カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。第41回は「医療情報の見分け方」。前回取り上げた「レプリコンワクチン」は、危険性を煽るSNS投稿が増加したことで、製造元のメーカーが「科学的根拠がない」と緊急声明を発表する事態に。いわゆる“ガセ情報”が沸く原因や確かな情報の選び方を、前回に続いて米国内科専門医の山田悠史先生にたずねた。

なぜ人は誤情報を信じてしまうのか?
堀江貴文(以下堀江) 前回に引き続き、米国内科専門医の山田悠史先生にうかがいます。素晴らしい技術で完成したレプリコンワクチンに対して、日本では陰謀論やデマ情報が目立ちましたがアメリカはどうですか?
山田悠史(以下山田) ワクチンに対する陰謀論は一時期より減っていますが、存在感自体は大きいです。巨額のお金が動くことが動機のようですね。ワクチンの誤情報を流して不安を煽り「正しい情報はこの本だ」とうたって出版したり、安全対策のグッズを販売したり。また、クリニックを会員制にしてセンセーショナルな誤情報を提供し続け、高額の商品販売、年会費、診察料で稼ぐ例もあります。
堀江 踊らされてますね。
山田 そのとおりです。科学的根拠を積み上げていくには時間がかかりますし、論文ひとつを仕上げるのにもすごく日数がかかります。片や陰謀論は、想像や思いつきで、次から次へと荒唐無稽な空想ストーリーを作れてしまうわけです。
堀江 単なる空想で簡単に稼げるわけですね。日本でも「学会」という名前を持つ組織がレプリコンワクチンが危険だと主張して社会的なインパクトを与えましたが、製造販売を行っているMeiji Seikaファルマが緊急声明で事実誤認及び科学的知見に基づかない点を指摘。反ワクチン団体を名誉棄損で提訴するという行動を起こしました。厚生労働省なども事実誤認であると発表しましたが、一時期は、誤情報を信じた方々が「レプリコンワクチン打った人は入店禁止」などと言ったりしていましたね。
山田 レプリコンワクチンの臨床試験は18歳以上の成人1万6000人で行いましたが、接種人数が10万〜20万人に増えてくれば、稀有な副反応が出現する可能性はあります。それはどんなワクチンにも言えることですが、おそらく想像の範囲内になると思います。それでもなお不安が消えないという方は、これまで使われてきたワクチンの接種という選択肢もあるので、冷静に判断してほしいです。
堀江 誤情報を信じてしまうのはなぜなんでしょう。日本では医療やヘルスケアの関係者でも信じている人がいますよね。
山田 日本の医学教育はかなり優れていると思いますが、臨床的な効果を評価するエビデンス(科学的根拠)の教育がカリキュラムとして導入されたのは2001年ぐらいなんです。
堀江 21世紀になってから。
山田 私の医学部入学は2002年なので、私の世代くらいからはきちんとエビデンス教育を受けています。一方、いわゆる“反ワクチン布教”は、私より高齢世代の医師に多く見られます。医学部卒業後に自助努力で学ばない限り、その世代の医師はエビデンス教育を受けていないことも影響している可能性があると思います。
堀江 看護師となるとエビデンスの教育すらされていない?
山田 それほど深くは受けていないかもしれません。エビデンス・ベースド・メディスンを解する力をつけるには、ある程度時間が必要です。看護教育となると、人に寄り添うことだとか採血などの実地のトレーニングも重要ですから、時間をかけてエビデンスをしっかり理解する力を身につけるところまでは、行き届いていないかもしれません。
堀江 なるほど。
山田 そしてもうひとつ。陰謀論って荒唐無稽でも、医師とか政治家とか知識層にも響くことがあります。ある程度社会的地位を確立した人でも、「他では聞けない話」とか「限られた人しか知らない話」に価値を感じ、特別な情報を私はいち早く知ったという快感や誤った優越感が、誤情報を摑まされる原因になることもあるようです。
自分の健康を守るための情報の取捨選択力を身につけよ
堀江 誤情報を摑まされないためにはどうすれば?
山田 ソーシャルメディアの時代は、情報をうまく取捨選択することを学ぶ機会が必要です。現代の子供世代はデジタルネイティブ、ソーシャルメディアネイティブでありながら、教える世代がネイティブではないので、教育できる人が少ない。とはいえ、非医療者で上手に情報を選択できている人は私の周りにもたくさんいるので、そういう力は、大人になってからでも獲得できるということですよね。
堀江 情報を取るのはまずネットですが、医療情報はどこから取るのがいいと思いますか?
山田 ワクチンの確かな情報を得るなら、日本感染症学会とか厚生労働省、お住まいの自治体や保健所にアクセスしてください。それぞれの情報を見れば、「厚生労働省がレプリコンワクチンを承認」とか、「シェディングの事実はない」などの発表を確認できます。危険性を主張している団体はわずかだし、その団体が感染症関連団体ではないとわかれば、「なんだか信頼度が低そうだぞ」と気づけるでしょう。また、早合点せず継続して動向や情報を見ることも大事です。団体メンバーの名前や文章が消えているなど、怪しい変化も見て取れると思います。
堀江 いくつか見比べることで「信頼度が低そうだ」とわかってきますよね。
山田 信頼度が低い情報はどうしても出てくると思うんです。誰だって間違うことはありますから。なので、正しい・間違いの二元論で判断しないで、「確からしさ」で情報を見る。二元論で見ていると、一度の間違いだけで「この人たちは間違う団体だ」という判断をしがちですが、「確からしさ」というものは動的で、100%から0%の間で常に動いています。
厚生労働省の場合は、その領域の専門家たちによる専門部会、つまり専門家の集まりで意見を出し合った結果として、「集合知」みたいな報告書や意見書が出されます。情報元を比較することで、間違う可能性が低い組織、「確からしい」「確からしさの度合いが高い」がわかってくると思います。
堀江 調べることで、間違った判断を防ぐことができますね。
山田 はい。食事とかお酒とかの健康習慣と同じで、情報を取捨選択する力は、自分の健康を決定づける要因となりうるので、そういう力を育むのはとても大切なことだと思います。

山田悠史/Yuji Yamada
1983年岐阜県生まれ。慶應義塾大学医学部を卒業後、全国各地の病院の総合診療科に勤務。2015年より、ニューヨークのマウントサイナイ大学関連病院の内科に勤務、米国内科専門医を取得。現在はマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。医療関連の著書も手がけ、2025年6月に新刊が発売予定。
堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。著書も多数。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』が好評発売中。
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