PERSON

2025.05.26

石丸伸二、古市憲寿氏をガン詰めした理由「イメージが100%悪くなるのはわかっていた」

腐敗した都議会、そして地方議会から日本を甦らせる。そう掲げて、地域政党「再生の道」を結党した石丸伸二氏。「議員の任期は8年」「党としての政策は掲げない」という前代未聞の方針の背後にある戦略とは? 2025年6月13日公示の東京都議選を目前に控えた石丸氏と、社会学者・西田亮介氏との対話から、その考えを明らかにする。全10回。新書『日本再生の道』より一部を抜粋して紹介する。【その他の記事はこちら】

「再生の道」石丸伸二氏

なぜ生中継で古市憲寿をガン詰めしたのか

西田 メディアに出ている石丸さんの写真は、どれも顔が怖いです。怖い顔写真かキリッとした顔写真ばかりが流通していますよね。「ポンコツ」と見出しを立てて記事を書きながら、かなり険しい表情をした顔写真を使うメディアもあります。

石丸 マスメディアはそういう映像や写真ばかりを厳選しています。

―― イメージも含め、石丸さんの得体の知れなさが怖いと感じる人も多いです。

石丸 そう思われていることはわかったうえで、敢えてそうしています。固定化したイメージを抱かれるのを恐れていたら、選挙特番の開票速報のときにスタジオのコメンテ ーターをいきなり詰めたりしませんよ。

西田 たとえば、この収録や過去にご一緒した配信では普通にキャッチボールをやってますよね。

石丸 「必ずこの場面だけが切り抜かれるな」と思ってやっていました。テレビも週刊誌もスポーツ新聞も、必ずこの場面を切り抜いて「石丸は選挙に負けたあとにキレていた」という論調にするだろうなと思っていましたよ。

2024年7月7日に東京都知事選挙を実施。日本テレビの開票速報でスタジオ中継を結んで、社会学者・古市憲寿(ふるいちのりとし)が石丸伸二にインタビューした。「都民はなんとなく蓮舫さんが2位、石丸さんが3位と思っていた。出口調査の結果を見ると石丸さんが2位です。うれしかったですか」と古市が質問すると、石丸は「いえ、特に。勝ち負けなどという候補者目線の小さな話をしていない」と返答。さらに「これはメディアに対する苦言ですよ。そういう煽り方をするから、都民、国民の意識がダダ下がりなんですよ。いい加減にわかってください」とダメ押しし、石丸陣営から大拍手が起きて古市の声が遮(さえぎ)られた。
さらに広島1区から国政に出馬する可能性に言及したことについて、「都知事選はただの踏み台だったのか。売名行為だったのか」と古市が畳みかけると、「論理が飛躍しているし、 下衆(げす)の勘繰(かんぐ)りでしかない。先ほど(国政選挙について記者から)訊かれたので可能性を言及しただけです。(今すぐ出馬する)意思はないとも言っている。文脈は把握していらっしゃいますか」と石丸が逆質問した。

―― 古市さんを詰めた狙いは?

石丸 メディアに釘(くぎ)を刺しておくことが狙いでした。絶対逃げられないタイミングを待ってたんです。都知事選の開票速報には全メディアが集まり、必ず僕にカメラとマイクを向けて映像を撮ります。どれだけ返り血を浴びたとしても、あの場で斬って捨て置かねばならなかった。血だらけの悪魔にしか見えなかったとしても、今斬らなかったら斬るタイミングがなくなってしまう。その覚悟です。

有権者をバカにするワイドショーのコメンテーター

―― 古市さんを斬ることによって、石丸さんは何を得たんですか。

石丸 僕は何も得てないです。「あっ、この調子で選挙と政治を報道したらまずいんだな。怒られた」というトラウマをもってもらう。メディアに反省を促す。

―― あれを見ている視聴者というよりも、メディアに対して「お前ら、適当なことをやってたら痛い目に遭わせるぞ」と思い知らせた。

石丸 そうです。少なくとも日テレは「しまった」と思ったはずです。古市さんには申し訳ないですけど、日テレはもう古市さんを選挙特番には出さないんじゃないですか。 古市さん自身も、次に政治家にインタビューする際はメチャクチャ気をつけられると思います。

―― ワイドショー的な煽りは……。

石丸 もうできないと思いますよ。またやったら、鎮火しかかった火が燃え盛ります。 古市さんの影響力はすごいので、あの方には反省してもらわなければいけなかった。あの瞬間僕が見た古市さんの態度は、「うわっ、これは完全にテレビの人だ」と思ったので、申し訳ないけどバサッと斬りに行きました。

西田 選挙特番って非対称ですしね。有名MCがいて、コメンテーターが手ぐすね引いて待ちかまえて、選挙が終わった直後の疲労困憊(こんぱい)の候補者に対してみんなでワーッと質問する。見方によってはアンフェアです。

石丸 敗者の弁を引き出したくなるわけじゃないですか。「選挙に負けて打ちひしがれている様子が画(え)になる」と思っている皆さん、あんたら狂っているよ。だから僕はあの場で「負けました」とか「皆さんごめんなさい」とは、1回も言わなかったです。そういう画をみんなが撮りたいのはわかっていました。でも自分はそうは思っていないし、そういう声を引き出そうとしても無駄です。イメージは100%悪くなるとわかっていましたが、あの場で古市さんを斬らずにはおれませんでした。

※次回に続く(5/27公開)
【その他の記事はこちら】

石丸伸二/Shinji Ishimaru
1982年広島県高田郡吉田町(現・安芸高田市)生まれ。京都大学経済学部卒業。三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)行員を経て、2020年8月に安芸高田市長選挙で初当選(2024年6月まで市長)。2024年7月、東京都知事選挙に挑戦。SNSとユーチューブ動画を駆使して「石丸旋風」を巻き起こし、165万8363票を獲得して現職・小池百合子知事に次ぐ第2位に食いこむ。2025年1月、地域政党「再生の道」を旗揚げ。来る東京都議会議員選挙(2025年6月13日告示、6月21日投開票)で、全42選挙区に最大60人の擁立を目指す。

西田亮介/Ryosuke Nishida
1983年京都府京都市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授、東京工業大学(現・東京科学大学)大学マネジメントセンター准教授、同大学リベラルアーツ研究教育院准教授を経て、2024年4月より日本大学危機管理学部教授。東京科学大学リベラルアーツ研究教育院特任教授も務める。

COMPOSITION=荒井香織

PHOTOGRAPH=野口博

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年7月号

豪華クルーズ船&列車の旅

ゲーテ7月号表紙

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年7月号

豪華クルーズ船&列車の旅

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ7月号』が2025年5月23日に発売となる。今回の特集は、圧倒的な優越感に浸れる“豪華クルーズ船&列車の旅”。表紙はGLAY。30周年を迎えた男たちが目にした絶景、そしてこれから目の当たりにするであろう幸せな景色とは。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる