として脊髄を研究してきた山田朱織先生の枕を治療道具として活用するアプローチは、肩こりや首痛などに悩む多くのアスリートや著名人に支持されている。
「普段の睡眠時間は4〜5時間。夜中に目が覚めてしまうことが多く、長時間眠ることができない……」
山田先生にこちらの睡眠の悩みを説明しようとすると、すっと先生の手が首に伸びてきた。
「ウギャ!」
華奢な先生の小さな手が首に触れた瞬間、全身がビクッとするほどの激痛が走る。
「首の奥のほうに疲れがたまっていますね。普段使っている枕があっていないと思います」

現在使用しているのは、2年ほど前にネットで購入した低反発素材の枕。ほどよく頭部を支えてくれるが、横向きになったときにやや沈みすぎる感覚があるので3回折ったバスタオルを上に置いて使用している。
これまで首痛を感じたことはなかったが、先生に触られてみると大きな負担があったことがわかる。
「さっそく合う枕を探してみましょう。ベッドに横になってください」
“まな板”のような直方体の枕を5mmずつ高さ調整。寝返りが驚くほど変わった
ベッドの横に置かれているのは、高さ5センチから10cmまで1cm刻みの枕たち。年齢、身長、体重を伝えると、「このあたりが平均ですね」と基準となる7cmの枕を渡され、ベッドに仰向けに横たわる。

研究所の雰囲気そのままに、飾り気がないぶ厚いまな板のような直方体。その名も「整形外科枕」だ。いつも使っている枕よりかなり硬く、かつ高さも低いように感じる。それでも仰向けになっていると、首への負担は感じない。だが、そのまま左右に寝返りをうってみると、横向き時の首の沈み込みが気になる。
「呼吸はしやすいですか? 頭が少し沈んでいますね。7.5cmを試してみましょう」
先生はそう言って、5mmのパッドを枕の下に入れる。たった5mmでそこまで変わるのかと思いきや、首まわりの感覚がまるで違う。頭の沈み込みはなくなり、寝返りもうちやすくなった。
「あと5mmかな」
続いて試したのは、高さ8cmの枕。見ただけでは、7cmとほとんど差がわからない。しかし横になって仰向けになると、その差は歴然としていた。
仰向けの状態だと、7cmの枕よりやや首があがり少し詰まるような感覚があるが、寝返りをうってみると、驚くほどにスムーズに体がクルクルと回る。
それまでの高さでの寝返りは、腰を支点に身体を動かし、それに脚や上半身がついてきて、最後に頭が回るという感覚だった。しかし8cmになった瞬間、身体に力をいれることなく、足先から首まで一気にクルッと回る。
「私は焼き鳥にたとえているんですよ(笑)。背骨という“串”を回すと、すべてが一気に楽に回る。それが理想的な寝返りなんです」
入眠時の気持ちよさより「寝入ってから」の姿勢を追求
山田先生は、父親から枕を使った治療法を受け継いできた。その研究は親子2代、40年以上にわたって続けられている。
「最近流行の低反発素材などの枕は、柔らかくて気持ちいいから入眠はしやすいんです。でも寝返りをうつと、首が枕に沈み込んで残ってしまうため、首や肩への負担が大きい。
その点、うちの枕は、真っすぐで硬めなので、高さをしっかりあわせれば寝返りがしやすい。入眠時よりも寝入ってからの正しい睡眠姿勢を追求して、この枕にたどり着きました。
父の時代は、使い込んだ座布団を真っ二つに切ったものを活用していたんです(笑)。硬さとフラットな形状が理想的だった。現在の整形外科枕はその進化系です」
わずか5mmの違いでも、寝たときの感覚には大きな影響がある。そのため山田朱織枕研究所では、「枕診断士」による対面計測を推奨している。
「人間の感覚ってすごいんですよ。でもその5ミリの差を毎日数時間続けていくわけですから、枕選びは大事なんです。年齢や体格、その時々の悩みによっても違いが出ますから、できれば定期的に計測してメンテナンスしてほしいですね」
“人間工学に基づいた……”という流行の枕と比べると、ストレート&フラットな整形外科枕は、「よく眠れそう」と思わせないルックス。しかしあのクルッとしたスムーズな寝返りの感覚が他にはないものだ。実際に寝てみてどのくらい違いがあるのだろうか。そう思うと、早くベッドに入りたくなってきた。

医学博士・整形外科医。16号整形外科院長、山田朱織枕研究所代表。1989年東京女子医科大学卒業。2002年に「枕外来」を開設し、2003年に山田朱織枕研究所を設立。2023年、シュプリンガー・ネイチャーより『枕の教科書』を出版。
困惑するほど睡眠時間が増えた!
もともと眠りは浅い方だと自認していた。睡眠時間は4〜5時間。40歳を過ぎたころから、明け方になると、少しの音、少しの光ですぐに目が覚めるようになった。そうなるともう眠ることはできない。深夜に寝て、7時前になると目が覚める。よほど早朝の用事でもなければ目覚まし時計を使うこともない。
だが、整形外科枕を使い始めてから、目が覚めたら8時過ぎになっていたということが増えた。睡眠時間が6時間以上に伸びている。これまでの朝のルーティンが崩れて、(いい意味で)困惑している。しかも体がやけにスッキリしていて寝起き時のダルさや体のギシギシ感もない。硬めの枕に対する違和感は2、3日でなくなった。寝入りもいいし、夜中に目覚めることもない。
整形外科枕、恐るべし。というか、本当に出合えてよかった!
フィット感 ★★★★☆
心地よさ(やわらかさ) ★★★☆☆
通気性 ★★★☆☆
寝返り ★★★★★
◆山田朱織枕研究所 神奈川相模原本店
神奈川県相模原市の「16号整形外科」内にある山田朱織枕研究所。枕診断士による対面計測で、整形外科の視点から5mm単位で自分に合う枕の高さを見つけていく。
住所:神奈川県相模原市中央区高根1-3-7 16号整形外科2F
TEL:042-776-2025
営業時間:9:00〜18:00
休み:木曜・日曜・祝日
◆山田朱織枕研究所 東京渋谷支店
住所:東京都渋谷区宇田川町19-5 山手マンション9階 903号室
営業時間:10:00〜19:00
休み:不定休(月1回程度)








