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2024.02.08

坂本勇人から遊撃の座を奪った巨人・門脇誠。“ストロング門脇”へと成長するまで

大卒1年目のルーキーにして、過去5度のゴールデングラブ賞を獲得している坂本勇人の守備位置を変更させ、2023年に開催されたアジアプロ野球チャンピオンシップで日本代表に選ばれ、韓国との決勝戦で劇的サヨナラ打を放つなど活躍が目立つ注目の新人。巨人・門脇誠がスターとなる前夜に迫った。連載「スターたちの夜明け前」とは

バッターボックスに立つ創価大時代の門脇誠。
創価大学時代の門脇誠。

坂本勇人をコンバートさせた注目ルーキー

いよいよキャンプインした2024年のプロ野球。毎年新人選手たちが高い注目を集めるが、2023年のルーキーで最も強いインパクトを残した選手といえば門脇誠(巨人)になるのではないだろうか。

ドラフト4位での入団ながら開幕一軍を勝ち取ると、5月以降はサードのレギュラーに定着。シーズン終盤には坂本勇人からショートのポジションを奪って見せたのだ。

前半戦は1割台だった打率も夏場以降に急激に上昇し、最終的には.263をマーク。12球団のルーキーでトップとなる83安打も記録した。

安定感はあるものの小柄な印象

そんな門脇は奈良県の出身だが、中学卒業後は東京の創価高校に進学。入学直後には早くもセカンドの定位置をつかんでいる。

筆者が初めてそのプレーを見たのは門脇が高校2年の春、2017年4月5日に行われた高校野球の東京都大会、対帝京八王子戦だった。

この試合で門脇は1番、セカンドで先発出場。第2打席でライト前へのタイムリーヒットを放ち、盗塁も成功。守備でも2回には続けてゴロを処理するなど4度の守備機会で軽快な動きを見せた。試合も門脇の活躍もあって創価が9対2で7回コールド勝ちを果たしている。

当時のノートを見ると「いかにも1番、セカンドというタイプの選手。小柄だが攻守ともにスピード感があり、構えは小さいがミート力も高い。捕球はバウンドが上手く合わなくても落ち着きがあり、送球も安定している」というメモが残っている。

ただこの時のプロフィールを見ると170cm、67kgと、明らかに小柄だったことは確かである。ちなみにこの日の次の試合では東海大菅生の田中幹也(現・中日)が同じく2年生ながら2番、ショートで出場しており、プレーのスピードやグラブさばきでは田中のほうが目立っていたことを覚えている。

この年の夏、東海大菅生は甲子園で準決勝まで進出しており、全国に名前が売れたのも田中のほうが先だった。

続く高校3年春の東京都大会でも日大鶴ヶ丘との試合を現地で見ている。

相手エースの勝又温史(現・DeNA)は150キロ近いスピードを誇る本格派として注目を集めており、その勝又からもライト前ヒットを放っていた。投手としてもリリーフで1回を無失点と好投を見せたが、この時もまだまだ体は小さく、高校からプロに進むような選手という印象は持たなかった。

さらに創価大学進学後の1年時も春のリーグ戦での対杏林大戦、大学選手権での対大阪工業大戦、秋のリーグ戦での対東京国際大戦と3度試合を見る機会があり、いずれも門脇はセカンドで出場しているが、高校時代と大きく印象は変わらなかった。

“ストロング門脇”へと成長

そんな門脇をドラフト候補として改めて注目するようになったのが、2年秋のリーグ戦後に行われた関東地区大学選手権でのことだった。

この大会で門脇は6番、ショートで出場。初戦の対国際武道大戦こそノーヒットに終わったものの、準決勝の対上武大戦と決勝の対桐蔭横浜大戦では2試合連続でライトスタンドへ叩き込むホームランを放って見せたのだ。

ちなみに上武大戦でホームランを放った相手は後にプロ入りすることになる吉野光樹(現・DeNA)だった。上武大戦を記録したノートには以下のようなメモが残っている。

「昨年までとは体つきが見違えるほどたくましくなり、それに比例するように打撃の力強さも増した。右足を上げてタイミングをとるが、下半身に粘りがありしっかりボールを呼び込める。追い込まれても変化球にしっかり対応し、当てるようなスイングにならず、強く振り切ってライトスタンドへ運ぶ。

(中略)ショートの守備もいきなり少し軽率なエラーがあったが、その後しっかり持ち直して、打球は丁寧に対応。守備に関しても動きが力強くなり、送球の速さも申し分ない。上背のなさが気にならず、この日のようなバッティングを続けられれば面白い」

その後、3年春はチーム内の新型コロナウイルス感染拡大の影響で門脇自身も創価大も不本意な成績に終わったが、3年秋からの3シーズンの打率は.422、.361、.477と見事な数字を残し、4年時には押しも押されもせぬドラフト候補となっていた。

また入団時にも話題となったが、高校1年から大学4年まですべての公式戦でフルイニング出場し、原辰徳監督からも“ストロング門脇”という異名で呼ばれるなど心身ともにタフなのも大きな魅力である。

真価が問われるプロ2年目

2023年はシーズン終了後に行われたアジアプロ野球チャンピオンシップでも決勝戦でサヨナラタイムリーを放つなど大活躍を見せ、大会MVPにも選ばれており、その知名度は一気に全国区となっている。

2年目の今シーズンは相手からのマークも厳しくなると思われるが、持ち味である“ストロング”を前面に出してさらなる飛躍を遂げてくれることを期待したい。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

■連載「スターたちの夜明け前」とは
どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

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スターたちの夜明け前

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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