PERSON

2025.06.16

GLAY・TAKURO「氷室京介とTERUの声を聴いて腰を抜かした」

大きな節目に4人が振り返るのは、目にしたあの時の絶景。そして、これから目の当たりにするであろう、幸せな景色とは。GLAYの旅路を4人それぞれが大いに語る。TAKURO編。

GLAY・TAKURO氏
ジャケット¥93,500、シャツ¥44,000、パンツ¥44,000(すべてガラアーベント/サーディヴィジョンピーアール TEL:03-6427-9087)、その他スタイリスト私物

30年の軌跡。心に残る2つの「背中」

稀代のメロディメーカーであり、心を震わせるリリックの名手。GLAYの楽曲の大半を手がけ、多くのミリオンヒットを生みだしてきたTAKUROは、30年以上にわたりバンドの舵を取り続けてきたリーダーでもある。音楽的才能はもちろん、深い思索と絶妙なバランス感覚でGLAYの屋台骨を支えてきた彼が、これまでに最も心に焼きついている景色。それは、自身がよく知るふたりのヴォーカリストの姿だった。

「忘れられない出来事はふたつあり、ひとつは氷室京介さんとの共演です。14歳で氷室さんの声を聴いて文字どおり腰を抜かし、その圧倒的な熱量とカッコよさに触れた瞬間から、自分の人生は音楽に向かってまっすぐに進み始めました。好きなミュージシャンはたくさんいますが、そこからバンドを結成し、走ってこれたのは、氷室さんへの憧れが原動力となったのは間違いないです。

そしてもうひとつは、TERUの声を聴いた瞬間です。もともとはドラムとして誘ったんですが、たまたま遊びでデモテープにTERUが歌を入れた。それを聴いた時に、またしても僕は腰を抜かして(笑)。だから、自分の人生において決定的な影響を与えたふたりのヴォーカリストが、2006年に同じステージに並んで歌うという奇跡を目の当たりにした時に『この瞬間のために自分は音楽を続けてきたのだ』と心から思いました。30年間で最も印象的だった場面は? と聞かれると、真っ先に思い浮かぶのが、ステージの後ろから眺めていたこのふたりの背中なんです」

その出来事をミュージシャン人生のピークであり、それ以降は余生ですからと、笑いながら語るTAKUROは、どこか自嘲気味でありながらも清々しさをにじませていた。それゆえに、音楽家としての30年の年月をGLAYに捧げたといっても過言ではないと続けるその言葉には、深い実感と感慨が溢れでる。

「僕ら4人は、ともすれば家族や恋人よりも一緒にいる時間が長いんです。バンドを結成してから、昭和、平成、令和と時代をまたいで、全員が50代を迎えました。20周年も大きな節目ではありましたが、30年はやはり重みが違ってきますね」

GLAY・TAKURO氏

文化祭に向けて準備する楽しい日々を積み重ねて

GLAYといえば、ロック、ポップ、バラードと幅広い音楽性を持っているが、どの楽曲にも共通しているのは、普遍的な人間らしさに根ざした温もりや絆だ。その背景には、バンドの空気感と信頼関係が色濃く反映されている。その理由のひとつとして、メンバーの仲のよさがしばしば話題に上る彼らだが、TAKUROは冷静にこう分析してみせる。

「それはGLAYというバンドが、常に文化祭の準備をしているような感じだからでしょうね。ドーム公演にせよ、ホールツアーにせよ、いちど発表の舞台が終われば、すぐにまた次の文化祭の準備に向けて動きだします。その繰り返しが本当に楽しいんです。例えば、会社の経営者も、最初は世の中のために立ち上げた事業が、いつの間にか株主のために回さなくちゃならない構造になってしまうこともあると思います。そういった逆転現象をたくさん見てきましたし、僕らは“楽しさ”よりも“しがらみ”が上回りそうになった瞬間に、さっと身を引きます。それゆえに、自分たちが何をしたいか、何を音楽にのせて届けたいかを、これまで見失ったことがないのだと思います」

自分たちの手で、やりたいことだけを、丁寧に形にしてきた。その思いは2010年の自主レーベル「lovesoul music&associate(2016年にLSGに改名)設立にもつながっている。商業的成功とはまた別の、誇るべきバンドの成熟がここにある。

GLAY・TAKURO氏

30周年の先にある見たことのない景色へ

2024年から続く30周年のプロジェクトは、2025年5月31日・6月1日の東京ドーム、6月8日の京セラドーム大阪で、記念イヤーのグランドフィナーレを迎える。

「コロナ禍の真っ只中から準備をしてきたので、正直、燃え尽きるだろうなと思っています」

そう語る声には、やり遂げた者だけが持つ確信と、それでも前を見据える意思が宿っていた。GLAYとしての活動は7年先まで決定済み。終わりなき旅路のなかで、次の“文化祭”への準備ははもう動きだしている。

「まだ見ぬ景色という意味でいえば、僕たちよりも先を走るB’zやLUNA SEAが見ている風景を、僕らはまだ見ていない。かつては、日本でロックバンドがキャリアを積む文化そのものが根付いていませんでした。でも今は、世代を超えてロックバンドが存在できる時代です。70代目前に第一線で輝くサザンオールスターズのように、僕らも丁寧に歩み続けていきたいですね」

GLAYという船を30年間走らせてきたリーダーの言葉には、その年月が育んだ確かな手応えと、音楽への真摯な情熱が静かに、力強く滲んでいた。

GLAY・TAKURO氏
GLAY・TAKURO氏
GLAY・TAKURO氏

GLAY
北海道出身のロックバンド。TAKURO(Gt.)とTERU(Vo.)を中心に1988年に結成。1989年にHISASHI(Gt.)、1992年にJIRO(Ba.)が加入し現在の体制となり、1994年にメジャーデビュー。30周年を迎える2024〜25年にかけては「GLAY EXPO」というテーマを掲げ、さまざまな活動を展開。2025年4月には30周年記念ベストアルバム『DRIVE 1993〜2009 -GLAY complete BEST』、『DRIVE 2010〜2026 -GLAY complete BEST』を2タイトル同時リリースした。

TEXT=畠山里子

PHOTOGRAPH=HIRO KIMURA(W)

STYLING=Takeshi Sakazaki(StyleLAB.)、Masashi Iimura(StyleLAB.)

HAIR&MAKE-UP=Takayuki Tanizaki(Fats Berry)、Takahiro Hashimoto(SHIMA)

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