新刊著書『夢と金』を上梓した西野亮廣。今回は動画企画2Faceの番外編として、今西野が魅了されているドバイの魅力とこれからの夢を、長年公私に渡り接してきたゲーテ統括編集長・舘野晴彦が尋ねた。動画連載「2Face」とは……
ハリボテ感のなかに、人間のエネルギーを感じる
2023年3月、アラブ首長国連邦大学より依頼を受けて、西野は映画制作についての講演を行った。そこで大きな刺激を受けたと言う。
「僕もドバイの映画のつくり方を全然知らなかったんですけれども、あちらでは絵本原作が映画になるっていうことが全然ないそうで、どういう段取り手順を踏んで映画になったのかということを話してほしいと。地元の小学生、大学生、経営者の方を相手にお話ししました。
ドバイってすごく面白い街ですね。街そのものに歴史はまだあまりないし、ラスベガスと同様、『そこに街作って大丈夫?』ってところに半ば強引に成立させているじゃないですか。悪く言えばハリボテ感なんですけど、そこに人間のエネルギーみたいなものを感じるんです。もしかして日本が忘れているものが今ドバイにあるかもしれない」
世界1高いビル、世界最大の噴水、世界1大きい観覧車……世界1を次々達成するそのエネルギーを身体いっぱいに浴びて、思ったことがある。
「このエネルギーはやっぱり富裕層をちゃんととりこんでいるから。例えば日本だと、沖縄の美ら海(ちゅらうみ)水族館とか、大阪の海遊館とかにあるような巨大な水槽が、普通にモールにあって、誰でも無料で見られるんです。何かとんでもない噴水ショーが無料で見れちゃうし、お金を持っていない人も楽しめる。
それは富裕層がちゃんとお金を別で落としているから。別にお金持ちしかいないとか、物価が高いとか、実はそんなことないんです。宿なんか探せば日本よりも全然安いし、水だって日本円にして30円40円ぐらいのものもある。富裕層から、取れるところからちゃんと取るって本当に大事ですよ。そういうところからエネルギーが生まれるんだなって思いますね」
日本の空港は不気味なくらい静か
モノが売れない、金がない。誰もが今、常にその時代の雰囲気を実感している。そしてやがてその焦燥感さえも感じなくなってしまうのではないかと、西野は焦りを感じている。
「ドバイから帰ってきたら、日本の空港は不気味なくらい静かでした。僕は、兵庫県の田舎の町出身の人間ですから、東京へ出てきた時に何て賑やかなんだって思ってたんですけど、おそらくそこからどんどん静かになっていっている。
僕たちはあんまり気づいてないですけど。だからそういう元気な街に、定期的に行った方がいいなと思いました。その街のエネルギーというものは明らかにあるし、そこに引っ張られるっていうことも大事だなと。そうしないと老いていってしまうような気がします」
世界1を次々生み出す街でエネルギーを得た今、改めて、これからの夢を聞くと。
「エンタメで世界1!!」
実はこれは、西野が数十年言い続けていた言葉だ。当初は笑う人もいた。けれどそこから月日が経ち、ブロードウェイでミュージカルを上演、アメリカにも拠点を作った。確実にその夢に近づいている。不敵に微笑むその笑顔の裏に、その夢への次の一手が隠されている。
Akihiro Nishino
1980年兵庫県生まれ。芸人・絵本作家。1999年「キングコング」結成。著書に、絵本『Dr.インクの星空キネマ』『えんとつ町のプペル』、ビジネス書『革命のファンファーレ-現代のお金と広告』などがある。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員196万人、興行収入27億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞。ブロードウェイミュージカルや歌舞伎にもなっている。
Haruhiko Tateno
1961年東京都生まれ。1993年、創立メンバーの一人として幻冬舎を立ち上げて以来、各界の表現者たちの多彩な作品を世に出し続ける。2006年に初代編集長として『GOETHE』を創刊。2007年、西野さんの原画を見て、即書籍化を熱望。2009年に絵本『Dr.インクの星空キネマ』の発刊にいたる。毎年、年末には西野さんと共に恒例のバンド活動も。
■動画連載「2Face」とは……
各界の最高峰で戦う仕事人たち。愛する仕事に熱狂する姿、普段聞けないプライベートな一面。そんなONとOFFふたつの顔を探ると見えてくる、真の豊かな人生に迫る。