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2026.07.16

「高校時代は全力疾走しなかった」日本ハム・水野達稀はなぜ首位打者争いをする選手へ成長できたのか

北海道日本ハムファイターズで首位打者争いを演じる水野達稀。今やリーグ屈指のショートだが、高校時代は甲子園で結果を残せず、プレーには多くの課題があった。なぜ、ここまで成長できたのか。現地で追い続けた取材メモから、その進化の理由を読み解く。

「高校時代は全力疾走しなかった」日本ハム・水野達稀はなぜ首位打者争いをする選手へ成長できたのか

首位打者争いへ急成長。日本ハム・水野達稀が1番打者として覚醒

2025年まで2年連続パ・リーグの2位となり、2026年は優勝の期待も大きい日本ハム。開幕当初はなかなか調子が上がらなかったものの、セ・パ交流戦では大きく勝ち越し、ソフトバンク、西武と激しい首位争いを演じている。

そんなチームで2026年大きく成績を伸ばしているのが、ショートの水野達稀だ。開幕当初は下位打線を打つことが多かったが、好調な打撃を評価されて5月中旬以降は主に1番に定着。6月は20試合で27安打、3本塁打、打率.338という見事な成績を残し、チームの浮上に大きく貢献している。

7月9日終了時点でパ・リーグ打率ランキングの2位となっており、首位打者も狙える位置につけているのだ。

甲子園では課題も目立った高校時代。全力疾走しなかった水野達稀

水野は香川県の出身で、中学時代は地元の軟式野球部でプレーしている。丸亀城西進学後は1年秋からショートのレギュラーに定着。3年夏の香川大会では5割近い打率を残してチームの甲子園出場にも大きく貢献した。

初めてそのプレーを現場で見たのは、その後の甲子園本大会の日南学園戦だ。しかしその試合で1番、ショートで出場したものの4打数ノーヒットと結果を残せず、チームも0対2で敗れている。

試合を記録した当時のノートにも課題が多く記されていた。

「小柄だがショートの守備の動きは軽快そのもの。一歩目のスタートが速く、ハンドリングの柔らさもある。打撃は当てにいかずに強く振り切れるのは良いが、少しタイミングをとる時のバットの動きに無駄が多い。ミスショットでの平凡なフライが目立つ。脚力もありそうだが、内野ゴロで全力疾走する姿が見られず、走塁の意識が低い」

ちなみに第2打席と第4打席はファーストゴロに倒れているが、いずれも早々に足を緩めており、一塁到達タイムは4.64秒と4.72秒ということからも懸命に走っていないことがよくわかるだろう(一塁到達タイムは4.00秒を切れば俊足と言われるレベル)。

当時から評判の選手だったが甲子園で結果を残せなかったこともあり、卒業後は社会人野球のJR四国に進んだ。

社会人で別人のように成長。日本ハム躍進を支えるショートへ

そんな水野のプレーが見違えるように良くなっていたのが翌年に出場した都市対抗だった。

高卒ルーキーながらショートのレギュラーに定着すると、初戦の三菱重工神戸・高砂戦でいきなりホームランを放って見せたのだ。高校生の野手が社会人野球に進むと、投手のレベルが一気に上がり、さらにバットも金属から木製になって苦しむことが多いが、水野に関してはそんな様子はまったく見られなかった。短期間で高いレベルに対応できたのは、センスの高さの証明と言えるだろう。

その後も不動のレギュラーとして活躍。社会人時代の最後に現地でプレーを見たのは2021年7月3日に行われた日本選手権の対三菱重工West戦だったが、この試合でも水野はサヨナラホームランを含む3安打2打点の大活躍でチームを勝利に導いて見せた。

当時のノートにも以下のようなメモが残っている。

「上背はないが年々打撃は力強さが増しており、ファーストストライクから思い切りの良いスイングが目立つ。脚力があってもしっかり振り切り、パンチ力も十分。全力疾走する姿勢も高校時代とは別人のよう。

相手の隙を突く走塁も光る。ショートの守備もフットワークの良さは抜群。実戦でも2つの併殺を難なく完成。プロでもショートとして勝負できる可能性十分」

ちなみに第3打席のサードへの内野安打の一塁到達タイムは3.92秒をマークしており、この数字からも高校3年夏に出場した甲子園とは走塁に対する意識が大きく改善していることが分かるだろう。

プロでも最初の2年間は一軍の壁に苦しんだが、3年目には一軍に定着して105試合に出場。2025年も2年連続で出場試合数は100試合と少し減らしたが安打数は前年と同数で打率を伸ばしている。

そして2026年はすでに過去2年を上回るヒット数を放ち、リーグを代表するショートへと成長を遂げた。チームは長打力のある選手は多いものの、足を使える選手は少ないだけに、そういう意味でも水野の存在は貴重である。ここから逆転優勝を狙ううえでもキーマンの一人となることは間違いないだろう。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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