HEALTH

2026.01.29

GABA、ウコン、プリン体ゼロ。実は“意味ナシ”なのはどれ?

インターネットやSNS上に流れてくる健康神話の数々。ニューヨークで活躍する専門医・山田悠史氏が、最新論文を元に、忖度なしでその真相を解き明かす。『最新科学が覆す 体にいいのはどっち?』(サンクチュアリ出版)の一部を抜粋して紹介。【その他の記事はこちら】

Unsplash / engin akyurt ※写真はイメージ

GABA含有商品は睡眠の質を高める?

・口から摂って脳に届くか不明。
・睡眠の質が改善するという信頼できる結果はない。
・ 研究データの多くがGABA含有商品を製造している企業によるもの。

日本に帰国した際に宿泊した、とあるビジネスホテルの冷蔵庫に、GABA(ギャバ)入りのチョコレートが入っていました。そこには「睡眠の質を高める」と謳われており、夜に食べるように書かれていました。これは本当に科学に下支えされた宣伝なのでしょうか。

現在ある証拠に基づけば、「GABA含有食品が、睡眠に対して有効であるという根拠は十分に確立されていない」と言えます。これには、主に3つの理由があります。

ひとつ目は、「そもそも脳に届いているか、はっきりしない」という点です。口から摂取したGABAが、脳で働くために「血液脳関門」というバリアを通過して十分効果を発揮できるかどうかは、専門家の間でも意見が分かれており、まだ証明されていません。

2つ目は、「研究結果の効果が、ごくわずかで一貫性がない」点です。GABA製造企業の研究者の研究では「寝つきが約5分早くなった」という報告がありますが、これが体感できるほどの差かは疑問です。ましてや、「睡眠の質」そのものを改善したという信頼できる結果は、まったくと言っていいほど見当たりません。

3つ目は、「研究の公平性への懸念」です。睡眠に関する研究の多くが、GABAを製造・販売する企業によって行われており、結果がよく出やすいような偏りへの懸念があります。「睡眠の質を向上」という魅力的な言葉とは裏腹に、その科学的な土台は欠いています。GABAは、「食べるだけで、ぐっすり眠れる魔法の成分」とは言えないでしょう。

ウコンは二日酔いに効くのは本当?

・ウコンによる二日酔い改善の確かな証拠はない。
・細胞・動物実験の話が多い。
・最善策は飲酒量を控えることのみ。

飲み会の前にウコンのドリンクを飲む、という方は多いかもしれません。「これで明日は安心!」と思いたくなりますが、実際のところはどうなのでしょう。

実は、今のところ「ウコンが二日酔いに効く」ということを、科学的に証明した質の高い研究は「まったく」報告されていません。確かに、ウコンに含まれる「クルクミン」という成分には、肝臓を助けるような働きが期待され、動物や細胞レベルの実験では一定のデータも見られています。しかし、実験動物と人間は別の生き物。それが人間のつらい二日酔いの症状を軽くする、というところまでは、残念ながら確認されていません。

二日酔い対策として、日本ではウコンが有名ですが、イギリスではカリウムやナトリウムが、オーストラリアではビタミンB群が最も人気なのだそうです。国によって、商品名だけでなく、その成分までも大きく異なるところが、科学的な「お墨つき」のなさを物語っていると言えるかもしれません。有名な医学雑誌でも、「二日酔いを確実に防いだり治したりできる、と断言できるサプリメントや薬は今のところ見当たらず、唯一の方法は酒の量を減らすかやめることだ」とお酒飲みには残酷な結論を導いています。

結局のところ、二日酔いを防ぐのに、手っ取り早い「足し算」はなく、お酒の量をほどほどにするか、飲まないようにする「引き算」が、専門家が共通して推奨する、いちばんの対策と言えそうです。

プリン体ゼロビールなら、痛風にならない?

・アルコール自体が尿酸を上げる。
・プリン体は体内でもつくられる。
・種類より“総量”を減らすのが大切。

「プリン体ゼロ」と書かれたビールなら、痛風の心配なく飲めるような気がするでしょう。しかし、残念ながら「プリン体ゼロならよい」とは言えないのが実情です。

確かに、痛風の原因となるプリン体はカットされています。ですが、実は「アルコールそのもの」にこそ、尿酸値を上げてしまう働きがあります。

アルコールには、主に2つの作用があります。ひとつは、肝臓で新しい尿酸がつくられるのを促してしまうこと。もうひとつは、腎臓から尿酸が排出されるのを邪魔してしまうこと。つまり、「つくる量」が増えて「出す量」が減るというダブルパンチで、たとえプリン体がゼロでも、アルコールを飲むこと自体が尿酸値を上げ、痛風発作のリスクを高めてしまいます。

実は、プリン体は外から摂取をしなくても、約7割は細胞の新陳代謝に伴って体内で勝手につくられています。体の外からビールなどを通して摂取する量は全体の約3割です。さらに、その3割の大部分はお肉やシーフードで、ビールだけプリン体をゼロにしたところで、俯瞰で見ると、あまり大きな効果にはならないという悲しい現実があります。

このため、世界の専門機関も、痛風のリスクがある場合は、お酒の種類にかかわらず「アルコールそのものの量を控える」ことを強く推奨しています。「プリン体ゼロ」かどうかではなく、お酒全体の量をコントロールしないと「痛風ゼロ」にはできないのです。

山田悠史
マウントサイナイ医科大学(米国・ニューヨーク)老年医学・緩和医療科医師。米国老年医学・内科専門医、医学博士。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国各地の病院の総合診療科で勤務した後、2015年に渡米。現在は高齢者医療を専門に診療や研究に従事している。国内ではWEBマガジン『ミモレ』、ニュースメディア『NewsPicks』などで医療・健康情報を発信する他、AIと医療をつなぐ合同会社ishifyの共同代表を務める。アメリカでは、NPO法人FLATの代表理事として在米日本人の健康を支援する活動にも力を入れている。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』など。

TEXT=山田悠史

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