PERSON

2025.01.16

88歳川淵三郎「かかとあげ1日50回、ゴルフ月最低5回。大事なのは強度より持続性」運動を続ける2つのコツ【和田秀樹対談④】

Jリーグの初代チェアマンであり、今もなお多様な“スポーツ改革”に邁進する川淵三郎氏。同じく“高齢者の医療・生き方改革”に励む和田秀樹氏。両者を突き動かすエネルギーの源泉とは。『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。川淵三郎対談4回目。

つま先立ちのすすめ

和田 何か特定の「健康法」みたいなものはありますか?

川淵 ゴルフは続けていますね。「かかと上げ」も、ずっと続けています。

和田 かかと上げ? かかとを上げて、つま先立ちになる?

川淵 そうです。かかとを上げて下げるだけ。これを連続して50回ほどやるんです。僕はこの運動は本当にいいなあと思っていまして。

和田 簡単そうでいいですね。

川淵 そうなんです。顔を洗いながらできるし、台所で料理をしながらでもできます。

和田 いいですね。

川淵 ふくらはぎは第二の心臓と言われますからね。つま先立ちをすれば簡単にふくらはぎを鍛えられます。だから最低限、1日50回はやる。2セットやればもっといい。

和田 かかと上げは脳にもいいという説があります。足からの刺激は脳に結構いくらしい。

川淵 血流もよくなる。

和田 はい。あと、太ももの筋肉ってものすごく大きいんですよ。筋肉は血糖値をコントロールするので、大きな太ももを鍛えると糖尿病などにもなりにくい。

川淵 なるほど。

和田 僕は糖尿病になって、いろいろ試してみたのですが、結局、スクワットと散歩が最も効果がありました。血糖値が下がったんです。今もスクワットは続けてますよ。

川淵 いいですよね。講演会でお年寄りの多いときは、必ずつま先立ちの話をします。いろんな方から「つま先立ちをやってますよ」と言われるようになりましてね。簡単だから、みんな続けられるのだと思います。

運動は続けること。スポーツ選手の意外な弱点

和田 ところで、スポーツ選手は長生きしないなんて言われています。もちろん全員がそういうわけではないんだけど。

川淵 仰る通りでね。

和田 長生きしない理由の一つは、運動を続けないことだと、僕は思っていて。現役時代はハードな練習をしてたのに、引退した後は運動しなくなる人が多いのではないか、と。

川淵 当たっていますね。僕の経験から言うと、例えば引退した後も「体を動かしたほうがいいから」とランニングをするんです。ところが走りながら「こんな歩くような速度で走っても意味ないよな」と思ってしまう。だから速度を上げるんだけど、そうするとやっぱりつらくて続かないんですよ(笑)。

和田 だから次第にやらなくなる(笑)。

川淵 ハードでなければ運動じゃないと思っている(笑)。心拍数を上げ、汗をかくことが習性になっていますからね。

和田 なるほど。

川淵 僕も昔はゴルフでさえ、物足りなく感じていましたから。今は立派なスポーツだと思っていますけど(笑)。

和田 運動って結局、大事なのは強度より持続性なんです。

川淵 ですよね。僕は早い時期にそういう考え方に改めたから、長生きしているのかな(笑)。

ゴルフに行かないと、僕の人生は終わる

和田 ゴルフは今も?

川淵 月に最低でも5回行くと決めて。多いときは月に9回か10回ぐらい。

和田 それはすごいですね。

川淵 以前はカートに乗らなかったので1回のゴルフで1万5000歩くらい歩きました。だけど坐骨神経痛がひどくなって、今はなるべくカートに乗るようにしています。だから1万歩ぐらいですかね。ゴルフのおかげで足腰が鍛えられる。行かないと僕の人生は終わりですよ(笑)。

和田 そんなこともないと思いますけど(笑)。

川淵 コロナのときはずっと家に居て、テレビを見たり本を読んだりしていたでしょ。でね、立つときにね、シュッと立てなかったんです。「あれ、こりゃマズい」と思いましたね。

和田 歩かないと足の筋力はどんどん弱りますから。

川淵 だから女房とふたりで家の近所を歩くことにしたんです。毎日5000歩ぐらい。できるだけ速足で。1年半くらい続けたんだけど「歩くだけってアホみたいだよな」と思ってやめちゃった(笑)。

和田 例のスポーツ選手にありがちな考え方ですね(笑)。

川淵 そもそも散歩っていうのはね、夫婦で手をつないだりしながら、のんびり歩くものだと僕は思っていましてね。木陰で椅子に座ったりして。だけど、僕がやっていたのは速足でガシガシ歩く散歩だから、嫌気がさして続かなくなった。

和田 本来は、ゆるい散歩でも十分なんです(笑)。そのためにも僕は、環境を整備してほしいと思っています。ヨーロッパに行くと、高齢者がベンチで休みながら散歩をしています。100メートル間隔くらいでベンチが置いてあるんです。日本にはそういう配慮がありません。

川淵 本当にそうですね。

和田 高齢者は、ちょっと歩いたら、しんどくなるんです。しんどくなったら休めばいい。そして、休んだらまた歩く。また休んで歩く。それこそ「スポーツ型ド根性運動」じゃなく「ゆるいけど続けられる運動」をするためにも、歩道にベンチを増やしてほしいんですよね。

川淵 それはいいですね。

和田 川淵さん、小池都知事に話してもらえませんか(笑)。

川淵 (笑)。

継続のコツはビジョンとハードワーク

川淵 僕はスポーツジムで週2回、トレーナーをつけて鍛えたことがあります。毎回1時間ほどのハードなやつを。1年半くらいでしたけど。

和田 目的があったんですか?

川淵 ゴルフで飛距離が出るように(笑)。目的がはっきりするとやる気が出てくるんです。

和田 ビジョンとハードワークですね。

川淵 結局はそういうこと。目的があるとできるんです。

和田 散歩も、景色を見ながら季節の移ろいを愉しむとか、花や鳥を愛でるとか。そういう目的があると続けやすいですね。

川淵 いいですね。

和田 他に続けていることは?

川淵 ゴルフに行く朝は必ず準備体操をします。またゴルフの話になっちゃうけど(笑)。

和田 いいと思いますよ。

川淵 股関節とか、いろんな足の部位の動かし方をトレーナーから習ったので、自分のルーティンで20分ぐらいやる。だからゴルフの回数が多いほど、僕はきちんと下半身を鍛えていることになるんです。

※5回目に続く

川淵三郎/Saburo Kawabuchi(左)
日本トップリーグ連携機構 会長。1936年大阪府生まれ。早稲田大学サッカー部を経て1961年より古河電工サッカー部でプレイ。1970年に現役引退。1991年にJリーグ初代チェアマンに就任。2002年に日本サッカー協会会長に就任。現在は相談役。著書に『独裁力』(幻冬舎)ほかがある。

和田秀樹/Hideki Wada(右)
精神科医。1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。立命館大学生命科学部特任教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長。老年医学の現場に携わるとともに、大学受験のオーソリティとしても知られる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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