ゲーテ読者に薦めたいとっておきの1冊をピックアップ! 今回は、山本真郷、渡邉寧の『世界の広告クリエイティブを読み解く』をご紹介。
世界の事例を通じて、各国の価値観の違いを浮き彫りにする
学生時代に米国留学をしていた時、スロベニア人の友人から私のドライな人付き合いの仕方に苦言を呈されたことがある。国ごとに人間関係の価値観が異なるのだな、と感じた記憶が本書を読んで蘇ってきた。
ある国では好評な広告が、別の国では嫌がられるのはなぜなのか。海外のマーケティングに長年従事しているふたりの実務家が、海外のクリエイティヴ事例を通して分析する。
「バスケット・デーティング」という言葉をご存知だろうか。これは営業中のスーパーマーケットを、男女のリアルな出会いの場にするというプロモーションだ。コロナ禍にドイツの大手スーパー「Edeka」が展開したのは、来店した独身者が番号バッジをつけて買い物をし、気になる相手の番号をお店に伝えると、出会いの仲介をしてくれるというもの。
日本人の感覚だと違和感があるかもしれないが、欧州では個人主義的な価値観が強く、ロックダウン中であれ、新しい出会いを求めるのは当然だと考えられるのだ。
異なる価値観を持つのは、海外での話だけではない。相手は異なる考え方を持っているということをコミュニケーションの前提にしながら、相互理解を深めていくことが必要だろう。
Seitaro Yamazaki
1982年神奈川県生まれ。セイタロウデザイン代表。「社会はデザインで変えられる」という信念のもと、デザインブランディングを中心に多様なチャネルのアートディレクションを手がける。