カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。第47回は前回に続き、堀江氏が実践したリアルタイムでの血糖値測定の結果について、綾部市立病院の大坂貴史先生と深堀り。誤解しやすい糖質制限の落とし穴や血糖値と上手に付き合うための食事のとり方についても紹介する。

糖尿病予備群と健康な人の基準は違う。血糖値の誤解と正しいバランス
堀江貴文(以下堀江) 前回、リアルタイムで血糖値の変動を測った話をしましたが今回はその続編。僕、お米を食べるとめっちゃ血糖値が上がったんです。
大坂貴史(以下大坂) 通常の数値はどれくらいですか?
堀江 普段は100〜110(㎎/㎗)を行ったり来たりしていたけど、お昼に牛丼とかを食べると190くらいまで上がる。ラーメンなんて200超えです。
大坂 かなり上がりましたね。
堀江 低糖質麺のちゃんぽんを頼んだのに、190くらいまで上がったり。もう低糖質麺は信頼できないなと思って、代わりにカリフラワーライスを買ってみました。
大坂 カリフラワーライス、いいですよ。タンパク質も多いし。
堀江 それに、普通にうまい。あと「難消化性デキストリン」って、効果はありますか?
大坂 これは、とうもろこし等のデンプンから生まれた植物繊維で、食後血糖値の上昇を緩やかにする働きがありますが、食事の前に摂らないと効果はないですね。食事は時間と食べる順番も大事で、それでいうとコース料理はお薦め。時間をかけて食べますし、糖質の前にタンパク質や野菜を食べることで、血糖値の上昇を抑えられます。
堀江 あと朝ご飯抜きで運動をすると、180〜190近くまで上がりました。試しにプロテイン・コーンスープを飲んでから運動してみたら、130台をキープしていましたね。運動も激しくなければ、そこまで上がらない印象でした。
大坂 強度の高い運動は、数値が上がりやすいです。これは糖分を導入して身体を動かそうとする反応で、特に朝の空腹時はそういう傾向にあります。あとは測定器の誤差の可能性も加味したほうがいいですね。運動中は結構、誤差が生じやすいので。反対に、血糖値が上がりにくい食事はありましたか?
堀江 アルコールを飲んでいて、かつ糖質が少ない食事だと、血糖値スパイクは起こりませんでした。ただ、最後に土鍋ご飯とかを食べると190くらいまで上がっちゃいますね。そういえば、夜中に血糖値が結構下がって、寝ている間に60を割ったことがありました。これは、なぜ起こるのですか?
大坂 通常、夜間は肝臓に溜めている糖分を放出して血糖値のバランスを取っているのですが、お酒の量が多いとその糖分がアルコールの分解に回されてしまい、バランスが崩れるんです。
堀江 夜間低血糖というやつですよね。やはり問題ですか。
大坂 量と程度によります。例えば、多量のお酒を飲んだ日は睡眠の質が落ちたりすると思うのですが、低血糖が影響している可能性もあります。
堀江 低血糖になると睡眠の質が悪くなるんですか。
大坂 悪くなりますね。特に、糖尿病の治療をしている人には顕著に現れて、「悪い夢を見る」とおっしゃる方も結構います。
堀江 アルコールを飲む時の糖質の考え方は? 糖質を多少摂ってもいいのかどうかの判断がしづらいです。
大坂 堀江さんの場合、基本的には「摂ってよし」です。極端にいえば、糖質を摂らなければ血糖値は上がりにくくなります。ですが、「それは健康なのか?」という話になります。身体を動かすためにはエネルギーが必要で、糖質が欠かせません。特に飲酒した夜は、ある程度は糖を摂っておかないと夜間低血糖になりやすくなる。ただ、飲んだあとの〆のラーメンは、身体によくないですけどね(笑)。
堀江 いや、本当に。結局はバランスですね。
大坂 最近、世間的にも血糖値を気にする方が増えてきて、食後の高血糖を抑えるのに「から揚げにマヨネーズがいい」という話も話題になっています。確かに唐揚げは糖質が低いですが、一方でカロリー過多になる可能性も高い。食事の指導やアドバイスというのはすごく難しくって、例えば「これを食べたらいいよ」と言うと、普段の食生活に“プラス”してしまうので、結果として“過剰”になることが多いんです。
また、「朝のフルーツは血糖値が上がるからやめたほうがいい」という説も耳にしますが、一概には言えません。フルーツは不思議な食品で、むしろたくさん食べたほうが糖尿病になりにくいともいわれています。ですが、糖尿病の人、脂肪肝などの疾患を持つ人にとっては、血糖値を上げてしまうことになるのです。
堀江 糖尿病予防のための食事に、「これがいい」「これが悪い」は基本的にないってことですね。
大坂 はい。ラーメンも量を調整すれば「よし」になるし、低血糖気味の人は朝にフルーツを食べて血糖値を上げたほうがいい場合もあります。大前提として、「血糖値を上げるとよくない」というのは糖尿病、もしくは糖尿病の一歩手前の人に対しての話なのです。これらを誤解しないようにしてほしいですね。
堀江 糖尿病やその予備群の人たちにとっての話が、健康な人たちの基準として語られているということですね。
大坂 おっしゃるとおりです。大事なのは、自分のリスクをきちんと把握すること。一般的な健診に含まれる血液検査だけでなく、「75g糖負荷試験」を受けるのも手でしょう。肥満の方ならばそれを改善すべきでしょうし、そもそもインスリンの分泌が悪い人は、早い段階から薬を使った治療が必要になります。
堀江 僕はどちらかというと内臓脂肪が多くて、それはアルコールの影響が大きいのかなと。
大坂 アルコールの量が減れば、体質そのものがよくなることはあります。ただ長期的な話になるので、まずできることとして、血糖値が上がりやすい生活、上がりやすい食品をある程度避けるというのは大事な考え方です。
堀江 なるほど。
大坂 即効性のある対策を取りつつ、長期的に、血糖値が上がりやすい原因を突き詰めていくという両軸のケアが必要ですね。堀江さんも一度、糖負荷試験を受けてみては?
堀江 機会を見て試します。

大坂貴史/Takafumi Osaka
1984年大阪府生まれ。綾部市立病院内分泌・糖尿病内科部長。京都府立医科大学卒業後、京都第二赤十字病院に勤務。その後、京都府立医科大学大学院博士課程で医学博士を取得し現職に。糖尿病と筋肉、糖尿病運動療法が専門。綾部市立病院のYouTubeチャンネル、「筋肉博士」としてXでも医療情報を発信する。
堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』ほか、2025年9月に新刊『日本医療再生計画 国民医療費50兆円時代への提言22』(小社刊)が発売。
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国民医療費50兆円時代への提言22
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健診データの一元化、ワクチン政策の再設計、延命医療や保険制度の見直しetc.。2016年に予防医療普及協会を立ち上げた堀江貴文が、専門家や現場の医師とともに構想した22の改革を提言。
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