PERSON

2025.02.10

転職で悩む人は「辞めたいのか?」「逃げたいのか?」を改めて考えよう

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「別の仕事に転職しようか悩んでいます。芸人さんにも、お笑いを辞めるべきかどうか悩んでいる方が多いと思います。桝本さんはどんなアドバイスをしてきたのでしょうか?」という御相談をいただきました。

はい、芸人として売れるNSC生は、全体の数パーセントという厳しい世界なので、たくさんの教え子の相談にのり、「辞めますメール」を受けとってきました。

言わずと知れた転職・副業の時代ですし、みなさんの職場でも「現職か? 転職か?」で悩んでいる人が多いのではないでしょうか?

そこで今回は、これまでの知見をふまえ、僕が「別の仕事に転職しようか悩んでいる人」に届けてきた言葉や思考をシェアしていきたいと思います。

辞めどきのサインは「〇〇がなくなったら」

まず、「転職か現職か」で悩んでいる人が相談にきたら、僕はムリに引き留めません。

芸人界には“続けることも才能の一つ”という言葉があり、芸歴10年をこえてから売れる人もたくさんいるのですが、僕にはその期間の生活保障も、人生を背負える能力もないので、綺麗事だけのポジショントークはしないようにしています。

しかし、必ず確認することがあります。それは“「辞めたい」のか?「逃げたい」のか?”です。

僕の知見だと、離職理由の多くは「人間関係」。芸人さんだと、相方との仲たがい、所属事務所やスタッフとの摩擦、職場恋愛のもつれ、などに端を発していることがあります。

こういった場合、「辞めたい」のではなく、関係が面倒なので「逃げたい」が大きい。その感情のまま突っ走ると“夢へのしこり”が残るので、じっくり経緯を聞き、一緒に最適解を探ります。

僕が転職の背中を押すパターンもあります。それは“辞めどきのサイン”が出ているとき。

そのサインとは“職場で緊張しなくなった人”です。

どんなベテラン芸人でも、本番前、舞台袖、豪華ゲストとの絡みでは緊張するもの。なぜなら、高みを目指し、自分で自分を追い込んでいるから。この“前向きな緊張”をしなくなったら辞めどきです。

これはどんな仕事でも同じ。苦手な上司や同僚に対して湧きあがるのは「緊張感」でなく、ただの「抵抗感」。

前向きな緊張感とは、プレゼン前にドキドキしたり、難しいオファーを受けて体が熱くなったりすること。

もしあなたが、職場で緊張しなくなったら、それは「転職しようか」のシグナルかもしれません。

その二股や不倫願望は、仕事でこそやるべき

僕のところに相談にやってくる芸人の8割は、すでに転職の意思が固まっていて、「決断を肯定してほしい」というパターンが多いのですが、なかには本気で「転職か現職か」で揺れ動いている人もいます。

そんなときに僕が伝えているのは“2/7の習慣”です。

他人の仕事は、他人の恋人が素敵に見えるように「さも良さそう」に見えます。

しかし、求人サイトの謳い文句が「即戦力募集」でも、実際には捨てゴマの営業マンだったり、「ベテラン社員の多い安心な職場」でも、ただ若い人材が定着しない会社だったり、内実は違うこともありますよね?

なので僕は、一週間のうち5日は現職に打ち込み、週末の2日を“今後やってみたい未来の仕事”を試したり、調べたりする、言葉は悪いですが「仕事における二股や不倫」をすすめています。

秋元康さんも、放送作家の仕事をしながら、週末の2日は作詞活動をはじめ、やがてコツや成功をつかむと、徐々に作詞仕事の比率を増やしていったそうです。

僕も、平日はテレビの裏方をしながら、週末にNSC講師、コラムや小説の執筆、コメンテーター業などをしてきて別分野のビジネスが広がりました。

恋愛における二股や浮気は良くないことですが、仕事におけるそれは“適職に出会う一手”にもなり得ます。

「転職か現職か」で揺れ動いている方は、まずは2/7の比率で動いてみると、新しい視座や選択肢が生まれるのでおすすめです。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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