連載「ヴィンテージウォッチ再考」の第16回は、パテック フィリップ「カラトラバ」からRef.570を紹介する。
名作Ref.96のデザインを受け継ぐ35.5mm径のドレスウォッチ
1932年、パテック フィリップの歴史は大きなターニングポイントを迎える。「カラトラバ」の原点となる腕時計Ref.96は、1932年から1967年まで30年以上も製造されてきたロングセラーであり、「現代的な腕時計の模範」と評価される傑作中の傑作である。
2023年現在、カラトラバ・コレクションは、メンズ・レディスにわたり多様な広がりを見せているが、ここでは“ケースサイズ”に着目したいと思う。腕時計のサイズ感とは、ファッションと同じようにトレンドを映し出す鏡のような存在であり、「カラトラバ」もまた時代のニーズに合わせて様々なスタイルを提案している。
Ref.96を例に取ると、1932年当時なら決して小ぶりではなかった約30.5mmのケース径は、現代のファッションやライフスタイルに完璧にマッチするかというとイエスと答えるのは難しいだろうし、現行のレディスウォッチ全般と比較しても小さな部類に入るサイズ感だと言わざるを得ない。
今回紹介するRef.570は、通称“ビッグカラトラバ”と呼ばれる35.5mm径のケースが特徴であり、小ぶりすぎないサイズ感ゆえ、非常に人気が高い。Ref.96と同様、文字盤はいくつものバリエーションがあり、こちらのセンターセコンド仕様のモデルはRef.96が完成させた象徴的なディテールを数多く受け継いでいる。
「カラトラバ」の歴代モデルのなかでも絶妙なバランスで整えられたRef.570は唯一無二の存在感を放っている。製造本数が少ないため、高い資産性があることも魅力として挙がるだろう。
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■連載「ヴィンテージウォッチ再考」とは……
インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。本連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。