CoEvo 最高経営責任者・ジェフ・ハヤシダと、サントリー 取締役常務執行役員 ビールカンパニー 社長・西田英一郎。お互い子供の頃のように語れる、気の置けない関係だという経営者ふたりのエピソードを紹介。【連載 相師相愛】
気の置けない男6人のLINEグループ
ハヤシダ サントリーの工場に行くと、必ず水を大事にしているという話から始まるよね。
西田 初めてお会いしたのは、奥大山の「天然水工場」でした。
ハヤシダ 縁起のいい顔をしている人がいるなと思って(笑)。
西田 私がびっくりしたのは、涙ぐんでおられたことです。しかも黒板のシフト表や作業の段取り表をご覧になっていて。
ハヤシダ そういうところにこそ、会社の本質が出るんです。この会社はみんな本気だった。
西田 見られるところと感じられるところが違う。アマゾンのオペレーションが圧倒していた理由が瞬時にわかりました。
ハヤシダ 僕は機械の下も覗いたりする。どれだけ真剣に安全を考えているかわかるから。これがまた見事にきれいだった。
西田 帰りのクルマで、1時間、マシンガントークしました。楽しかった。別れ際に、次にいつ会うか決めて。いつしかお互い夫婦で会うようになって。
ハヤシダ 子供の頃、網を持って友達と虫を取りにいったよね。そんな関係って、大人になったらもうつくれないと思っていた。でも、そうじゃなかった。
西田 私にとっては、いつの間にか、アニキみたいな存在でした。怖そうなんだけど(笑)。
ハヤシダ その言葉はちょっと語弊があるな(笑)。
西田 アニキに紹介したい、と思った経営者仲間を食事会に連れていったら、いつしかいい感じに6人のグループになって。
ハヤシダ 自分の弱さをさらけだせるいい仲間たちだよね。
西田 オッサン6人で朝からLINEグループでピコピコとメッセージのやりとりをしてるなんて、ないんじゃないですか。
ハヤシダ 返信が来ないと心配したりしてね。6人のグループでドヤ顔で出張報告したり(笑)。承認してもらいたいんではなくて、共感してほしくて。
西田 ほんと、なかなかないコミュニティだと思います。
ハヤシダ 本当のリスペクトをみんなわかってるんだと思う。相手の言うことを、ちゃんと自然に受け止めて消化できる。どんな場合でも、どこでも。だから飲食店でも、みんなすぐにお店の人と仲良しになっちゃう。
西田 みんなそれなりに有名人ですから、お店の人はいつもびっくりしてますけどね。
ハヤシダ このまま変わらず、行きたいね。
西田 私はアニキにこのまま面倒見てもらおうと思っています。アニキがヨボヨボになったら、僕が面倒見ます。
ハヤシダ 僕が西田さんをすごいと思うのは、新卒からひとつの会社にずっといること。僕には無理。
西田 そういえばグループのメンバーは、当時私以外は全員社長で、当初、社長会と呼ばれていましたよね。オレだけ社長ちゃうわい、と思ってました(笑)。
ハヤシダ だからサントリービールで社長になったときは、みんなで喜んだ。お祝い会をしたね。
西田 ありがとうございました。アニキのすごいところは、持っているものの幅の広さだと思っているんです。ものすごく豪快だけど、ものすごく繊細。ロジカルだけど人情派。ブルドーザーに乗って、カミソリの刃を持っている、みたいな。ビジネスマンとしては、アメリカ人よりアメリカ人っぽいんだけど、人間としては、日本人よりも日本人っぽい。このギャップが心地いいんです。
ハヤシダ アメリカ人の父と日本人の母を持つ日系4世で日本に生まれ、アメリカで育ったから。国籍はアメリカだけど、心のふるさとは日本。僕はどちらも愛してる。
西田 そういえば、以前お送りした「ビアボール」、炭酸で割らずに飲んだでしょ。
ハヤシダ うん。僕の口には合わなかった。
西田 炭酸で割るかロックで飲むことをオススメしてますから。ちゃんと説明書が入ってたでしょ。
ハヤシダ そんなの読まないよ。
西田 いやいやアニキ、ちゃんと説明書は読んでください(笑)。
■連載「相師相愛」とは……
師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ、相“師”相愛ともいえるふたりの姿を紹介する。