2012年から2016年まで衆議院議員を務め、現在は企業のコンサルタントやコメンテーターとして活躍している宮崎謙介氏のコラム。第2回は、ビジネスにも通じる政界の人間関係について。

法案の約7割は官僚が作成する
足かけ5年国会議員を務めさせていただいてわかったのが、「政治は人間関係である」ということ。それを説明するために、まずは政治家がどんなことをしているのかおさらいをしておきましょう。
国会議員の主な仕事は、「法律をつくる」「国の予算を決定する」「内閣総理大臣を選出する」の3つですが、ここでは「法律をつくる」を例に説明します。
法律は、国会で成立して初めて施行されるのですが、法案の約7割は各省庁の官僚が作成しています。官僚が作成した法案に国会議員が修正審議して可決しているのです。
官僚はその分野の専門家ではあるけれど、専門家であるがゆえ、他分野への意識や知識、視野が狭いのも否めません。
それを、陳情などの形で国民の意見を耳にしている国会議員が、「こんな意見があるぞ」「こんな発想もあるぞ」と横串を入れ、社会に役立つ法案に修正するというイメージです。と同時に、「この政策はこの省庁と協力してやったほうがいいのではないか」と、他の省庁との仲介をし、法案成立までを監督するという役割も国会議員は担っています。
そこでカギを握るのが人間関係。
官僚も人間ですから、“どんな国会議員が関わるか”によっては働き方が変わってきます。当然のことながら、大物議員や懇意にしている議員からの声はとおりやすい。反対に、自分たちをリスペクトしない議員がどんなに大声をあげても、すんなり聞いてはくれません。
そこは会社組織と同様。他部署から依頼された仕事でも、誰にどんな形で頼まれるかによって、力の入れ加減は変わるもの。本来あってはならないことだとは思いますが、それが人間というものです。
2009年から2012年まで、民主党政権だった時代を思い起こすとよくわかると思います。民主党政権は、事業仕分けを推し進め、官僚主導の政治から国会議員主導の政治へと大きく舵を切ろうとした。結果どうなったか。官僚から大反発をくらい、混乱を招き失敗したのは周知の事実です。
関係が構築されていればスムーズに進む
僕自身、人間関係の構築なしでは政治は進まないことを何度も目の当たりにしました。
若手議員で取り組んでいた政策について、当時官房長官だった菅(義偉)さんに相談に行った時のこと。超多忙ななか、「明日5分なら時間が取れる」と言われ訪問すると、そこにその政策に関連しそうな省庁の担当者が3、4人並んでいました。
事前にお渡ししていた資料に目をとおしてくださっていたのでしょう。その場で、「この話はこの省庁だね」「こっちはこの省庁」と、テキパキと割り振ってくださったうえに、その政策に強い中堅議員の先生方も紹介してくださった。
「あの先生に話を通しておくから、勉強会を立ち上げて、しっかりやりなさいよ」と。本当に、ものの5分で話がいっきに進みました。
僕が受けた陳情を、二階(俊博)先生に相談した時もそうでした。
地元支援者からの陳情で、「これは社会のためにも、ぜひ通すべき」と判断した案件があったのですが、関係省庁に掛け合っても新人議員ゆえになかなか話を聞いてもらえません。そこで二階先生に相談したのですが、先生はその場で関係省庁の局長に電話をかけ、僕の話を聞いてやってほしいと頭を下げてくださったのです。もちろん、先生との面談後すぐに局長に話を聞いてもらうことができました。
官僚とのパイプがまったくない新人議員と、長年政界で活躍し、官僚をはじめ議員たちとのパイプを築いてきた超大物議員の差はかくも大きいのです。
これも、ビジネスと同じです。自分の意見を通すためには根回しが大切ですし、根回しするためには、人間関係の構築が不可欠。政治家を経験したおかげで、そのあたりもだいぶ鍛えられたと思います。

1981年東京都生まれ。2003年に早稲田大学商学部を卒業し、生命保険会社やITベンチャーなどを経て、2007年ネオトラディションを設立。2011年自由民主党京都府第三選挙区支部長に選任され、2012年衆議院議員総選挙にて初当選。2014年2期目の当選を果たすものの、2016年に辞職。2018年、8infinityを設立。現在、約30社のコンサルティング・企業顧問・社外取締役として活動。