GOLF

2025.08.21

ダフりはダメ、トップ気味に。フェアウェイバンカーショットのコツ

苦労人の日系プロゴルファー、カート・キタヤマを勝利に導いた絶妙なバンカーショット。今回はフェアウェイバンカーショットのコツを紹介する。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

3Mオープンの最終ラウンドを終えたカート・キタヤマ。

苦労人の日系プロ、カート・キタヤマに学ぶ、フェアウェイバンカーショット

PGAツアーのレギュラーシーズンも残りわずかとなった2025年7月下旬。ミネソタ州・TPCツインシティーズで開催された3Mオープンで、日系選手のカート・キタヤマがPGAツアー2勝目を飾った。

カリフォルニア州出身の32歳のキタヤマは、父親が日系アメリカ人、母親が日本人。日本に住んだ経験はないが、和歌山県にいとこがおり、日本と深い縁のある選手だ。高校時代はバスケットボールに熱中していたが、趣味で始めたゴルフで頭角を現し、ネバダ大ラスベガス校で活躍。2015年にプロへ転向した。

小中学生の頃からクラブを握る選手が多いなか、高校からゴルフを始めてプロを目指すには、相当な努力が必要だったはずだ。プロ入り後も順風満帆とはいかず、2016〜2017年は下部のウェブドットコムツアー(現・コーンフェリーツアー)で戦い、2018年はアジアンツアーに参戦。日本ツアーとの共催大会「ダイヤモンドカップ」で4位に入る好成績を残した。

転機は2019年。予選会を突破してツアーカードを手にすると、DPワールドツアー(旧欧州ツアー)に参戦。わずか出場3試合目で初優勝、さらに3ヵ月後に2勝目を挙げ、デビューから11試合で複数優勝という快挙を達成した。

2021-22年シーズンからはPGAツアーに本格参戦し、2023年のアーノルド・パーマー招待で初優勝。そして2025年の3Mオープンでツアー通算2勝目を挙げた。

キタヤマは身長170cmとPGAツアー選手のなかでは大柄ではないものの、2025年シーズンは平均317.8ヤードの飛距離を誇り(PGAツアー8位)、高精度なアイアンショットを武器としている。

2023年からは、バイオメカニクスに基づく指導で知られるクリス・コモのコーチングを受け、パフォーマンスが向上。アイアンショットの精度はさらに高まり、ゲーム全体の完成度も一段と増した。

2025年の3Mオープンでも、2日目のラウンド後にコモから助言を受け、それが3日目のコースレコードに並ぶ11アンダー「60」というスコアにつながったと考えられる。

勝負を決めた14番ホールのフェアウェイバンカーからのショット

私はゴルフネットワークで3Mオープン最終日の解説を担当し、キタヤマの優勝争いを見守っていた。

この日は序盤からエンジン全開。切れ味鋭いアイアンショットで、OKバーディーとなるベタピンにつける場面を次々と披露した。後半14番でバーディーを奪ったあたりからはスコアを伸ばせなかったものの、それまでのバーディーラッシュは圧巻だった。

もっとも、キタヤマは初日から順調だったわけではない。初日は11位タイとまずまずの滑り出しだったが、2日目はイーブンパーで44位タイに後退。

しかし、コモのアドバイスを受けた3日目に「60」で回り、一気に首位と1打差の3位タイまで浮上。そして迎えた最終日、1番からの3連続バーディーで波に乗り、そのままリードを守って2位に1打差の23アンダーで優勝をつかんだ。

特に印象的だったのが、最終日の14番パー4のフェアウェイバンカーからの池越えショットだ。池を越えてグリーンに乗せただけでなく、ピンそばにぴたりと寄せてバーディーを奪った。

このホールのフェアウェイバンカーは難易度が高く、2024年も最終日に優勝争いをしていた選手が同じ状況から池に入れている。さらに、前の組のアレックス・ノレンもダフって池のふちに止まるトラブルになっていた。

私は解説中に「池越えにならない右奥バンカー方向への安全策が良いのでは」とコメントしたが、キタヤマは逃げずにピンをデッドに狙う勝負に出た。その勇気と、予想を上回るプレーにはただただ脱帽だった。

最終18番ホールでも、3打目は左足下がりのガードバンカーからだったが、冷静にグリーンへ乗せ、パーで締めくくった。

試合後、キタヤマは「14番と18番のショットが間違いなく今日のハイライトだった」と振り返り、「冷静にクラブを選択できたのは兄のおかげ」と、キャディを務めた兄ダニエルへの感謝を述べた。そんな兄思いの姿に、日本人らしい謙虚さを感じた人も多かったに違いない。

フェアウェイバンカーではトップ気味に打つ

今回の優勝を引き寄せたキタヤマの14番フェアウェイバンカーショットには、アマチュアゴルファーにとっても参考になる点が多い。

フェアウェイバンカーで最も避けたいのはダフリだ。わずかにダフっただけでも、ボールとフェースの間に砂が入り、飛距離は大きく落ちてしまう。そのため、クリーンに打つためには、ややトップ気味にインパクトする意識が重要となる。

構える際は足を砂に埋めず、できるだけ平らな状態で立つことを心がけたい。クラブは短めに握ることで、ボールの上部をとらえやすくなる。スイングは大きくせず、バックスイングも左腕が地面と平行になる程度にコンパクトに抑えるのが理想だ。さらに、通常より1~2番手大きいクラブを選べば、飛距離減を補える。

こうしてボールの真ん中よりやや上をとらえれば、ミスを最小限に抑えながら、確実にグリーンを狙えるショットが打てるはずだ。

フェアウェイバンカーからグリーンにオンさせる動画解説はコチラ

◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=Matthew Harris/アフロスポーツ

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