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2024.01.13

作家・麻布競馬場の人生を変えた本、野地秩嘉『キャンティ物語』

数多ある音楽、本、映画、漫画。選ぶのが難しいからこそ、カルチャーの目利きに最上級の1作品を厳選して語ってもらった。今回紹介するのは、作家の麻布競馬場。【特集 最上級主義2024】

野地秩嘉『キャンティ物語』

「登場人物の『キャンティ』への愛、著者や編集者の本への愛を感じる」

「飯倉にあるイタリアン『キャンティ』を知ったのは僕が麻布十番で暮らし始めた2014年。20代の僕には敷居が高く、入る勇気が持てないレストランでした。六本木駅の上にあったあおい書店で『キャンティ物語』を手に入れてくり返し読み、想像を膨らませていました。

最初はキャンティならではの文化に憧れ、子供の心を持った大人たちと大人の心を持った子供たちの店に集う人たちがうらやましかった。ここで多くの人が粋な振る舞いや遊び方を身につけていったんだな、と。

物語性も強く感じました。実話と思えないほどにドラマチック。お店の華やかな時代と、創業オーナーの川添浩史・梶子さんの切ない最期。読み物としても傑出していますよね。

登場人物や本のつくり手の愛情の深さも感じました。川添ご夫妻、かまやつひろしさん、加賀まりこさんなど登場人物の誰もがキャンティを愛しています。加えて、著者の野地秩嘉さんや編集の方々にもお店と本への愛情を感じました。僕自身、これだけの熱量持って臨むテーマを見つけなければと思いましたね。

僕がやっとキャンティを訪れたのはコロナ禍、2021年の時。本にもある『スパゲティ・バジリコ』も、温かいサービスも全部素晴らしかった。近いテーブルには40代くらいの経営者3人が威張らず、自慢せず、マウントを取り合わず、楽しそうに食事をしていた。お店と客、客同士のリスペクトも感じました」

野地秩嘉『キャンティ物語』の表紙
野地秩嘉『キャンティ物語』
東京、飯倉にあるイタリアン「キャンティ」は1960年の開店以来、数多くの才能たちに愛されてきた。三島由紀夫、黒澤明、小澤征爾、篠山紀信、加賀まりこ、村上龍、坂本龍一、松任谷由実……。今も実在するこの店の文化と、オーナーであり稀有な国際人だった川添浩史・梶子夫妻の生涯を描くノンフィクション。
作家・麻布競馬場氏
麻布競馬場/Azabu Keibajyo
作家
1991年生まれ。著書『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』がヒット作。別冊文藝春秋で連載した長編小説が2024年2月に書籍化予定。

【特集 最上級主義2024】

この記事はGOETHE 2024年2月号「総力特集:最上級主義 2024」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら ▶︎▶︎特集のみ購入(¥499)はこちら

TEXT=神舘和典

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