ワールドカップ北中米大会で1次リーグF組を2位通過した日本代表は、2026年6月29日(日本時間30日)、米テキサス州ヒューストンで決勝トーナメント1回戦に臨む。相手は優勝候補・ブラジルだ。所属クラブの2部降格や移籍不成立という逆境を乗り越え、「2部レベルの選手じゃない」と自ら証明した中村敬斗(スタッド・ランス)。憧れてきたサッカー王国を相手にすべてをぶつける。【特集 2026FIFAワールドカップ】

ロナウジーニョとの出会いが、すべての始まりだった
当時6歳の中村少年がテレビにくぎ付けになった。2006年ワールドカップドイツ大会。華麗なステップで相手を翻弄(ほんろう)するブラジル代表FWロナウジーニョのドリブルの虜になった。
「ロナウジーニョが大好きで、ブラジルのサッカーに本当に魅了されました。本気でサッカー選手になるというきっかけを与えてくれたのがブラジルです」
その後ブラジルへの憧れが抑えきれず、両親に頼み込み、ブラジルへ旅行。リオデジャネイロの名門クラブ・フラメンゴの近くの公園やビーチで1人でボールを蹴っていると、毎回、地元の人々から声を掛けられ、一緒にゲームなどに興じた。サッカーが文化として根付いていることを肌で感じることができた貴重な時間だった。
「2部レベルじゃない」と証明。中村敬斗が14ゴールでつかんだW杯切符
夢を叶えプロになったが、ワールカップメンバー入りの道は平坦ではなかった。
2024~25年シーズンはフランス1部スタッド・ランスで11得点を記録したが、チームは2部に降格。トップリーグでのプレーを求めて移籍を志願するも、所属クラブとの交渉が折り合わず残留を余儀なくされた。
日本代表の森保一監督は選手選考において日常のプレーレベルを重視する。
球際の強度が高く、世界レベルの選手が集う欧州5大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、フランス、イタリア)のクラブでプレーすることが代表入りの近道となるだけに、ワールドカップ直前のシーズンをフランス2部で過ごすことは大きな痛手だった。
それでも「中村敬斗は2部レベルの選手じゃないと思わせるしかない」と覚悟を決め、1年での1部昇格を目指して奮闘した。終盤に失速したチームは目標を達成できなかったが、自身はキャリアハイのリーグ14得点を記録。
活躍が評価され、ワールドカップメンバーに選出された。
ゴールとアシストで導いた、日本の決勝トーナメント進出
本大会では1次リーグ初戦のオランダ戦で、日本代表の大会1号ゴールを決めて、2-2の引き分けに貢献した。
第2戦のチュニジア戦では前半4分にMF鎌田大地(クリスタルパレス)の先制弾をアシスト。チームを勢いに乗せて4-0の大勝に導いた。
第3戦のスウェーデン戦にも先発出場した。靴下の短さを主審に注意されて、履き替えを命じられる不測の事態が起きたが、集中力を切らさなかった。
1次リーグ全3試合に左ウイングバックで先発して決勝トーナメント進出に貢献。1次リーグF組を2位通過して、王国ブラジルへの挑戦権を勝ち取った。
「漫画とかアニメとかで、ワールドカップの決勝でブラジルとやって勝つみたいなのが、よくあるあるじゃないですか。今回は決勝ではないけど、決勝トーナメントでブラジルとやれるのはすごいと思います」
そのうえで、こう言い切った。
「今はもう憧れはまったくない」
ロナウジーニョに憧れて磨いてきたドリブルは、いまや日本代表屈指の武器となった。漫画のような最高の舞台で、左サイドを切り裂く。

