都議選2025が告示された。投票日は2025年6月22日。腐敗した都議会、そして地方議会から日本を甦らせる。そう掲げて石丸伸二氏が結党した地域政党「再生の道」は、日本の救世主となるのか。石丸氏と社会学者・西田亮介氏との対話から、その考えを明らかにする。全10回。新書『日本再生の道』より一部を抜粋して紹介する。【その他の記事はこちら】

持続可能な地域を築くために必要な「シビックプライド」
――アンチ石丸さんは、新自由主義的な空気をまとっている人に対する恐怖と批判の気持ちをもっています。「こいつら全部合理性で行きすぎて、弱者を切り捨てるんじゃ ないか。分断を生むんじゃないか」と思われているんです。そこに対して石丸さんのメッセージが届いていないのかもしれません。
石丸 みんな僕が安芸高田市長時代に何をやったか知らないんですよね。安芸高田市を潰さないために、我慢できるものを削っていったんですよ。
――守るべきものは守り、削ったほうがいい部分には合理性を利かせていく。どこを守れば弱者切り捨てにならないんでしょうね。リーダーのマニフェスト的なものがあったほうがいいのか。
石丸 選挙を通して選ばれたリーダーたち、市長や議員のポリシーが大事です。取捨選択するときは、優先順位をつけることが何よりも大事ですよね。何に重きを置くか。
――できるビジネスパーソンが大勢集まったとして、そのうえでポリシーは当然大事ということですか。
石丸 そうです。利益を最大化するのは当たり前のマインドセットですけど、そのうえで「短期的な目線だけでなく、中長期的な目線ももちましょう」と僕は言っているんです。中長期的な目線を忘れたら、目先の利益を追って、目先の損失ばかりをカットしていきかねない。そして「1期4年で終わり。あとは知りません」と放り出しちゃう。それだと良い結果には向かいません。
長い目で見て、子や孫、その先の世代まで見通して今何を選ぶべきか。リーダーだけでなく、市民にもそういう感覚をもってほしい。これが僕が安芸高田市長時代から言ってきた「シビックプライド(civic pride =自分が暮らす地域に対する市民としての誇り)の醸成」です。
今自分が住んでいる町を、どうやって後世に残していくのか。「オラが村」の意識では後世までもちません。そのことを市民の皆さんに伝えつつ、ちょっとずつでも「ここは我慢しよう。その代わり、これは残そう」と取捨選択していく。 もちろん首長も議員も声を張りますけれども、市民一人一人にも自分が住む町の持続可能性について考えていただきたい。柔らかく言うと「ふるさとへの愛情」「郷土愛」「シビックプライド」が市民感覚として必要だと僕は思います。
石丸伸二/Shinji Ishimaru
1982年広島県高田郡吉田町(現・安芸高田市)生まれ。京都大学経済学部卒業。三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)行員を経て、2020年8月に安芸高田市長選挙で初当選(2024年6月まで市長)。2024年7月、東京都知事選挙に挑戦。SNSとユーチューブ動画を駆使して「石丸旋風」を巻き起こし、165万8363票を獲得して現職・小池百合子知事に次ぐ第2位に食いこむ。2025年1月、地域政党「再生の道」を旗揚げ。来る東京都議会議員選挙(2025年6月13日告示、6月21日投開票)で、全42選挙区に最大60人の擁立を目指す。
西田亮介/Ryosuke Nishida
1983年京都府京都市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授、東京工業大学(現・東京科学大学)大学マネジメントセンター准教授、同大学リベラルアーツ研究教育院准教授を経て、2024年4月より日本大学危機管理学部教授。東京科学大学リベラルアーツ研究教育院特任教授も務める。