PERSON

2025.11.29

鈴木京香、横田慎太郎さんのことは知っていた。ご縁だなと思った【映画『栄光のバックホーム』インタビュー】

主演映画『栄光のバックホーム』で、横田慎太郎さんの母・まなみさん役を演じた鈴木京香。秋山監督が「ダメもと」でオファーしたところ、彼女は「私でいいんですか?」と快諾したという。報道を通じて横田さん親子の歩みを知っていた鈴木は、役づくりのなかでまなみさんの柔らかさと芯の強さに深く心を動かされたと話す。今回の作品に寄せる想い、そしてそこから得た学びについて語ってくれた。#2#3

鈴木京香さん

「素晴らしい息子を持てた幸せを表現しなければ、と思いました」

「横田慎太郎さんのことは報道で知っていました。お亡くなりになったことも、阪神タイガースが優勝した時に横田さんの背番号『24』のユニフォームが胴上げされたことも。ご縁だなという気持ちが強かったので、『ぜひやらせてください』とお返事しました」

オファーを受ける前に見た、まなみさんが取材に応じる映像が、役作りの基盤になった。

「本当におつらい状況だったと思いますが、苦しい表情を見せずに質問にお答えになっていた姿が印象に残っています。その後、さまざまな資料に目をとおし、お電話でも直接お話をうかがうなかで、母・まなみさんの素晴らしさは、表面的にはとても柔らかく優しいけれど、芯が強く、意志がしっかりあることだと感じました。自分がまなみさんを演じるなら、つらさや苦しみではなく、素晴らしい息子を持てた幸せを前面に出して表現したいと思いました」

鈴木は普段の自分について、役柄のイメージとは異なり、主演だったり現場で年上だったりしても「現場でリーダーシップを上手に取れない、見かけと違う妹キャラ(笑)」で、年下の共演者にも「話しかける前に遠慮してしまう」タイプだという。だが今回の撮影では、息子を演じる松谷鷹也に対して、いつもとは違う接し方をしていた。

「鷹也くんは撮影期間中ずっと慎太郎くんそのものでした。私も彼に対して本当の母親のような気持ちになっていたので、撮影中につい体調が気になってしまって。『よく眠れた?』『昨日の撮影はどうだった?』と、自然に声をかけていました。私にしては珍しく、『またまた〜!』『〜しちゃって!』と、冗談を交わす距離の近いコミュニケーションもできました」

俳優という仕事のやりがいについて「作品ごとに学びがあること」と語っていた鈴木は、「今回もありました」と言葉を選びながら続ける。

「監督がおっしゃっていた“生きる勇気”というのは“諦めずに立ち向かう力”と近いと思います。今回の映画で描かれる横田慎太郎さんの姿は、悲劇ではなく、短い時間であっても自分の愛するものに全力で打ちこんだ人生の美しさ。そのことを監督は描きたかったのではないでしょうか。私自身も、慎太郎さんの生き方を通して、“人生の素晴らしさは長さとイコールではない”と感じました」

最後に「親より先に逝くなんて親不孝だとおっしゃる方がいるけれど、慎太郎は決して親不孝じゃありません」というまなみさんの言葉に触れた。

「この言葉がすごく心に残っています。人生の善し悪しは長い短いではなく、強い弱い、勝った負けたでもない。人の人生は簡単に語れるものではありません。私もそういう見方だけはしないようにしようと改めて思いました。それが今回、学ばせていただいたことのひとつではないかと思います」

鈴木京香/Kyoka Suzuki
1968年宮城県生まれ。高校在学中からにモデルとして活動し、1988年に「カネボウ 水着キャンペーンガール」に選出。翌年、森田芳光監督『愛と平成の色男』で俳優デビュー以降、第一線で活躍し続けている国民的女優。2010年に主演した『セカンドバー ジン』は社会現象となり、映画化もされた。2019年のドラマ『グランメゾン東京』と映画 『グランメゾン・パリ』(2024年)で演じたヒロインのオーナーシェフが記憶に新しい。 建築やアートにも造詣が深く、アートコレクターの顔も持つ。 

衣装クレジット:ニット¥69,300、パンツ¥102,300(ともにヴィンス/コロネット TEL:03-5216-6516) イヤーカフ〈右上〉¥64,900、イヤーカフ〈右下〉¥93,500、イヤーカフ〈左上〉¥88,000、イヤーカフ〈左下〉¥72,600、リング¥88,000(すべてヒロタカ/ヒロタカ 表参道ヒルズ店 TEL:03-3478-1830)他はスタイリスト私物

TEXT=須永貴子

PHOTOGRAPH=鮫島亜希子

STYLING=藤井享子(banana)

HAIR&MAKE-UP=板倉タクマ(ヌーデ)

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