PERSON

2025.06.19

GLAY・JIRO、バンドとして世の中に認められた瞬間、それから約30年経った今を語る

大きな節目に4人が振り返るのは、目にしたあの時の絶景。そして、これから目の当たりにするであろう、幸せな景色とは。GLAYの旅路を4人それぞれが大いに語る。JIRO編。

GLAY・JIRO氏

時代を超えて響くGLAYの音楽

世紀末の1990年代後半にGLAYの音楽に夢中になったティーンエージャーたちは、今や40代も後半に差しかかろうとしている。「HOWEVER」「誘惑」といった名曲を聴いて育った世代が、昨年末、NHK紅白歌合戦のステージに25年ぶりの出演を果たしGLAYの姿に、かつての熱狂と若き日の自分を重ねた。そんな瞬間を共有した人も少なくなかったはずだ。

「紅白やレコード大賞への出演で、多くの人がテレビで今のGLAYを見てくださったあの瞬間は、周りからのリアクションがいちばんストレートでした。SNSでも“懐かしい!”という声が多くて、自分たちの音楽が多くの方の記憶とつながっていることを改めて感じました」

スタイリッシュなスーツに、タイドアップという端正な佇まい。JIROは、デビュー当時からそのイメージがほとんど変わらない。そんなスタイルに裏打ちされたベースプレイは、GLAYの音楽性が持つダイナミズムと繊細さの両面を支えてきたといってもいいほどだ。堅実でありながら、どこかに遊び心も宿す。バンドの屋台骨を担いながら、JIROはステージ上で今も軽やかな存在感を放つ。

GLAY・JIRO氏

最初の到達点として心に刻まれた光景

「1999年の幕張の20万人ライヴは、間違いなく忘れられない景色のひとつです、でも僕にとっては、それより少し前、初めての武道館ライヴの光景が特別な記憶として鮮明に残っています」

そう振り返る口調は、穏やかながら確かな実感に満ちていた。

「忘れもしない、1996年9月9日。デビューしてから、武道館に立つことを一番の目標にしてきました。念願かなってステージに上がった瞬間は、バンドとして世の中に認められた実感が、ものすごく強かったです」

成功の手応えとともに記憶に刻まれたその時から、すでに30年近くが経とうとしている。その年月は、JIROにとってどんな時間だったのだろうか。

「やはりGLAYが一度も活動を止めなかったのが大きいですね。常に次の予定があるからこそ、そこに向けて演奏面、体力面ともに、自分なりにコンディションを整えていく。僕は過去に一度、体調不良でライヴを飛ばした経験があるので、そうやってひとつひとつ目の前のことに向き合ってきたら、いつの間にかここまで来ていたという感覚です。だから、昔のアーティスト写真などを見返したりすると、さすがに“あぁ、長かったんだな”と感じますけどね(笑)」

GLAY・JIRO氏

自分たちの音楽でつなぐ人と人との景色

GLAYのなかでJIROは、ライヴのセットリストを組み立てる役割も担っている。ʼ90年代にGLAYの音楽に心酔した世代が親となり、子供たちが自然と楽曲に触れ、ライヴにも足を運ぶように。30年という月日が育んだのは、楽曲が歌い継がれる喜びと、ライヴ会場に広がる世代を超えた風景だった。

「それは大規模ライヴになればなるほど実感します。あとは、地方公演でもそう。遠出は難しくとも、地元にGLAYが来てくれるなら行ってみようと思ってくださる方が多くて。ただ、そういうことを考えると、やらなければならない曲が多すぎて、頭を抱えることになるんです」

自然体でいながらも、常に誠実に役割を果たしてきたJIROらしい視点だ。だが、来る東京ドーム、京セラドーム大阪の二大公演だけは、メンバー全員で、セットリストを決めたという。

「単独のドーム公演は、実に10年ぶり。そして今回は30周年の集大成。とてもじゃないけれど、自分ひとりで背負い切れるものじゃなかった(笑)。だから“みんな集まれ!”と号令をかけて、一緒に考えました。『こういうふうにしたほうがもっと伝わると思う』『もう少し自分たちが楽しむ場面があってもいいんじゃないか』とか。まさにTAKUROが言っていた“文化祭の準備”そのもので、その時間がもうすでに楽しい。きっとそれがGLAYらしさなのでしょうね」

メンバーそれぞれの想いを丁寧に拾いながら、最良のかたちを探していく。その姿勢が、30年をともに走り続けられた理由のひとつでもある。2025年4月にリリースされたベストアルバム・2タイトルの収録曲を、ファン投票で決定したことも、そんなスタンスを如実に物語っている。

「GLAYは、今回のアルバムのファン投票でもそうですが、愛されている曲がとにかく多いんです。ですから、ドームだからといって派手な仕かけというよりは、人と人がちゃんと心を通わせられるようなライヴにしたい。そこがまさにGLAYらしさの本質なのかなと思います」

奇しくも、ドーム公演の最終日となる6月8日は、TERUの誕生日でもある。その背中を少し離れたところから見つめるであろうJIROの目には、どんな光景が映るのか。その景色もまた、彼の記憶のなかで、GLAYの1ページとして優しく刻まれていくことだろう。

GLAY
北海道出身のロックバンド。TAKURO(Gt.)とTERU(Vo.)を中心に1988年に結成。1989年にHISASHI(Gt.)、1992年にJIRO(Ba.)が加入し現在の体制となり、1994年にメジャーデビュー。30周年を迎える2024〜25年にかけては「GLAY EXPO」というテーマを掲げ、さまざまな活動を展開。2025年4月には30周年記念ベストアルバム『DRIVE 1993〜2009 -GLAY complete BEST』、『DRIVE 2010〜2026 -GLAY complete BEST』を2タイトル同時リリースした。

<JIRO衣装クレジット>ジャケット¥39,600、パンツ¥29,700(ともにアタッチメント/アタッチメント 表参道店 TEL:03-6804-5460)シャツ[参考商品](キリュウキリュウ/キリュウ TEL:03-5728-4048) その他スタイリスト私物

TEXT=畠山里子

PHOTOGRAPH=HIRO KIMURA(W)

STYLING=Takeshi Sakazaki(StyleLAB.)、Masashi Iimura(StyleLAB.)

HAIR&MAKE-UP=Takayuki Tanizaki(Fats Berry)、Takahiro Hashimoto(SHIMA)

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