PERSON

2025.10.09

楽天ドラ1ルーキー・宗山塁、勝負強さを磨いた学生時代

2024年のドラフトで大注目を集め、プロ入り1年目から非凡な存在感を放つ楽天・宗山塁が、スターとなる前夜に迫った。

明治大学時代の宗山類(楽天)

ドラフト1位ルーキー・宗山塁が楽天の希望に

三木肇監督が2度目の就任となった2025年シーズンも、4年連続で4位に終わった楽天。なかなか優勝争いに加われないシーズンが続いているが、そんなチームにあって大きな希望の光となっているのがドラフト1位ルーキーの宗山塁だ。

2024年のドラフト会議では5球団が競合するなど高い注目を集めていたが、オープン戦から結果を残してショートのレギュラーに定着。ここまでルーキーとしては12球団でトップとなる119試合に出場し、119安打、打率.261(いずれもチーム3位。2025年10月2日終了時点)という成績を残しているのだ。

広陵高校時代から光った「三拍子そろった」才能

そんな宗山は広島の強豪である広陵高校の出身。1年夏には控え選手ながら早くも甲子園の舞台を経験している。

筆者が初めて現場でプレーを見たのは1年秋に出場した明治神宮大会の対星稜戦だった。

この試合では相手のエースである奥川恭伸(現・ヤクルト)が7回を被安打3、11奪三振で完封(9対0のコールドゲーム)と圧巻の投球を見せた。しかし、そんななかでも3番、セカンドで出場した宗山は2安打を放つ活躍を見せたのだ。

当時のノートにも以下のようなメモが残っている。

「第1打席でいきなり奥川の149キロをとらえてライト前ヒット。振り出しの鋭さとミート力はとても1年生とは思えない。出塁するとすかさず盗塁も決め、積極的な走塁も目立つ。

外角のボールにも合わせるだけでなく、しっかり踏み込んでとらえており、140キロ台後半のボールにも力負けしない。タイミングをとる動きに無駄がなく、スイングのバランスの良さも出色。

(中略)

セカンドの守備もフットワークの良さが目立ち、スナップスローの上手さも目立つ。高いレベルで三拍子揃い、打てる内野手になれる可能性は十分」

翌年春の選抜高校野球では2試合で1安打に終わったが、ショートにコンバートされて軽快な動きを見せていたのをよく覚えている。

明治大でスター選手に。東京六大学歴代6位の118安打

宗山が本格的に全国区で知られる存在となったのは、明治大学進学後だ。

多くの力のある選手が集まるチームで1年春のシーズン途中からショートのレギュラーに定着すると、1年秋からは3季連続でベストナインを受賞。2年春には首位打者に輝くなど、瞬く間に東京六大学のスター選手となったのだ。

4年春こそ怪我もあって5試合の出場に終わったが、それ以外のシーズンでは常に結果を残し続け、東京六大学で歴代6位となる118安打をマーク。

また打撃以上にショートの守備に対する評価も高く、そのことが5球団が1位指名する大きな要因となったことは間違いないだろう。

鮮烈に残る逆転ツーラン。メンタルの強さが光る

大学時代にプレーを見る機会が多かったが、特に強く印象に残っているのは2年秋、2022年10月30日に行われた立教大との試合だ。

1点ビハインドで迎えた8回表、ノーアウト一塁の場面で打席に入った宗山は追い込まれてからの6球目をとらえ、逆転のツーランホームランをライトスタンドに叩き込んで見せたのだ。

そのバッティング自体ももちろん素晴らしかったが、それ以上に驚かされたのが宗山の態度だ。当時のノートにもその様子がこう書かれている。

「追い込まれても当てにいくようなスイングにならず、しっかり振り切ることができている。

(中略)

8回のチャンスに送りバントの様子がまったくないところにベンチに信頼が感じられる。完璧なスイングには見えなかったが、それでもスタンドインし、インパクトの強さが十分。

起死回生の逆転ホームランにもガッツポーズひとつ見せずに淡々とベースを一周するところに大物の雰囲気が漂う」

この時、宗山はまだ2年生。まだドラフト1位が確実視されているような選手ではなかった。それにもかかわらず、最高の結果にも決して舞い上がるような様子を見せないメンタリティーを備えていることが、高い注目のなかでも結果を残し続ける要因のひとつと言えるのではないだろうか。

ちなみに同じ東京六大学出身のショートで、宗山と比較されることの多い鳥谷敬(早稲田大出身・元阪神、ロッテ)は、ルーキーイヤーに101試合出場で59安打、打率.251。

いかに宗山の1年目の成績が素晴らしいものかがよくわかるだろう。ハイレベルな新人王争いを制する可能性も高い。

このまま2026年以降も順調に成長を続け、パ・リーグはもちろん、球界を代表するショートとなることを期待したい。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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