HEALTH

2026.01.31

ゴールデンタイムは嘘、靴下履いて寝てもいい? ニューヨークの専門医が教える「睡眠」の最新研究3選

インターネットやSNS上に流れてくる健康神話の数々。ニューヨークで活躍する専門医・山田悠史氏が、最新論文を元に、忖度なしでその真相を解き明かす。『最新科学が覆す 体にいいのはどっち?』(サンクチュアリ出版)の一部を抜粋して紹介。【その他の記事はこちら】

Unsplash / Greg Pappas ※イメージ写真

睡眠のゴールデンタイム(22〜2時)は本当にある?

・重要なのは就寝時刻より「最初の数時間の眠りの深さ」。
・体内時計は個人差あり。固定時間は万人向けでない。
・0時以降の睡眠は、心臓病などのリスク増のデータあり。

「夜の10時から2時は睡眠のゴールデンタイム。美容や健康に関心のある方なら、一度はこんな話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、現在のところ「夜10時〜2時という特定の時間帯が、特別に重要」という考え方には、十分な科学的証拠はありません。

「成長ホルモンの分泌」がその理由だったようですが、成長ホルモンの分泌にとって本当に大切なのは、「何時に寝るか」ということよりも、「寝入ってから最初の数時間の眠りの深さ」だと考えられています。夜8時に寝ても、10時に寝ても、最初の深い眠りのサイクルで、成長ホルモンは最も多く分泌されるのです。

また、私たちにとって最適な眠りのタイミングは、人それぞれの「体内時計」によって変わります。生まれつき朝型の人もいれば、夜型の人もいます。自分の時計に合わない時間に無理に眠ろうとしても、かえって逆効果になることもあるのです。

ただし、健康を考える上での目安はあります。複数の研究で、就寝が深夜0時を過ぎると、心臓病などのリスクが高まる傾向が示されています。そのため、因果関係が明確なわけではありませんが、「夜10時から0時の間に眠りにつく」ことが、健康のためには望ましいのでは、と考えられています。

「夜10時〜2時」という時間に縛られるよりも、自分に合う時間にベッドに入り、規則正しい生活を心がけること。それこそが、あなたにとっての「ゴールデンタイム」なのです。

分割睡眠でも、連続睡眠と同じレベルのパフォーマンスを発揮できる?

・睡眠の合計時間が足りていればOK。
・脳の働きや作業の質は大きく落ちにくい。
・分割睡眠だと日中の眠気は増えやすいので注意。

忙しい現代、まとまった睡眠時間を確保するのが難しい日もあるでしょう。そんなとき、「夜に数時間、朝方に数時間」というように、睡眠を分割しても、連続で寝るのと同じ効果が得られるのでしょうか。

実は、これまでの研究によれば、「合計の睡眠時間が同じであれば、脳の働きや作業のパフォーマンスに大きな差は出ない」とされています。むしろ、夜間の集中力低下を防ぐ効果も期待できる、という報告もあります。

しかし、違いは「体感」と「睡眠の質」にあります。分割睡眠をしている人のほうが、連続で寝ている人よりも、日中に眠気を感じやすい傾向があるようです。これは、睡眠の「構造」が変わり、深い眠りは増えるものの、浅い眠りや途中で目が覚める回数も増えやすくなるためと考えられています。

また、こうした分割睡眠を長期間続けた場合に、体にどのような影響があるのかについては、まだ分かっていない点にも注意が必要です。健康には悪影響ということも可能性としてはあり得ます。

しかし、やむを得ない事情で睡眠を分割せざるを得ない場合、合計時間が足りていれば、パフォーマンスの大きな低下は心配しなくてもよさそうです。総じて、日中の眠気を感じやすくなるなどを考えると、やはり基本は「まとまった質のよい睡眠」を目指すのがよいでしょう。

靴下を履いて寝るのは健康によくない?

・足を温めると足の血管が広がる。
・寝つきがよくなったり、深く眠れるようになる。
・締めつけない、通気性のよいものが安心。

「靴下を履いたまま寝るのは、体に悪い」と聞いたことがある人もいれば、「足が冷たくて靴下なしでは眠れない」という人もいるでしょう。この習慣、実際のところ健康によいのでしょうか、それとも悪いのでしょうか。研究を紐解いていくと、「靴下を履いて寝ること自体は、悪いことではない」と考えられます。それどころか、むしろ眠りにとってよい効果をもたらす場合もある、という報告もあります。

私たちの体は、眠りにつくとき、手足から熱を逃がして、体の中心部の温度(深部体温)を少し下げることで、スムーズに眠りに入ります。靴下を履いて足元を温めると、足の血管が広がり、この熱の放出が効率よく行われるようになります。その結果、寝つきがよくなったり、深い眠りが増えたりすることが、研究で示唆されているのです。

ただし、どんな靴下でもよいわけではありません。大切なのは、「締めつけすぎない、通気性のよいもの」を選ぶことです。きつすぎる靴下は血の流れを妨げたり、蒸れて不快感の原因になったりすることがあるので、ゆったりとしたリラックスできるものを選ぶ必要があります。

足の冷えが気になる方にとっては、自分に合った快適な靴下は、質のよい睡眠をサポートしてくれる心強い味方かもしれません。

山田悠史
マウントサイナイ医科大学(米国・ニューヨーク)老年医学・緩和医療科医師。米国老年医学・内科専門医、医学博士。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国各地の病院の総合診療科で勤務した後、2015年に渡米。現在は高齢者医療を専門に診療や研究に従事している。国内ではWEBマガジン『ミモレ』、ニュースメディア『NewsPicks』などで医療・健康情報を発信する他、AIと医療をつなぐ合同会社ishifyの共同代表を務める。アメリカでは、NPO法人FLATの代表理事として在米日本人の健康を支援する活動にも力を入れている。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』など。

TEXT=山田悠史

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