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2025.08.16

鮨、土鍋ごはん。お米好きの中田英寿がハマる、白米がおいしい店3選

全国を巡り、日本の伝統・文化・ものづくりに触れることをライフワークにしている中田英寿さん。その歩みを支える原動力は、揺るぎない知的好奇心だ。各地の職人と対話し、本物に触れることを好む中田さんは、食に関しても多くの生産者の元を訪問。なかでもお米へのこだわりは強く、これまで各地の農家から学んできた。最強にして超最新レストランガイド「ゲーテイスト2025」

中田英寿の白米グルメ3選

中田英寿のアツアツお米愛

和食のお店では、シンプルに炊き立てのご飯を食べることを好む。に関しても「シャリが大事なんです」と言い切る。

「シャリが美味しいと、ここの大将はちゃんと修業した人なんだなと思う。海外の鮨店で違和感を覚えるのも、僕は魚ではなく米に要因があるんじゃないかなと。シャリは甘さと酸味のパンチが強くなると美味しく感じる反面、疲れやすくなる。大事なのは実は塩味だと思う」

何においてもバランス感覚を大切にする中田さんの審美眼が、真に“旨い”鮨を見極める指針となっている。

そんな中田さんがこの1年で最も印象に残った鮨店として挙げるのが、広尾の『鮨 陸』と、麻布台ヒルズの『寺子屋 すし匠』

前者の主人・戸田陸氏は『鮨 水谷』で修業を積み、『日本橋蛎殻町(かきがらちょう) すぎた』で2番手を務めた後、タイのミシュラン星付き鮨店で活躍した実力派。シャリに用いるのは、清澄白河の米屋『お米のふなくぼ』の店主が厳選した、香り豊かな古米だ。音を聞いて炊き上がりを見極める羽釜炊きの酢飯に合わせる酢は、米酢と赤酢を絶妙にブレンドしたもの。パラリとほぐれてどのネタとも調和する酢飯は、確かな技術があってこそ実現できる代物だ。

一方、『寺子屋 すし匠』では赤シャリと白シャリの2種類を使い分ける。シャリの味付けに使う調味料は、大将・杣木(そまき)辰茂氏が開業の1年前から研究を重ねて厳選したものばかり。例えば酢は、酒粕を長期熟成させた赤酢など、20種類のなかから厳選した3種類。塩は沖縄産の粗塩を用い、白シャリの塩分は従来の3割減とするなど、細部まで配慮が行き届いている。

米は富山県産コシヒカリと山形県産ササニシキの古米に、新潟県産「新之助」の新米を1割加えた独自配合。ふんわりした切り立てのシャリにおぼろをかませて握った春子鯛には、職人の経験と繊細な感性が凝縮されている。

そんなお米に一家言もつ中田さんが、「あれだけマニアックな米を揃える店は他にない」と言って足しげく通うのが南青山の『心米』。全国の希少米を12種類取り揃え、各個性に応じた炊き方や組み合わせで供する店だ。「米は基本的に大量に食べない」という中田さんも、ここではほぼ毎回2種の米を食べ比べるという。品種ごとに異なる味わいがあり、揚げ物にはこの米、煮物にはあの米と、料理との相性を見極める楽しみがあるからだ。

「イタリアのパスタに多様な種類があるのは、ソースとの相性を楽しむため。お米の品種も料理に合わせて楽しむといい」

食材に対しても知的好奇心を注ぐ中田さん独自の視点だ。

1.東京・広尾「鮨 陸」

江戸前の名門で薫陶を受け、伝統を次世代へつなぐ期待の若手

戸田陸氏が修業をスタートしたのは江戸前鮨の名店『鮨 水谷』(閉店)。さらに『日本橋牡蠣殼町 すぎた』の杉田孝明氏に師事して江戸前の技に磨きをかけたのち、2017年にバンコクで『鮨 いちづ』を開店。タイの富裕層に認められ、2019年には世界中のトップレストランを格付けする「OAD」の鮨部門でアジアランキング(日本を除く)1位に輝いた。伝統を守りつつもグローバルな視点で鮨文化を広めていく経験値こそが戸田氏の強み。2024年9月にオープンしたこの店も、すでに予約困難店となっている。

2.東京・麻布台「寺子屋 すし匠」

2種の酢飯で握る鮨とつまみを交互に堪能

大将の杣木辰茂氏は19歳で名店『すし匠 四谷店』に入り、中澤圭二氏のもとで16年修業を積んだ気鋭の職人。確かな技に加え、後進を育てる力も買われ、麻布台ヒルズの店舗を託された。おまかせは、つまみ9品と握り9貫が交互に出る構成。終盤にはその日に仕入れたなかからコースに含まれないネタが紹介され、お好みで追加注文が可能。酢飯は赤シャリと白シャリの2種を使い分け、開店30分前にシャリを切るなど細部まで研ぎ澄まされた仕事が光る。

3.東京・南青山「心米」

古式精米と名水が引きだす米の美味しさ

自然栽培の在来種を中心に、全国から厳選した12種類の米を揃える日本料理店。2004年の創業以来、研ぎ澄まされた感性とともに料理を提供し続け、2024年に南青山・日赤通りへと移転した。看板ともいえる土鍋ご飯は、古式精米法で旨みを引きだした米と、山形県の名水「出羽三山」を使って炊き上げる。店主が全国各地から仕入れる旬の素材を丁寧に活かした料理は、いわば究極の家庭料理。アラカルトに加え、8~9品構成の2種類のコースも用意されている。

【特集 ゲーテイスト2025】

この記事はGOETHE 2025年9月号「特集:陶酔レストラン ゲーテイスト2025」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=藤田実子

PHOTOGRAPH=佐藤顕子(『鮨 陸』)、中庭愉生(『寺子屋 すし匠』『心米』)

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