放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「令和ロマン」「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を輩出した桝本壮志のコラム。

「桝本さんの著書に書いてあった、『一流ほど、競争せずに協力する』という言葉にハッとした20代の会社員です。協力をすると、どんな利点があるのでしょうか? 実体験などがあれば教えてください」という質問をいただきました。
まずは、拙著を読んでいただきありがとうございます。
職場は、同期やライバルと業績を競う場でもあるので、「負けたくない」「出し抜きたい」という感情になるもの。
しかし、僕の周りにいる「一流」と呼ばれる人は、もれなく「競争よりも協力」を大切にしています。
なぜ彼らは、周囲に競り勝つスキルもあるのに「協力」を選択するのか? そこには、どんな「うま味」や「学び」があるのでしょうか?
今回は、50代の僕が社会人生活で得た知見と実体験をもとに、「なぜ一流は、競争せずに協力するのか?」について、じっくり掘り下げていきたいと思います。
「協力する」の伏線回収は35歳から
吉本NSCには、全国各地から負けん気の強い若者がやって来るので、4月の教室には火花が散っています。
そんな彼らに、「競争するより協力したほうが得するよ」と伝えると、一様にきょとんとした顔になります。
NSC生も世間の若者も、同期や同僚と「協力するなんてダサい」と思っている人が多いでしょう。
それは当然と言えば当然です。なぜなら“「協力する」の伏線回収は、35歳くらいから始まる”からです。
では、どうして「35歳から」なのでしょうか?
社会人となり、覚えなくてはいけない仕事が洪水のように押し寄せてくる20代前半は、あなたにとっても周りの同世代にとっても、何かと耐える時期です。
20代のころの僕も、駆け出し作家としての雑用に追われ、まったく未来が見えない日々を送っていました。
ところが、30歳前後から徐々に仕事が増えはじめ、35歳をこえるとレギュラー番組が18本になったのです。
これは、僕の能力が上がったわけではありません。同世代のADや芸人さんが、ディレクターに昇格したり、人気芸人になったりしたので、「手伝ってくれない?」と声をかけられることが多くなっただけなのです。
人生には「浮き沈み」がつきものなので、好調なときもあれば絶不調なときも訪れます。
しかし、自分が不調になっても、必ず周りの誰かは好調であり、35歳になると、かつての同期や取引相手が大きな仕事を任されていたり、重要なポジションに就いていたりする確率は格段に上がります。
いま振り返ってみると、僕に声をかけてくれた同世代は、一緒に小道具をつくったり、企画書をつくったりした「小さなことを協力し合った人たち」でした。
いつかやってくる「自分の不調期」を見越して、そのときに必要な「好調な仲間」を一人でも多くつくっておく。
一流と呼ばれている人たちは、その生存戦略を熟知しているからこそ、競争より協力をしているのではないでしょうか。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」をはじめ、教え子は1万人以上。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。
会議もトーク番組も「協力」で差がつく
「協力」という言葉は、どこか青春じみていてダサいように感じますが、仕事の大部分は協力によって円滑になります。
例えば、協力の効果を伝えるために、NSCである実験企画を行ったことがあります。
まず、5人の若手に、ボケ役、ツッコミ役、リアクター、いじられ役、裏回しと、それぞれに役割を与えて集団トークをさせます。
ご想像のとおり、結果はあまり盛り上がりません。
続いて、役割をとっぱらってトークをさせます。すると、同じメンバーとは思えないほど面白くなるのです。
理由は明白。個々が状況に応じてツッコミ役に回ったり、いじられる側になったり、裏回しをしたり、「役割にこだわらずに協力」したほうが、集団のパフォーマンスは上がるからなんですね。
これは社内会議やオフィスの清掃などの小さなことでも同じです。
役職や肩書きによって、しかめっ面をして会議をしたり、「掃除は若手がやって当然」といった思考よりも、上位者がフレキシブルに損な役回りを買って出たほうが、チーム力もあなたの統率力も上がるのです。
競争は、相手を負かすと一時的にハイになれる「高揚剤」のようなものですが、協力は長い目で見ると「安定剤」になり得る長期戦略でもある。
一流は、そういった思考の持ち主だと、僕は30年間、つくづく思い知らされてきたんですね。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

