2012年から2016年まで衆議院議員を務め、現在は企業のコンサルタントやコメンテーターとして活躍している宮崎謙介氏のコラム。第3回は、「政治家の力を利用する」ことのすすめについて。

陳情の優先順位は選挙で力になってくれる人⁉
前回、「政治は人間関係」という話をしましたが、それは政治家に限ったことではありません。政治や行政の力を借りてビジネスなり、社会課題の解決に取り組む際にも、人間関係がモノを言います。
たとえば、あなたが地元選出の政治家に、「近所に公園を新設してほしい」とか「地元の野菜をブランド化したい」など、なんらかの陳情を行うとします。陳情は、地元からの生の声ですから、政治家としては最重要視するもののひとつです(その裏には次の選挙をにらんで…という思惑もあります)。
だからといって、そうすぐに話を聞いてもらえるとは限りません。なぜなら、議員はみなさんが想像する以上に多忙で、陳情にそう多くの時間は割けないからです。
とはいえ、地元の有力者や選挙に大きく貢献してくれた人は、陳情の機会を得やすいのも事実。政治家にとって、選挙で勝つか負けるかは生きるか死ぬかというほどの大問題ですからね。
自分を“生かしてくれる”人は、大切に、丁寧に扱っても不思議はありません。逆に言えば、自分に投票してくれるかどうかわからない人を優先する余裕は、ほとんどの政治家にはないだろうと思います。
ビジネスに置き換えるとわかりやすいと思うのですが、上顧客には特別なイベントに招待するけれど、まだ品物を購入してくれるかどうかわからない一見さんには、そこまでのサービスはしませんよね? それに似ていると思います。
なかには、面識がまったくない人からの陳情を積極的に受けるスタンスの政治家もいます。僕自身、自民党支持者ではないという人からの陳情を受けたことがありますから。それでも、政治や行政の力を借りるために、政治家を動かしたいなら、その政治家との人間関係を構築するのが近道であることは変わりません。もちろん、その陳情の中身が、地域や社会にとって真に価値あるものでなければ、政治家も行政も動いてはくれませんが。
行政を動かすには政治家を利用しろ
もうひとつ、政治も行政も人間関係がモノをいう例をご紹介しましょう。
僕の顧客のなかに、新規ビジネスを始めるにあたり必要な免許の取得を某役所に申請している企業がありました。
ところが、申請書類を提出して半年以上になるにも関わらずいっこうに認可がおりません。理由はみなさんご想像のとおり、その企業を含め、莫大な数の申請書が提出されていたため。人手が足りないのはどこも同じで、処理能力が追いついていないのです。
そこで、元政治家の僕の出番です(笑)。
議員時代のツテをたどって、その役所のトップと面談。新規ビジネスがいかにすばらしいかを伝えたところ興味を持っていただき、本件の重要性と緊急性もご理解いただき、ほどなくして現場の担当者とその企業の経営陣との面談が実現しました。そして、1週間後には厳しい審査をクリアし、認可がおりたのです。
こういったケースは珍しくありません。どこの役所も部署も、申請書類は山積みされているため、通常は順番に処理されていきます。山積みのなかから、特定のものをピックアップして審査を急いでもらうには、なんらかの働き掛けが必要なのです。一見不公平に思われるかもしれませんが、これも、一般社会での“あるある”ではないでしょうか。
ただし、数十年前とは違い、今はコンプラ重視の時代。社会的に意義のない案件にも関わらず、政治家が力技でねじこむなんて荒業は、ほぼできなくなっています。
なので、要望にしても申請にしても、「政治や行政の考えている方向と合致している」「その内容に優位性があり、社会性がある」「経営者や経営陣が信用に足る人物で、情熱を持っていること」は不可欠です。

1981年東京都生まれ。2003年に早稲田大学商学部を卒業し、生命保険会社やITベンチャーなどを経て、2007年ネオトラディションを設立。2011年自由民主党京都府第三選挙区支部長に選任され、2012年衆議院議員総選挙にて初当選。2014年2期目の当選を果たすものの、2016年に辞職。2018年、8infinityを設立。現在、約30社のコンサルティング・企業顧問・社外取締役として活動。