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2026.03.18

未完の大器、望月ヘンリー海輝。日本代表、海外挑戦への想い【後編】

類まれなる身体能力と、サッカーに対するひたむきな姿勢──。近い将来に日本代表を背負うことになるであろう、大ブレイク寸前の若きサッカー選手、FC町田ゼルビアDF・望月ヘンリー海輝に独占インタビュー。後編。前編はコチラ。【特集 2026FIFAワールドカップ】

未完の大器、望月ヘンリー海輝。日本代表、海外挑戦への想い【後編】

日本代表では「ボールがきれいに止まる」ことに驚いた

晴れてFC町田ゼルビアでプレーすることが決まった望月ヘンリー海輝が初めて練習に参加したのは、国士舘大学卒業を間近に控えた2024年1月。彼は、その日のことをはっきりと覚えているという。

「国士舘はJリーグのクラブへの練習参加を禁止されているというお話をしましたが(前編記事参照)、そのルールは加入が決まってからも有効なので、2024年のシーズン始動日に初めて町田の練習に出ました。めっちゃ緊張しましたね(笑)。

僕はあまりサッカーを見ないんですが、さすがにワールドカップぐらいは見ていて、テレビで見た昌子(源)選手がいて、ヤバいと思いました。いまでこそ『源くん』なんて呼んでいますけれど(笑)、最初は恐れ多かったです」

プロの練習はどこが違ったかと質問すると、一瞬にして表情から笑顔が消えた。

「大学の時から自分の技術には足りないところがあると自覚していましたが、実際に町田の練習に加わると、想像以上の衝撃でした。ボールを止めるといった基礎の部分から違いましたし、戦術を理解する選手たちの賢さにも圧倒されました。技術と戦術の理解力……、主にこのふたつですね、大きな差を感じたというのは」

2024年の開幕戦に途中出場してJ1デビューを飾ると、4月24日の対FC東京戦でプロ入り初先発を果たす。望月は、この時に黒田剛監督からかけられた言葉が忘れられないと振り返る。

「僕がスタメンで試合に出るということは、スタメンから外れる人がひとりいるということじゃないですか。外れる選手の気持ちも考えてしっかりやらなければいけない、ということを言われました」

望月ヘンリー海輝

2024年シーズンはFC町田ゼルビアが初めてJ1リーグを戦った年で、3位に躍進してACL(アジアチャンピオンズリーグ)の出場権を勝ち取った。最終節まで優勝争いをしたルーキーイヤーに、黒田監督の指導で学んだことを尋ねると、「失点をしないことに対するこだわりですね」と即答した。

「サッカーは点を取る部分が注目されると思うんですが、黒田監督の場合は相手をゼロに抑えるというところからすべてを逆算して、たとえば体の入れ方だったりコーチングだったりを考えています。そこがすごく勉強になっています」

監督の指導だけでなく、さきほど話に出た昌子源をはじめ、相馬勇紀、中山雄太、谷晃生など、FC町田ゼルビアには世界を知る代表選手が豊富に在籍していることも大きな刺激になっているという。

「新人の時に初めて代表に呼んでいただいて、緊張でうわーどうしようってなった時に、(昌子)源くんから『別に失うものなんてないんだから、思い切ってやってこいよ』と声をかけてもらって、その言葉をすごいパワーになりましたね」

ただし、実際に参加した代表活動は、FC町田ゼルビアで初めてプロの練習を体感した時を上回る衝撃があったという。

「トラップひとつをとっても、ただボールが止まるだけじゃなくて、止まり方がきれいなんです(笑)。クロス練習でもぴたりと合わせて蹴るし、クロスを受けた選手は完璧にコースを突いてゴールします。あとは判断のスピードですね。常に素早く、正しい選択をします。三笘(薫)選手のドリブルにも驚いたし、一番すごいと思ったのは守田(英正)選手の両足が使える技術とチームの真ん中でゲームをコントロールする力です」

2025年10月で逆転勝ちをした対ブラジル戦の感想については、「それほど長い時間出場したわけではないんですけれど」と前置きをしてから、こう続けた。

「ぎりぎりのタイミングで判断を変えるところとか、瞬間的にスピードを上げるところに自分との差を感じました。僕が縦にドリブルしたときにも、ジョエリントン選手に体を入れられて止められて、やっぱりプレミアリーグでやっている選手は違うな、と」

日本とアジアで圧倒的な存在になったその先に

2024年にJ1デビュー、翌2025年は天皇杯の決勝にフル出場して優勝に貢献するとともに、日本代表としても試合に出場。プロ入り後、順風満帆でキャリアを積んでいるように見える望月に、これからの抱負を語ってもらう。まず、6月に控えた2026ワールドカップ北中米大会の日本代表入りについて。

「もちろん自分としては入りたいと思うし、ワールドカップに出たいという思いはあります。けれども選ばれることがゴールではなく、試合に出て日本代表に貢献しなければ意味がない。そこまで考えると、いまの自分のレベルでは足りないことは自覚しています」

では、日本代表に貢献するためには、なにを磨くべきなのか。

「自分の武器はスピードだと思っているので、攻撃なら裏に抜けるようなプレー、守備なら幅広くカバーするような動きを伸ばしていきたいと思います。町田では最初は右ウイングバックをやらせてもらって、最近は最終ラインの3バックに入ることが多くて、攻守ともに勉強をさせてもらっています。とはいっても、ゲームのサッカー選手みたいにポンとレベルが上がることはないので、JリーグやACL(アジアチャンピオンズリーグ)で毎試合、相手を圧倒するようなプレーを続けなければいけないと思っています」

望月ヘンリー海輝
望月ヘンリー海輝/MOCHIZUKI Henry Heroki
2001年埼玉県生まれ。小学生の時は大宮アルディージャの下部組織でプレーし、中学・高校は三菱養和で育つ。国士舘大学サッカー部を経て、2024年にFC町田ゼルビアに入団。開幕戦で途中出場してJリーグデビューを果たし、やがて右ウイングバック/サイドバックとしてレギュラーを確保する。出場機会は得られなかったもののこのルーキーイヤーに日本代表に選出され、2025年の東アジアE-1サッカー選手権2025で日本代表として初出場を果たした。

アジアのレベルで圧倒できるような存在になれば、その先には日本代表とともにヨーロッパでの活躍も視野に入ってくるはずだ。

「JリーグやACL、それに代表の試合を経験させてもらって、メンタル面は少し成長した実感があります。具体的には、緊張しないで力を発揮できるようになっている感じです。同時に、自分よりも高いレベルで試合や練習をすると成長できるという感覚もあります。だから日本やアジアで圧倒的な存在になれたならば、その先にヨーロッパ挑戦もあると思います」

望月ヘンリー海輝との会話で印象に残るのが、常に自身の能力を客観的に把握している点だ。「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」という孫子の言葉があるけれど、この未完の大器は自分のどこが「未」なのかがよくわかっている。圧倒的な身体能力とともに、己を知る謙虚な姿勢を武器に、大器が開花するはずだ。

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TEXT=サトータケシ

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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