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2024.09.19

楽天・早川隆久、大学No.1左腕からパ・リーグを代表するエースになるための鍵とは

2024年シーズン、タイトル争いに絡む大活躍を見せる早川隆久がスターとなる前夜に迫った。

早稲田大学時代の早川隆久(現・楽天)。

初タイトルに期待

ペナントレースもいよいよ佳境を迎えている2024年のプロ野球。

優勝争いはもちろん、個人タイトルの行方についても注目が集まるが、パ・リーグの投手で好ポジションにつけているのが早川隆久(楽天)だ。

主な個人成績とリーグ内での順位を並べると以下のようになっている(2024年9月12日終了時点)。

防御率:2.19(2位)
勝利数:10勝(3位タイ)
奪三振:143(2位)
勝率:.714(2位)
※最高勝率のタイトルは13勝以上が必要。

トップの部門こそないもののすべてが3位以内であり、ここから逆転でのタイトル獲得も十分に期待できるだろう。

高校2年秋から背番号1を背負う

そんな早川は千葉県の出身で高校は地元の強豪として知られる木更津総合に進学。入学当初は故障もあって外野を守っていたが、1年秋からは投手陣の一角に定着している。

初めてピッチングを見たのは2年春に出場した選抜高校野球、対岡山理大付戦だった。

背番号10ながら先発を任せられた早川は2回に先制を許したものの、粘り強いピッチングを披露。最終的には7回を投げて3失点と試合を作り、チームの勝利に貢献した。

ちなみにこの時の背番号1で、リリーフとして試合を締めたのが現在日本ハムでプレーしている鈴木健矢である。当時のノートには早川の投球について以下のようなメモが残っている。

「担ぐ、ひねるなど無駄な動きのないフォーム。流れがスムーズでなぞるように同じフォームで投げられる。

少しステップの幅が狭く見えるが、しっかり軸足でためを作ってから体重移動。腕の振りも体から近く、ボールの出所が見づらい。

(中略)

特に素晴らしいのが右打者の内角へのストレート。カーブ、スライダーは少し変化が早く見えるが、ストレートでコーナーを突けるので打者も変化球に手が出る。

中盤から制球がばらつき、カーブ、チェンジアップの腕の振りが弱いのは課題」

2年秋からは背番号1を背負い、3年時はエースとして春夏連続で甲子園に出場。春は前年夏の優勝校である大阪桐蔭を相手に1失点完投勝利。夏も唐津商、広島新庄を連続完封と見事なピッチングを見せ、U18侍ジャパンにも選出されている。

高校卒業後は早稲田大への進学を選んだが、この時にプロ志望であれば指名された可能性は高かっただろう。

大学4年で別人級に進化

しかし大学での早川は決して順風満帆だったわけではない。

1年春には早くも8試合に登板して1勝をマークしているが、防御率は5点台と打ち込まれる試合が多く、その後の2シーズンは未勝利に終わっている。

3年春からようやく先発に定着したが、3年秋終了時点での通算成績は7勝12敗、3.18。この時点でも2020年ドラフトの有力候補と見られていたが、目玉と考えていた関係者は少なかったはずである。

しかし4年になってからの早川は驚きの進化を遂げる。

この年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で春先から公式戦は中止。ドラフト候補の状態がなかなか伝わってこない状況だった。しかし8月に行われた季節外れの春季リーグ戦となった明治大との試合で早川はいきなり155キロを計測したのだ。

筆者はこの時、高校野球の東北大会の取材で残念ながら現地にはいなかったが、このニュースがドラフト戦線に与えたインパクトは大きかった。

ちなみに早川は3年時まで速くても140キロ台後半で、150キロを超えるようなボールはほとんど投げていなかったのだ。

ようやく最終学年の早川を見られたのは10月3日に行われた秋季リーグ戦の対法政大戦。

この試合で早川は立ち上がりから4者連続三振を奪うと、その後も相手打線を全く寄せ付けず、13奪三振、四死球0で完封勝利をマークしたのだ。ストレートの最速は151キロと自己最速には及ばなかったが、145キロを下回るボールはわずか2球しかなく、その出力の高さは3年生までとは別人。

4年秋のシーズン、早川は6勝0敗、防御率0.39という圧巻の成績を残し、その存在はドラフトの目玉と呼ばれるものとなった。

春先はコロナ禍で試合がなくなり、全体練習もできない状況だったが、そんななかでもしっかりと自身のピッチングを見直し、トレーニングを積んできたことが最後のシーズンでの大ブレイクに繋がったことは間違いない。

プロ入り後は2023年までの3年間で9勝、5勝、6勝と少し停滞していたものの、2024年は明らかに安定感が増しており、冒頭でも触れたようにパ・リーグを代表する投手の1人となりつつある。

長年チームを支えてきたベテラン投手が軒並み成績を落としているだけに、ここからさらに飛躍し、来年以降は楽天の大エースとなってくれることを期待したい。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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