都議選2025が告示された。投票日は2025年6月22日。腐敗した都議会、そして地方議会から日本を甦らせる。そう掲げて石丸伸二氏が結党した地域政党「再生の道」は、日本の救世主となるのか。石丸氏と社会学者・西田亮介氏との対話から、その考えを明らかにする。全10回。新書『日本再生の道』より一部を抜粋して紹介する。【その他の記事はこちら】

石丸伸二の約束「自分より下の世代には割を食わせない」
――今の日本って、誰かがメチャメチャ邪悪なやり方で得して、誰かが損しているわけじゃないと思うんです。単純に全員貧しくなっている。この現状をどうするのか。とても難しい話です。石丸さんとしては、何を削る選択肢がありえますか。
石丸 上の人間の未来を削る。逆に、下の世代に未来を残したい。僕はもう日本から十分恩恵を受けたので、少なくとも自分より下の世代には割を食わせたくありません。
西田 「上の人間」と聞くと高齢者をイメージしますけど、石丸さんも「上の世代」に含められているわけですね。石丸さん(1982年生まれ)より下の世代に恩恵を振り分けるという認識で間違いありませんか。
石丸 そうです。自分より下、自分基準で考えています。だって上の世代には、今の社会を作った当事者としての責任があるじゃないですか。だったら、これからはその世代が我慢する道を選ぶべきです。 逆にまだ選挙権すらない学生たちには、最大限財源を仕向けなければならない。これから社会に出ていく子どもたちは、僕らが経験した就職氷河期なんていうレベルとは比にならない大変な境遇に置かれます。
国内マーケットも国内企業もどこも全部弱い。どこに就職すればいいのか。外資系企業に就職するのか、海外に行くのか。就職一つとっても、今までよりメチャクチャハードルが高くなるのです。だとすれば、割を食って負担を受け止めなければいけないのは、僕より上の世代です。 自分の世代が、ちょっとでも多く負担を受け止めたい。負担とツケを、僕より後ろの世代に漏らさない。それが僕の意思決定です。
アントニオ猪木「この道を行けばどうなるものか。危ぶむなかれ」
石丸 ほかの場所で話したことがないエピソードを、最後に1個紹介します。政治団体「再生の道」の名前の由来です。「道」と聞いて、皆さん端的に何か思い出しませんか。「再生の道」を立ち上げるにあたって坂本龍馬を意識したことは、すでに一度しました。司馬遼太郎の『坂の上の雲』にももちろん影響を受けているんですけど、実は「道」というキャッチフレーズの由来はアントニオ猪木なんです。「危ぶむなかれ」というアレです。
――対談の最後に、まさかの猪木をぶっこんできた。
西田 「行けばわかるさ」
1998年4月に引退試合に臨んだアントニオ猪木は、リング上で次の一節を詠んだ。「この道を行けばどうなるものか。危ぶむなかれ。危ぶめば道はなし。踏み出せば、その一足が道となり、その一足が道となる。迷わず行けよ。行けばわかるさ」
石丸 猪木の言葉を思い起こしながら「道って大事だよな」と気づいたんです。もう1個だけ言うと、日本には「╳╳道」がたくさんあるじゃないですか。茶道、武道もそうです。日本人は「道」という感覚が好きなんじゃないでしょうか。
――たしかに、武道はスポーツがただうまくなることを追求するのではなく、その道を究め、深めていく意味合いがあります。「再生の道」も、今回の都議選がどうのこうのというよりも、中長期で政治の道、政党の道を深めていく。
石丸 そうですね。絶えず更新されていきます。
石丸伸二/Shinji Ishimaru
1982年広島県高田郡吉田町(現・安芸高田市)生まれ。京都大学経済学部卒業。三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)行員を経て、2020年8月に安芸高田市長選挙で初当選(2024年6月まで市長)。2024年7月、東京都知事選挙に挑戦。SNSとユーチューブ動画を駆使して「石丸旋風」を巻き起こし、165万8363票を獲得して現職・小池百合子知事に次ぐ第2位に食いこむ。2025年1月、地域政党「再生の道」を旗揚げ。来る東京都議会議員選挙(2025年6月13日告示、6月21日投開票)で、全42選挙区に最大60人の擁立を目指す。
西田亮介/Ryosuke Nishida
1983年京都府京都市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授、東京工業大学(現・東京科学大学)大学マネジメントセンター准教授、同大学リベラルアーツ研究教育院准教授を経て、2024年4月より日本大学危機管理学部教授。東京科学大学リベラルアーツ研究教育院特任教授も務める。