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2023.04.19

【西野亮廣】『夢と金』人生を金で諦めないためにすべきこと

芸人としての枠を超え、絵本、映画、ミュージカル、イベント制作などさまざまな活動を続ける西野亮廣。2023年4月、自身の経験をもとに金とどう向き合い生きるべきかを書いた著書『夢と金』が完成した。長年公私に渡り接してきたゲーテ統括編集長・舘野晴彦が、その執筆の背景に迫る。動画連載「2Face」とは……

お金の問題をほったからかしにしてはいけない

この日、西野は製本前の新刊『夢と金』に挟み込むサインを2000枚ひたすら書いていた。発売はわずか3週間後、すでに1万7500部もの予約も確定している。そんな急ピッチで進むサイン書きの作業中に、舘野が話を聞いた。

「いやぁ、そうなんです。Amazonの予約を開始した時、実はまだ1文字も書いてなかったんです。出版社からしたら怖かったでしょうね(笑)」

この世界を生き延びて、夢を叶えるには金がいる。人生を金で諦めないために、どうするべきなのか。西野は本書で、NFTやクラウドファンディングなどといった具体例も取り上げながら、わかりやすく解説する。

「ビジネスマンの方だけに向けたわけではなく、子供を持つお父さん、お母さん、そしてその息子さん、娘さんの顔が浮かんでいたんです。お金を語るってネガティブな捉え方をされていましたし、大人はお金について子供に教えてこなかった。

今回だってお金のことをこうやって大々的に書くと、誰かには怒られるんだろうなと思います。でもお金の問題をほったからかしにし続けてはいけない。だって自分がなにかエンタメを仕掛ける時って、必ず予算がかかって、その予算がないから諦めないといけないことっていっぱいある。夢とお金の問題は絶対セットだから」

本書は第1章で「富裕層の生態」を分析するところからスタートする。

「サービス提供者は富裕層を押さえなきゃいけないし、利用者側は富裕層の生態系を理解しないといけない。そういうことがわかっていないとどんどん世の中が息苦しくなるなと。最近もミュージカル『ムーラン・ルージュ』のS席が1万7,000円で、A席が1万4,500円で、高いって炎上していたんです。

でもあれだって、5万とか10万円のVIP席をつくってしまえば、B席3,000円とかで行けただろうなって思うんです。でもそこに対する理解が全くないから、結局ミュージカルって、お金を払える人しか見に来れてないんです」

舘野とともに長年西野を担当してきた、編集の袖山満一子。次々にサイン用紙を渡し、西野が猛スピードでサインをする。息もぴったり。

その状態が続けばどうなるのか。西野はさらに続ける。

「お金を払える人は、だいたい年配の方ですよね。サービス側がそこだけをターゲットにするので、業界ごと老いて行ってるんです。最近衝撃的だったのが、シルク・ドゥ・ソレイユが昼公演だけで、夜公演はやってないということ。若者がお金を持っていないから、切り捨てられているんですね。

でもお金を持っていない人にも見せる術はあるはずで、そこはサービス提供者がわかっておかないと自分のお客さんがどんどん老いていって、そのサービスが終わるのも時間の問題になってきています」

2000枚ものサインのなかには、Nが逆さになってしまったレアモノも。

西野自身、ミュージカル「えんとつ町のプペル」の公演をYouTubeで完全無料公開したことがある。これは、高価なVIP席を販売し、そこで予算を回収することができたから、叶ったことなのだ。

「富裕層のように、ちゃんとお金を出してくれる人のことを毛嫌いしたらいけない。理解しないといけない、そういうことをいきなり第1章から言ってるんですよね」

足を使った方がコスパがいい

発売前にすでに1万7500部が予約で売れている本書。実は、まとめて数十冊購入した人のもとに、西野が直接届けに行ったり、一緒にBBQを楽しむことができるという特典が好評なのだ。この自らの足をつかったある意味泥臭い売り方も、西野自らが考案した。

「寄贈者が購入して、読む人たち、利用者にあげるっていうことが、本のビジネスでもあっていいなと思ったんです。ランドセルがそうでしょう。おじいちゃんおばあちゃんが買って、子供たちが利用する。50冊買ってくれた人はきっと誰かにあげるでしょう。で、買ってくれた人のところには僕が自分で届けに行く。

足を使わないと"写真映え"しないんですよ。スマホで注文して50冊届いても写真撮ろうとは思わないけど、ピンポンって西野が持ってきたら、絶対撮るじゃないですか。その写真がインスタに上がって『西野来てるじゃん』って広がっていく。

足を使った方がコスパが良いんです。玄関で家族と西野が写真撮れたら、そこでもう50冊分の料金はその人にとっては完了で、あとはたぶん、プレゼントしてくれるんじゃないかなと思うんです」

自らのエンタメを届けるため腐心してきた西野は、そのために金というしがらみと常に戦ってきた。そこで得た経験を包み隠さず語り、そして自らの足を使って届け続ける。「金のために人生を諦めるな」、そのメッセージをひとりでも多くの子供たちに伝えるために。

『夢と金』
¥1,650 幻冬舎
演劇などでチケット代が高額な席があるのはなぜか、などさまざまな身近なトピックスで、金の仕組みとカラクリをとく。『革命のファンファーレ』『新世界』に続く、生き方の指南書。

Akihiro Nishino
1980年兵庫県生まれ。芸人・絵本作家。1999年「キングコング」結成。著書に、絵本『Dr.インクの星空キネマ』『えんとつ町のプペル』、ビジネス書『革命のファンファーレ-現代のお金と広告』などがある。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員196万人、興行収入27億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞。ブロードウェイミュージカルや歌舞伎にもなっている。

Haruhiko Tateno
1961年東京都生まれ。1993年、創立メンバーの一人として幻冬舎を立ち上げて以来、各界の表現者たちの多彩な作品を世に出し続ける。2006年に初代編集長として『GOETHE』を創刊。2007年、西野さんの原画を見て、即書籍化を熱望。2009年に絵本『Dr.インクの星空キネマ』の発刊にいたる。毎年、年末には西野さんと共に恒例のバンド活動も。

■動画連載「2Face」とは……
各界の最高峰で戦う仕事人たち。愛する仕事に熱狂する姿、普段聞けないプライベートな一面。そんなONとOFFふたつの顔を探ると見えてくる、真の豊かな人生に迫る。

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TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=イシヅカマコト

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