HEALTH

2026.09.19

「不眠」と「睡眠不足」の違い、加齢や睡眠時無呼吸との関係…ビジネスパーソンが知るべき「睡眠の真実」

メディアやSNSで睡眠に関する記事や特集が急増している背景には、「日本人の圧倒的な睡眠不足」という社会課題と、「睡眠ビジネス」の急速な拡大がある。その一方で、睡眠にまつわる情報があふれ、何が正しい情報なのかを見極める力が求められている。そこで、S’UIMIN睡眠ウェルネスアドバイザーの谷明洋氏に、ビジネスパーソンも陥りやすい「睡眠の今」について教えてもらった。【特集 睡眠投資2026】

「不眠」と「睡眠不足」の違い、加齢や睡眠時無呼吸との関係…ビジネスパーソンが知るべき「睡眠の真実」
Unsplash / Julia ※写真はイメージ

「眠ること」を意識しなければ、質の良い睡眠が得られにくい時代

ただ眠るだけの睡眠から、睡眠そのものに関心を持つ人が増えている。特に、アスリートやビジネスパーソンなどパフォーマンスを重視する人たちに多い傾向だ。なぜ、今、睡眠への関心が高まっているのか?

「いずれも想像を含みますが、大きく2つの理由が考えられると思います。ひとつは、睡眠が大切であると気づく人が増えているのではないかと思います。意思決定をする仕事に就いている人やアスリートなど、高いパフォーマンスや判断を求められる人たちが『しっかり眠ったほうが仕事のパフォーマンスが高くなる』と、実体験を伴って感じているのではないでしょうか。

もうひとつは、社会的な背景です。眩しい照明で深夜まで仕事もでき、会食やゲームなどの娯楽なども充実していますよね。油断すると、睡眠時間がどんどん削られてしまう。

つまり、眠ることを意識しないと良い睡眠を得ることができない時代になった、ということです。現に50年前の日本人は、夜10時には3人に2人はもう寝ていたというデータもあります(笑)」

改めて問う、睡眠の役割とは

そもそも睡眠の役割とは何なのか。

「よく、『睡眠=休息』と思われがちですが、眠っているからと言って『脳が活動していない』わけではありません。むしろ、脳は覚醒時よりも活発に活動することもあるし、多くの神経細胞が同期して、全く異なる活動をすることもあります。また、目覚めている間に得た記憶の整理や定着にも、睡眠は重要な役割を果たしています。

いろいろな表現の仕方がありますが、睡眠中は脳も身体も『休止』しているわけではありません。人間にとっては確かに『休息』ですが、脳や身体はその間も『健康維持や回復、成長のための活動をしている』と考える方が実態に近いでしょう。

例えば、レム睡眠中に脳の血流量が覚醒時より増えることもわかっていますし、ノンレム睡眠中に分泌される成長ホルモンは、『身体の修復』などに関わり、精神状態との関連も報告されています。特に子どもでは、睡眠は成長や心身の健康を支える重要な時間でもあります。

睡眠時間が短くなると、イライラや集中力の低下などさまざまな影響が現れます。また、身体機能や免疫力の低下につながり、重大疾患のリスクを高めます。睡眠は『多少悪くても死ぬわけじゃない』と考えられてしまうことがありますが、睡眠不足や睡眠の質の悪化は、“万病のもと”とも言えます。頑張りたいことを頑張るにはしっかり眠ることが大切です。眠ることで得られる価値をもっと多くの人に理解してもらえると嬉しいですね」

問題の正体を探る。「不眠」と「睡眠不足」の違い

睡眠の大切さを実感している一方で、「十分な睡眠を取れていない」という人も少なくない。例えば、「不眠」と「睡眠不足」はどちらも睡眠の問題としてよく聞く言葉だが、その意味と原因は大きく異なる。

「不眠とは、眠ろうとしても思うように眠れない状態。一方、睡眠不足とは睡眠の時間が確保できていない状態で、状態も原因も全く異なります」

【不眠】眠ろうとしても思うように眠れない状
例えば、睡眠時間を十分に確保しているにも関わらず、寝つきが悪い、途中で目が覚めるなどに悩んでいるケース。寝る前の行動、心理状態、カフェインやアルコールなどの「眠れない原因」を探り、取り除くことが必要。

