サッカー日本代表のFW塩貝健人(ヴォルフスブルク)は日本人には珍しいストライカー気質の持ち主だ。2026年ワールドカップは出場機会が少なく不完全燃焼に終わったが、同年9~10月の代表活動で国際Aマッチ初得点を記録。誰よりもゴールと勝利にこだわり、2030年ワールドカップへの道を切り拓いていく。

21歳が明かした冷徹なゲームメイク
強気な発言や態度が注目を浴びる塩貝だが、思考はシンプル。いかにゴールを奪うか、いかに勝利を手にするかにフォーカスしている。
一触即発のシーンがあった2026年9月24日のウルグアイ戦から一夜明けた練習後の取材エリア。相手と小競り合いを起こした塩貝が明かした真の狙いに驚かされた。
「相手の4番のキャプテンの選手がめっちゃ熱くなっていてイエローカードを出されていたので、その選手を煽ればワンチャン、レッドもあるかなと思った。よくわからないけど、スラングで悪口を言っていたように聞こえたので」
ウルグアイ戦に塩貝は後半37分から途中出場。1-1で迎えた後半アディショナルタイムに劇的な決勝ゴールを決めた。
待望の代表初ゴールはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入。オフサイドの有無をチェックしている間に塩貝がヒートアップしていた相手のベテランDFヒメネスを小突いた。
反撃されて乱闘寸前となり、MF久保建英(レアル・ソシエダード)らが仲裁に入る事態に発展。塩貝もエキサイトしているように見えたが、実は冷静で相手を退場に追い込むために計算して挑発を仕掛けたというのだ。
「ああいうところは、もう少し賢くできるのかなと思う。でも、日本ではいろいろな考え方があるし、それに合わせないといけないこともある。チームの雰囲気を壊したら駄目なので」
「成功すればすべて正解になる」──鎌田大地が認める“時代の異端児”
誰よりもギラついている。森保ジャパンでの現在の役割は主に終盤で投入されるジョーカー的存在。限られた時間で結果を出すために、2、3人に囲まれても味方にパスを出さずに自ら強引にシュートを狙いに行くシーンも多い。
0-0でPK戦に突入した2026年10月1日のキリン杯決勝エクアドル戦では、塩貝は7人目のキッカーに指名され、5人目で決着したため蹴る機会がなかった。試合後には森保監督に「俺、PK下手そうですか?」と直接質問。代表初選出から半年足らずの21歳とは思えない振る舞いを見せた。
結果にどん欲な姿勢は練習でも変わらない。レクリエーションの要素が入ったメニューでも常に本気。シュート練習でゴールを決められないと本番と同様のテンションで悔しがる。
日本代表の大黒柱であるMF鎌田大地(クリスタルパレス)は威勢のいい若手を頼もしそうに見つめつつ、冷静な意見を口にする。
「彼がこれから世界を代表するような選手になれば、こういう行動はすべて正解になる。逆にうまくいかなければ間違っていたという見られ方をしてしまう。彼もそれは理解していると思う。今の時代にはなかなかいないので、面白い選手だなと思いつつ、どっちに転ぶのかなという感じです」
次の日本代表活動は11月のシンガポール遠征。11月14日にブラジル、11月17日にパラグアイと親善試合を行う。
塩貝にとってブラジルは因縁の相手だ。2026年夏のワールカップ北中米大会の決勝トーナメント1回戦のブラジル戦前に「昔は強かったというイメージ」などと発言。過大解釈されて意図せぬ形で世界に発信され、ブラジル国内を中心に炎上した。
現在も自身のSNSに誹謗(ひぼう)中傷のようなコメントが届く。「気にしないと言ったら嘘になる」と認めたうえで「批判的なコメントだけじゃなく、応援してくれるメッセージも届く。批判的な声にエネルギーを使わず、いい方向に使いたい」と前を向く。
所属するヴォルフルブルクではプレータイムを伸ばせずに結果を残せておらず、11月の日本代表メンバー入りは安泰ではない。
「まずは代表に呼ばれるためにしっかりと所属チームでアピールしたい。ブラジルにはワールドカップで負けているので、もう1回は負けられない」
既存の枠にとらわれないキャラクターは大化けする可能性を感じさせる。どう転ぶかは本人次第。1試合1試合、1回1回の練習に魂を込めて、成功を掴み取りに行く。
塩貝健人/Kento Shiogai
2005年3月26日、東京都生まれ。横浜FCジュニアユースからユースへの昇格が見送られ、国学院久我山高に進学。3年時に全国高校選手権に出場し、日本高校選抜に選出された。慶大1年時の2024年1月に横浜Mへの加入が内定し、同4月に特別指定選手でJ1デビュー。同8月にオランダ1部NECナイメヘン入り。2026年1月にドイツ1部ウォルフスブルクに完全移籍した。2026年3月28日のスコットランド戦に後半33分から途中出場して日本代表デビュー。わずか12分の出場でワールドカップ北中米大会のメンバーに選出された。1m80cm、77kg。利き足は右。

