HEALTH

2026.09.11

なぜワクチン接種率は上がらないのか? 普及の鍵を握るAIと科学リテラシー【堀江貴文】

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載の第58回は「ワクチンの今」。大阪大学大学院 感染制御学教授の忽那賢志先生とともに、帯状疱疹をはじめとしたワクチンの有効性やワクチン接種の大切さ、科学リテラシーの未来まで多岐にわたり語り合った。

堀江貴文連載第58回

AIも活用しながら医療情報を見極める

堀江貴文(以下堀江) 今回も大阪大学大学院 感染制御学教授の忽那賢志先生にご登場いただき、帯状疱疹(たいじょうほうしん)ワクチンについてさらに深掘りしていこうと思います。帯状疱疹が老化や認知症にも関連している可能性があり、さまざまな研究が進んでいることに驚きました。

忽那賢志(以下忽那) 多くの帯状疱疹ワクチンの研究が進んでいて、学問的にも非常に興味深い分野になっています。

堀江 僕も接種した「シングリックス」は、予防効果がとても高いワクチンですよね。

忽那 そうですね。ワクチンに含まれる「アジュバント(免疫の働きを高める成分)」によって、より強力な免疫を獲得することができるのです。ある研究では、このアジュバントが認知症の予防につながっているのではないかと報告されています。

堀江 僕は予防医療普及協会を立ち上げて、本当によかったなと思うのは、こうした最新の情報に触れられることなんですよね。帯状疱疹ワクチンなどを含めた新しい知見はもっと多くの人に知らせるべきであり、医療機関や企業などで流したらいいのにって思うんですよ。

忽那 そうですね。帯状疱疹はストレスや睡眠不足、疲労の蓄積などをきっかけに発症する方が結構いらっしゃるんです。しかし、自分が接種対象になっていることや、ワクチンの存在自体も“知らない”という方が多いので、さまざまな場面で情報を届けていくことが大切だと思います。

堀江 あとはAIをうまく活用するのもいいんじゃないかなと。僕も研究論文を読んでいて専門知識が足りないと、「この認識でよかったのかな」ということがあるんです。それをAIに質問するとわかりやすく教えてくれるので、めちゃくちゃ勉強になりますね。

忽那 医者がいらなくなってしまいますね(笑)。

堀江 いやいや(笑)。でも、基礎知識があればたいていのことは自分で調べられますから。僕は内視鏡検査の映像などもAIに読みこんで、セカンドオピニオンをしてもらっていますよ。

忽那 なるほど。セカンドオピニオンで一般的な見解を確認する、という使い方ですね。

堀江 健康診断や人間ドックの結果も全部クラウドにあげていて、かかりつけ医が僕のデータをいつでも見られるようにしているんです。それで「堀江さん、こういうのに注意してよ」とかアドバイスしてくれる。そこにAIアシスタントがいれば、さらに心強いですよね。

忽那 そういう活用法も今後、増えていくかもしれません。

堀江 最近は、ワクチンが寿命の延長に関わるといわれるようになっていますね。

忽那 そうですね。コロナなどもそうですが、感染症にかかると炎症が起こります。その炎症が老化や認知症につながり、寿命を縮める方向に働くと考えられています。やはり感染しないに越したことはないのです。

堀江 本当にそうですね。

忽那 20代以上の人ですと、ほとんどが子供の時に水疱瘡(みずぼうそう)にかかっているため、今後は帯状疱疹をいかに予防するかが重要になります。課題は、ワクチンの大切さをどのように伝えていくか、ですね。

堀江 コロナの時もワクチンの安全性に対して不安視する声がありましたからね。

忽那 そうですね。インフルエンザワクチンをはじめ、子供の麻疹・風疹ワクチンの接種率が下がっているといわれていて、これもコロナ禍でのワクチン問題の影響があるのではないかと指摘されています。

堀江 麻疹・風疹はアメリカで流行していますよね。

忽那 このまま接種率が下がると、日本も同じような状況になる可能性があるので心配です。

堀江 麻疹にかかると、どのようなリスクがあるのですか?

忽那 コロナより重症度は高く、肺炎や脳炎を引き起こすことがあります。まれですが、感染してから3〜4年後に脳炎になったりするケースもあります。

問われるのは科学リテラシーとワクチンへの正しい理解

堀江 ワクチンの理解を深めるには、何が必要だと思いますか。

忽那 これは本当に難しい課題です。正しい情報を届けたくても情報が届きにくいというか、届かない状況になっている方が多いのです。そのため、赤ちゃんが生まれて医療機関を受診するタイミングなどに、医師が丁寧に説明していくことが大事だと考えています。

堀江 最初が大切なんですよね。

忽那 ワクチンに強い抵抗感を抱いている方もいますが、「なんとなく怖いから打つのを控えている」という方も少なくないのです。そうした方々に丁寧に説明すると、「じゃ、打っておこう」となる。こういう方々を接種につなげていくことが大事であり、医師の重要な役割なのかなと感じています。

堀江 HPVワクチンも接種率が全然上がっていないですよね。子宮頸(けい)がんになる人はめちゃくちゃ多いのに。

忽那 HPVワクチンも接種が推奨されているワクチンのひとつですね。

堀江 さらに言えば、前がん状態とがんの区別がついていない人もいたりしますから。ワクチンのこともそうですが、病気そのものについて知らない人が多いんですよ。こういうのを含め、僕がこの協会で今取り組もうとしているのが、eラーニングを活用した教育なんです。

忽那 ああ、なるほど。

堀江 今、『糖尿病の不都合な真実 Part2』のAI動画コンテストを企画していて。優勝者にお金を払って作ってもらうということをやろうとしています。これらを応用してeラーニングの教材を作り、活用してもらおうと思っているんです。本来なら、国がやるべきことなんですけど(笑)。

忽那 小学校から科学についての知識を高めたり、ワクチンについても正しい知識を学ぶ機会は必要だと思います。

堀江 科学のリテラシーを高めていかなきゃですね。いろいろと動かしていけたらいいなと思っているので、また知恵を貸してください。今日はありがとうございました。

忽那賢志氏

忽那賢志/Satoshi Kutsuna
1978年福岡県生まれ。山口大学医学部医学科卒業後、山口大学医学部附属病院、奈良県立医科大学附属病院等を経て、2018年国立国際医療研究センター国際感染症センター医長、2021年大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学教授に着任。新型コロナウイルス感染症の臨床・研究を行うほか、感染症の啓発活動にも取り組む。

堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』のほか、『日本医療再生計画』など著書多数。

COMPOSITION=長谷川真弓

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