【睡眠不足】睡眠の時間が確保できていない状態
たとえば、仕事や家庭などが忙しく、睡眠時間を5〜6時間しか確保できていないケース。夜更かしも要因のひとつとなる。睡眠の量は基本的に質では補えないため、睡眠時間を確保し、もっと眠ることが必要。

忙しいビジネスパーソンの場合、“眠れない”不眠よりも、そもそも“寝る時間を確保できない”睡眠不足のケースが多く、睡眠時間を延ばすことが本質的な解決になるのだという。

では、睡眠時間を確保しても「眠れない」「夜中に何度も目が覚める」というケースでは、どう考えればよいだろう。

「その原因は一人ひとり異なるので、大切なのは『こういう悩みなら原因はこれ、という安直な整理をしないこと』です。

例えば、野球選手が『ホームランを打ちたい』と悩んでいたとします。コーチはどのようにアドバイスをすればいいのか? おそらく、すぐに正解を示すことはしないでしょう。なぜなら、状況によって最適な対策が異なるからです。パワーが足りないなら筋トレを強化すべきだし、ボールがよく見えていないなら眼鏡やコンタクトの見直しが必要です。原因がわからないまま的外れなアドバイスをしても、ホームランは打てません。睡眠の悩みも同じで、原因を探し、一つひとつ対処していくことが大切なのです」

加齢、睡眠時無呼吸etc. 睡眠悪化を招く原因

加齢によって睡眠の変化が訪れることも知っておくべきだろう。年齢とともに実際に眠れる時間は徐々に短くなり、深い睡眠も減って、夜中に目を覚ましやすくなるのは自然な現象だと谷氏はいう。

「体内時計も早寝早起きの方向に変化する傾向があり、若い頃と同じように眠れなくなるのは『仕方のない』ことなのです。このこと自体を過度に心配する必要はありません。

また、客観的には良く眠れているのに『眠れなかった』と感じるというような、主観と客観に乖離が生じることがあります。眠れていないという“思い込み”が、心理的にも影響を及ぼすケースも。実際の事例で、『眠れない』と訴える人の睡眠を計測したところ、ほとんど問題なく眠れていることがわかり、気持ちがラクになって睡眠への満足度が上がったということもあります」

ただし、中年以降の特に男性の睡眠悪化にはもう一つ、注意すべき点がある。

「むしろ、この年代で特に重要なのは、『睡眠時無呼吸症候群(SAS)』です。睡眠中に呼吸が弱くなったり、止まったりする病気です。

加齢・男性・肥満などがリスクを高め、50歳を超えると男性の3〜5人に1人くらいが罹患している可能性もあります。また、自分自身ではなかなか気づきにくいことも厄介です。居眠り運転事故の原因としてニュースになることが増えていますが、もうひとつ怖いのは循環器系への負担が高まり、心筋梗塞等で突然死に至るケースがあることです。

だからこそ、『年齢だから』と片付けず、自身の睡眠の具体的な問題や原因を探ることも大切です。どこに問題があるのかを知ることが、睡眠の悩みを解決する一番の近道なのです」

谷 明洋/Akihiro Tani S’UIMIN睡眠改善アドバイザー
谷明洋/Akihiro Tani
S’UIMIN睡眠ウェルネスアドバイザー。1980年静岡市生まれ。株式会社S’UIMINで睡眠改善プログラムの開発・実施に従事。プロスポーツ選手や企業従業員、健康診断オプション検査の利用者など、年間200名以上の睡眠改善に携わる。睡眠脳波計測で得られた客観データと本人の主観を照らし合わせ、一人ひとりに最適な睡眠衛生指導を提供する。

TEXT=長谷川真弓

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2026年10月号

レストランこそ我が人生 ゲーテイスト2026

ゲーテ2026年10月号表紙

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2026年10月号

レストランこそ我が人生 ゲーテイスト2026

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ10月号』が2026年8月25日に発売となる。特集「ゲーテ・レストラン大賞 ゲーテイスト」では、美食四兄弟が選ぶ全44軒のとっておきのレストランをご紹介! 表紙は四兄弟こと秋元康小山薫堂中田英寿見城徹

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる