HEALTH

2025.11.20

生殖機能に“保険”をかける、35歳から老化する精子を救う宅配型凍結予防とは【堀江貴文】

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。第48回は「精子の老化」。実は、多くの男性は自らの精子の状態を知る機会すら持たないのが現実。そんななか、登場したのが「精子凍結みらいバンク®」。自宅で精子を採取し、将来に備えて凍結保存するこの仕組みは、いわば“生殖機能の保険”だ。サービスを立ち上げたHDXセルバンク代表・向井徹氏に話を聞く。

堀江貴文連載第48回

精子の“老化”具合を知り、生殖機能の保険をかける新しい投資に注目

堀江貴文(以下堀江) 今回はHDXセルバンクの向井徹さんに話をうかがいます。「精子凍結みらいバンク®」とはどのようなサービスなんですか?

向井 徹(以下向井) 男性の生殖細胞(精子)を凍結保管する、いわば「卵子凍結の男性版」になります。

堀江 ありそうでなかった内容ですね。立ち上げのきっかけを教えてください。

向井 私自身が深刻な男性不妊で、子供をつくる時期に非常に苦労した経験が元になっています。最近のデータでは男性も女性同様、35歳頃から精子機能が低下することがわかってきており、不妊治療を始める前の“不妊予防”として、若いうちの精子を保存する意義があると考えました。

堀江 将来のための物理的な保険ということですね。

向井 はい。男女ともに晩婚化と高齢出産が進むなかで、男性に限っていえば、高齢による精子の損傷で、“機能しない”という問題があります。そこから不妊治療を始めると、さらに時間がかかってしまうのです。

堀江 不妊は女性側に原因があると思われがちですよね。

向井 実は現場の医師の体感として、半数以上は男性に原因があると認識されているそうです。

堀江 なるほど。この精子凍結は今までなかったんですか?

向井 正確に言うと不妊治療中のカップルにはありましたが、堀江さんのような“シングルで健康な人”を対象にしたサービスは初になります。

堀江 今までなかった理由は?

向井 男性不妊という実態の認知が低かったこと、もうひとつは精子の採取方法にあると思っています。クリニックや病院に行って「精子を採ってきてください」と言われても、誰ひとりやらないですよね(笑)。

堀江 確かに。病院で採るのはハードルが高い。

向井 嫌ですよね。だから、自宅採取と専用ボックスによる宅配型サービスを可能にしました。運搬中の破損や酸化などによる精子の劣化を防ぐ容器と、温度を一定に保つボックスを開発して特許をとったんです。業界では“ローテクのイノベーション”と評価されています。

堀江 精子の運搬で大切なのは、温度管理なんですね。

向井 そうなんです。精子保存には20度〜25度くらいの常温が望ましいのですが、このご時世、常温での輸送が非常に難しい。そこで、暑さ・寒さに対応できるボックスを作りました。

堀江 採取した精子を送り、検査をするんですよね。

向井 まず、感染症検査を行います。当たり前ですが、ひとつでも何かのウイルスに感染していたら凍結はできません。

堀江 確かに。

向井 クリアしたら、次は提携先の獨協医科大学で「高度精子機能検査」を行います。

堀江 どういう内容ですか?

向井 「精子DNA断片化指数検査(DFI検査)」といって、酸化ストレスなどのダメージを受けた精子のDNA損傷具合を測定し、“精子の質”をより詳細に評価する検査になります。

堀江 通常の精液検査ではわからない、進化した検査なわけですね。

向井 WHOが発表したラボマニュアル(第6版)では、精子の数的評価だけでなく、DFI検査のような「質」を見る検査が、男性不妊の原因特定と適切な治療方針の決定に役立つと位置付けているのです。

堀江 今回、僕も検査をしましたが、感染症検査はすべて「陰性」で、DFI検査も基準値内の21.4%でした。

向井 この数値が高いと受精率や妊娠率が低下したり、流産リスクも高まります。

堀江 凍結する精子はどこで保管するのですか?

向井 埼玉県の新座市にMIRAI BANKセンターというメディカル倉庫があり、そこで液体窒素に入れて保管します。

堀江 自宅で採取して送り返すと、自分の精子の“老化”具合がわかるというのがすごいですよね。

向井 当サービスをがん治療の前に利用する方もいます。

堀江 放射線治療とかがありますからね。

向井 ハタチの献血のように「ハタチの精子凍結」と提案したいです。

堀江 将来的には精子バンクサービスのようになって広がるのですか?

向井 日本では提供された精子を使った生殖医療は認められていないので、現時点では難しいと思います。

堀江 なるほど。このサービスの費用を教えてください。

向井 初期費用は4万8400円(感染症・精子機能検査を含む)、保管料は月2550円(10年間)になります。もしくは、初期費用不要のスマートサブスクプランもあり、例えば、4年契約で月3580円〜となります。他にはDFI検査のみを行うプランもありまして、1万9800円になります。

堀江 感染症にDFI検査、冷凍保存でしょ。安いですよね。

向井 卵子バンクに比べたら相当安いと思います。

堀江 子供をつくりたい意欲があるわけだから、国の少子化対策の予算などで補助できればいいですね。

向井 そうですね。例えば、人間ドックの項目に精子検査を入れることができれば、現状を知ることができるし、不妊予防の啓蒙にもつながると思います。

堀江 現在の利用者数はどれくらいですか?

向井 約1000人ほどで、40代〜50代の経営者が多いです。最近では、福利厚生のサービスとして導入する企業も出てきており、20代前半の若い世代も利用してくださっています。

堀江 妊活には時間の制限がありますからね。予防的観点からしても、精子を採取して保管することは大きな意味がある。

向井 おっしゃるとおりです。自分の精子の状態をチェックし、把握する習慣こそが不妊予防の一歩となるわけです。この流れをもっと広げていきたいと思っています。

向井徹氏

向井徹/Toru Mukai
IT業界で複数の事業を立ち上げた後、大手流通小売関連会社社長、安田奨学財団理事などを歴任。2016年から生殖医療・生殖健康分野に参入し、イノベーションサービスの研究開発と事業化を推進。現在はHDXセルバンク代表取締役として、2025年春に「精子凍結みらいバンク®」サービスを開始。

堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』ほか著書多数。

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COMPOSITION=長谷川真弓

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