卓越した仕立て、至高の着心地、そしてドラマティックなインパクト。ここぞという瞬間に輝きを添えるスーツは、着る人の個性に豊かな奥行きを与えてくれる。スーツ・アイテム編。スタイリスト・野口強による連載「The character of G」。
1. トム フォード/クワイエットラグジュアリーを体現する、新時代のパワースーツ
トム フォードのスーツといえば、映画『007』シリーズで、ジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグが身に纏う姿がまず思い浮かぶほど。ファッショナブルでグラマラスなイメージが強いブランドだが、ベーシックなモデルに関していえば、経営者などのビジネスエグゼクティブにも人気が高い。
端正なルックスが際立つウールポプリンの「インク スーツ」は、ウエストをほどよくシェイプしたサイドベンツのクラシカルな仕立て。太めのラペルとふわりと立体的な2つボタンの段返りが、シャープなシルエットにエレガントなムードを添えているのが特徴だ。シャツはざっくりした風合いの織柄のグレンチェック。細かな凹凸が上品な無地のネクタイで引き締まった印象を加えれば、洗練されたスタイルが完成。
2. キートン/その佇まいはタイムレスかつエレガント。上質のナポリ仕立てをベーシックな1着で
熟練した職人の手仕事による柔らかな風合いと軽い着心地。ナポリのサルト(仕立て職人)が代々受け継いできた信念と矜持をあますところなく盛りこんだキートンのスーツは、イタリアンエレガンスを体現するアイテムとして、常に一目置かれる存在だ。
ダークブルーのダブルブレストのスーツは、ややボクシーなシルエットに仕上げたサイドベンツ仕様。ボディにピタッと吸いつくようなラペルや、見るからに柔らかそうに仕立てられたルックスに加え、フルライニングでありながら軽やかな着用感が、最上のテクニックを如実に物語る。Vゾーンは、ワイドスプレッドのシャツに無地のシルクサテンのタイ。高品質のファブリックと卓越の職人技による仕立てが、えもいわれぬ迫力を放つ、究極のベーシックスーツがここに。
3. アルフォンソ・シリカ×ビームスF/ナポリ仕立ての上質を日常に。日本人の体型にフィットする別注スーツ
ナポリの伝統的なサルトの技術をベースに、時代に合わせたフィットや着心地を追求し、進化を続けるアルフォンソ・シリカ。正確なカッティングや丁寧な縫製が魅力のスーツを、日本人の体型に合うよう微細なオーダーをかけたのが、ビームスFの別注スーツ。
ハーフライニングで軽やかに仕立てたネイビースーツは、袖山にギャザーを寄せたマニカカミーチャ仕様となっている。ナポリスタイルを代表するこのディテールが、ネイビースーツの固さをぐっと軽やかな印象にしてくれる効果大。パンツは2 本のアウトタックで、サイドにはアジャスターつき。最上の着心地はもちろんのこと、上質を知る大人をアピールできるビジネスツールとしても最適だ。
4. ダンヒル/伝統的なツイードをリファインし、現代的なシルエットのモダンなスーツに
深みのあるグレーのメランジ風の色調が静謐なムードを放つ素材は、アイリッシュツイードの代名詞ともいわれる伝統的なドネガルツイードからインスピレーションを得たもの。元来、素朴な風合いが持ち味の織物だが、シルクとカシミヤをブレンドすることで柔らかで上品な風合いにアップデート。現代的なカッティングで仕立てることで、時代を超えたエレガンスを備えた1着となっている。
裏地はフルライニングで、サイドベンツ仕立て。同素材のパンツはノータックのストレートシルエット。フロントと袖口のボタンはロゴの刻印入りのホーン素材を用いるなど、ディテールへのこだわりも完璧だ。独特の風合いを活かすなら、インにはタートルネックのニットが好相性。どことなく柔らかなムードが加わり、タイドアップとはまた異なる新鮮なスタイルにまとまる。