今回は両手の使い過ぎを抑える逆クローグリップを紹介する。

プロ界隈で増えるクローグリップ
パッティングにはさまざまな打ち方があり、ツアープロでも日々試行錯誤を繰り返している。アマチュアゴルファーのなかにも、プロを参考にしてパターの打ち方や握り方を試している人は多いだろう。
最近のプロゴルフツアーでは、パッティンググリップにクローグリップを採用する選手が増えてきた印象がある。クローグリップは、右手の親指・人差し指・中指の3本でパターをつまむように握る方法で、その名前は「かぎ爪(claw)」のような指の形状に由来している。
指の添え方には個人差があるが、主な目的は右手に余計な力が入らないよう動きを抑え、スムーズなストロークを実現することだ。この握り方は、フォロースルーでの自然なフェースローテーションを促し、安定した振り抜きを助ける効果があるとされている。
そもそもパターは、手先だけで操作するのではなく、体全体の動きに連動したストロークをするのが理想とされる。そのため手や腕は、体の動きに調和しながら動くことが求められ、余計な力を抜いて体の動きと一体化する感覚が重要だ。クローグリップは、こうした体と手の動きの連携をスムーズにし、効率的なストロークを実現する握り方と言えるだろう。
クロスハンドとクローグリップの組み合わせ
最近は、手や腕の動きを適切に制御しやすくする「逆クローグリップ」を採用する選手が増えている。この握り方は米シニアツアー、PGAツアーチャンピオンズで活躍するミゲル・アンヘル・ヒメネス(スペイン)が採用していたことで知られている。現在はクロスハンドグリップに移行しているが、右手の使い過ぎを抑えるために長くこのスタイルだった。61歳のヒメネスは2025年シーズン、PGAツアーチャンピオンズで4勝を挙げ、賞金ランキング1位と圧倒的な成績を残している。
同じくPGAツアーチャンピオンズで活躍するアンヘル・カブレラ(アルゼンチン)も、逆クローグリップを取り入れているプロの一人だ。
メジャー2勝(2007年全米オープン、2009年マスターズ)を挙げた実力者だが、かつて元交際相手などへの暴力により実刑判決を受け、約2年半の服役を経てツアーに復帰した。その後は競技に真摯に向き合い、2025年シーズンはシニアメジャー2勝を含む3勝を挙げるなど好調。特に、逆クローグリップによってパッティングが安定し、復活の大きな要因となっている。
両者とも、年齢を重ねながらもパッティンググリップを工夫し、ストロークの安定性を高めて今シーズンは好成績を収めている。逆クローグリップは、手を使いすぎるクセがあるプレーヤーにとって非常に有効な選択肢であり、こうしたトップ選手の実践がその有効性を裏付けている。
逆クローグリップとは、まず左手をクローグリップの形で握り、さらにクロスハンドグリップ(左右の手を入れ替えた握り方)を組み合わせたパッティングスタイルだ。つまり、両手ともに手先で操作しにくい形にすることで、手や腕でパターを動かすクセを抑え、体の動きに連動したストロークを引き出すことを目的としている。
この握り方では、左手の甲が体の正面、つまり自分の胸と同じ方向を向く形になる。目標方向に無理に手の甲を向けると、違和感や動きにくさを感じる人もいる。そういう場合は、自然な手の向きを保ったままストロークできることが、フォロースルーをスムーズに出すための大きな助けとなる。
逆クローグリップでパッティングを行う際のポイントは、親指・人差し指・中指の3本で力まず軽くグリップを挟み込むように握ること。強く握るのではなく、添えるように持つのが理想だ。
逆クローグリップの場合、左手の甲はボールが進む方向、つまり飛球線と平行にまっすぐ動かすイメージを持つことが重要。飛球線とは、ボールが実際に転がっていく目標のラインのことで、このラインに沿って左手の甲を動かすことで、安定したストロークが生まれやすくなる。
親指・人差し指・中指の3本の指や手の甲が、ストローク軌道をガイドする感覚を持つと、スムーズに動かすことが可能だ。
逆クローグリップは両手の動きを大きく制約するため、右手に頼りすぎてしまう人や、インパクトで“打って終わり”になってしまうタイプには特に効果的。クローグリップやクロスハンドを試しても違和感があったという人は、一度「逆クローグリップ」にチャレンジしてみると、新たな発見があるかもしれない。
逆クローグリップの動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。