連載「ヴィンテージウォッチ再考」の第14回は、カルティエの「タンク ルイ カルティエLM」を紹介する。
「タンク マスト ドゥ カルティエ」の誕生前に僅かに製造されたレアモデル
1977年に発表された「タンク マスト ドゥ カルティエ」は、カルティエのヴィンテージウォッチにおける入門モデルとして多くのファンに親しまれている。
「タンク マスト ドゥ カルティエ」とは、ファッションの世界で例えるならプレタポルテ(高級既製服)に位置付けられるコレクションであり、より多くの人々に「タンク」ウォッチの魅力を届けるために展開が始まった。プレタポルテを世に広めた第一人者である偉大なファッションデザイナー、イブ・サン=ローランが愛用していたことでも知られている。
第一に挙げられる特徴は、これまでの「タンク」がケース素材にゴールドやプラチナなどの貴金属を用いていたことに対して、ヴェルメイユケースを採用した点にある。ヴェルメイユとは、スターリングシルバーにゴールドを貼り付ける加工で、これによってコストダウンを図っている。「タンク マスト ドゥ カルティエ」からクォーツの導入が始まったことも「タンク」の歴史におけるターニングポイントである。
今回紹介するのは、「タンク マスト ドゥ カルティエ」が発表される前に登場したヴェルメイユケースを用いたレアな「タンク ルイ カルティエ」。通常の「タンク ルイ カルティエ」と異なる書体のブランドロゴと12字位置に「SWISS」の表記が入ったダイヤル、先端が尖っている砲弾型サファイアカボジョンのリュウズなど、端境期ならではの特徴的なディテールが見られる。なおかつ玉数が少ないため、いざ探してみるとなかなか見つからない。
コレクターに珍重される謎めいたヴェルメイユケースの「タンク ルイ カルティエ」。一歩差がつく逸品のヴィンテージウォッチとして覚えておいて損はない。
問い合わせ
江口洋品店・江口時計店 TEL:0422-27-2900
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■連載「ヴィンテージウォッチ再考」とは……
インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。本連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。