カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載の第59回は「アイフレイル」。「視覚の維持こそ大事で、子供の頃から老年期にいたるまで人生のライフステージごとに治療やケア方法を見直すべき」と語る「ICLクリニックKITTE大阪」院長・大槻光伸先生に話を聞いた。

“目の衰え”であるアイフレイルの予防は、幼少期から始める必要あり
堀江貴文(以下堀江) 今回は「ICLクリニックKITTE大阪」の大槻光伸院長と一緒に、人生のそれぞれのステージにおいて重要な「目のケア」についてお話ししたいと思います。眼科の学会等でも「アイフレイル」という言葉が広く認知されるようになってきましたね。
大槻光伸(以下大槻) そうですね。アイフレイルとは、加齢に伴う眼の機能が低下した状態、またはそのリスクが高い状態のことを指します。視覚情報は非常に重要で、一般的に情報の約8割は視覚から入るといわれています。「しっかり見える状態」を良好に維持することは、将来の病気の予防やQOLの向上に大きく影響します。
堀江 僕もそろそろ老眼期に入りますが、老眼の症状は40歳くらいから始まるとか。
大槻 はい。個人差はありますが、老眼は裸眼で見える一番遠くのピントから、手元にピントが寄らなくなる現象です。よく、「老眼は近視の方には起こらない」といわれますが、そんなことはありません(笑)。気づきにくいだけです。
堀江 今から始められる、具体的な対策はありますか?
大槻 目の状態にもよりますが、基本は眼鏡やコンタクトレンズで適正に矯正することです。そのうえで、点眼治療も対策として挙げられます。瞳孔を小さくし、光を絞って見やすくする方法で、「ピロカルピン」という古くからある成分を使うのですが、老眼対策として日本では認可されていない状況です。ただ、一定の効果はあるようで、治療法のひとつとして悪くないと思います。
堀江 僕も点眼薬を使っています。効いているという実感はあまりないですけど、やらないよりはやったほうがいいかなと。
大槻 もうひとつは、目の中にICL、IPCLなどの眼内コンタクトを入れる方法です。多焦点レンズを入れる方法も有力な選択肢になっていますが、国内での症例はまだ少ないです。
堀江 最近は、液体レンズでピントを自動調整するウェアラブルデバイスもありますよね。
大槻 眼鏡型のものですね。
堀江 細かな作業をするような職人さんで、老眼で手元が見えづらくなってきた方とかにはお薦めできますよね。
大槻 見たいところにピントが合わないと眼精疲労の原因になりますし、状況に応じて使いこなすことは大切です。肝心なのは、目のケアは「見える・見えない」の問題ではないということ。視力の低下は、認知機能の低下や認知症リスクとの関連も指摘されています。「識字」、つまり文字を読める状態を保つことが重要なのです。
堀江 そう考えると、高齢者こそタブレットを活用したほうがいいですよね。ズームや明るさも調整できるし、手元の文字が見えれば、脳への刺激にもなるわけですから。
大槻 そうですね。ところが、高齢になると白内障になる方も多く、ほとんど見えない状態になってから病院へ来る人も少なくありません。
堀江 目のケアは高齢になってからではなく、もっと早い段階からってことですね。
大槻 はい。例えば子供の近視は、将来的に失明や緑内障などのリスクを高めます。なので、幼少期から近視の進行を抑えることが重要なのです。
堀江 子供のうちからどんな対策ができますか?
大槻 まずは、生活習慣の改善です。最低40分、できれば2時間は屋外に出ること。「部屋を明るくして、離して見る」「じっくり見た後は休憩する」ことも大切です。30−30−30ルールといって、30センチ以上離して見て、30分ごとに30秒は休憩する。たかが30秒と思うかもしれませんが、かなり違うようです。
最先端の目のケアに注目せよ
堀江 子供の近視の治療法は?
大槻 点眼治療(アトロピン)ですね。1日1回の点眼で、近視の進行を抑制するものです。他には「オルソケラトロジー」といって、夜中につけて寝ることから“ナイトコンタクト”と呼ばれる方法もあります。コンタクトレンズで角膜の形状を一時的に変形させることで、日中はコンタクトなしで快適に過ごせます。
堀江 近視の進行を抑えるコンタクトレンズもありますよね。
大槻 もともとは老眼対策のレンズで、光を遠・中・近に分散させて、いろいろな距離を見やすくするものです。それが最近、近視の進行抑制に効果があることがわかってきました。
堀江 僕は予防医療普及協会で、糖尿病予備軍や糖尿病の人たちを、どうやって治療まで持っていけるかを考えて、映画も作ったんですよ。その時にわかったことは、足を切るような重度の糖尿病になっても放置している人は、“自分自身に関心がない”ということ。白内障の患者さんも同様で、どうすればこういう人たちに介入できるのかがカギになりますね。
大槻 そうですね。
堀江 高齢の方は人に迷惑をかけることを嫌がりますよね。最近、脱毛する高齢者が増えているらしいのですが、その理由が「介護のため」なんだそうです。人に迷惑をかけたくないという気持ちが強い。だったら「白内障で認知症になったら迷惑かけますよ」みたいな感じで、そこを突けないかな、と。
大槻 行動変容につなげるわけですね。
堀江 もしくは、感情に訴えかけるようなアプリを作るとか。顔を自撮りして「あなたの白内障度合いを測定します」みたいなの、どうですか?
大槻 撮っただけで白内障の程度を判定するのは、かなり難しいかと……。
堀江 診断じゃなく警告にして、「白内障の気があります」みたいなエンタメ的なノリでもいいと思うんですけどね。
大槻 目は視覚を通して多くの情報を取り入れる器官ですから、少しでも異常を感じたら放置しないこと。「それなりに見えているから大丈夫」ではなく、「よりよく見えるためにケアする」ことが大切だと感じています。
堀江 そのあたりも含め、キャンペーンにつなげたいですね。またお話しさせてください。

大槻光伸/Mitsunobu Otsuki
1987年奈良県生まれ。眼科専門医、「ICLクリニックKITTE大阪」院長。白内障・眼内レンズ、屈折矯正技術のエキスパートで、多数の執刀実績を持つ。2026年7月に開催された大阪YOBO万博にも登壇するなど、目の健康や最新医療に関する啓発活動も行っている。
堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』のほか、『日本医療再生計画』など著書多数。

