都議選2025が告示された。投票日は2025年6月22日。腐敗した都議会、そして地方議会から日本を甦らせる。そう掲げて石丸伸二氏が結党した地域政党「再生の道」は、日本の救世主となるのか。石丸氏と社会学者・西田亮介氏との対話から、その考えを明らかにする。全10回。新書『日本再生の道』より一部を抜粋して紹介する。【その他の記事はこちら】

ディベート力が欠如した政治家だらけの日本
石丸 先ほど質問された「スターの条件」について、追加で答えます。 自分の中でまだ答えは見つかっていません。「十本刀」にはいろんなバリエーションがありうると思っています。それこそ年齢、男女、キャリア、どれをとってもおもしろい政治家は生まれるんじゃないか。大事なのは、これまでどこかで見たような政治家は要らないということです。 石丸伸二を今特異なものにしているのは、おそらくメディアに対する高圧的な姿勢のせいだと思うんですよ。
―― 自分で言うのがいい。
石丸 メディアに戦いを挑むって、普通はやらないです。だって勝てないから。
――怖いですしね。
石丸 僕自身、メディアに簡単に勝てるとは思ってないです。向こうのほうが圧倒的に強者ですから。でも、強者だからこそ僕は戦いを挑めるんです。弱い者に戦いを挑んだらダサいだけじゃないですか。「自分が負ける」というリスクさえ背負えば挑戦できるのだったら、僕はそこに価値を見出します。単にからみに行っているわけではありません。
西田 機会の窓が開きそうなタイミングだというのもありますよね。
――スターの条件に関連するんですけど、一般のビジネス界や実業界で仕事ができるといっても、僕(幻冬舎編集者・箕輪)や高橋さん(ビジネス動画メディアReHacQプロデューサー)みたいに「モノを作るのはうまいけど実務はまるでできない」とか、人によって「できる」「できない」の差があるじゃないですか。都議の仕事における「仕事ができる」、都議の適性って何なんですか。
石丸 簡単に言うと、議論ができること。ReHacQの番組を観ていると、たまに議論にならないときがあるじゃないですか。誰とは言わないですけど。
―― ちゃんとロジカルに是々非々で話せるかどうか。
石丸 はい。論理的に思考できない人は、僕は「仕事ができない」と評価します。ポリシーはどっちでもいいんです。原発に賛成するか反対するか、両方とも意見があるはずなんです。意見をそれぞれ理路整然と言ってもらわなければ、議論にならないでしょう。
――賛成であろうが反対であろうが、意見をしゃべれるディベート力が必要なんです ね。
石丸 そう。どっち側の意見にも立って議論できる柔軟性があり、足腰がしっかりしている人が必要です。
――政治家の資質としてそこが一番大事なんですか。
石丸 それは間違いない。だって国会議員って国会で議論する仕事じゃないですか。政策立案は官僚がやってくれます。是か非か定めるのが国会の機能であり、民主主義の究極の目的のはずです。なのに政治家にそれができない人間が多すぎるんですよ。
西田 この対談を収録する前日、たまたまフジテレビの記者会見がありました。
中居正広氏の女性トラブルについて、2025年1月27日にフジテレビの経営陣が記者会見。深夜まで 10時間半にわたって続いた。
西田 もしかすると一部の記者だけではなく、政治家も含め、我々の社会全般で、議論について真剣にリテラシーを高めてこなかったところがあるのかもしれないですね。
石丸伸二/Shinji Ishimaru
1982年広島県高田郡吉田町(現・安芸高田市)生まれ。京都大学経済学部卒業。三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)行員を経て、2020年8月に安芸高田市長選挙で初当選(2024年6月まで市長)。2024年7月、東京都知事選挙に挑戦。SNSとユーチューブ動画を駆使して「石丸旋風」を巻き起こし、165万8363票を獲得して現職・小池百合子知事に次ぐ第2位に食いこむ。2025年1月、地域政党「再生の道」を旗揚げ。来る東京都議会議員選挙(2025年6月13日告示、6月21日投開票)で、全42選挙区に最大60人の擁立を目指す。
西田亮介/Ryosuke Nishida
1983年京都府京都市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授、東京工業大学(現・東京科学大学)大学マネジメントセンター准教授、同大学リベラルアーツ研究教育院准教授を経て、2024年4月より日本大学危機管理学部教授。東京科学大学リベラルアーツ研究教育院特任教授も務める。