仕事、学校、人間関係でも「目立つ仕事しかしない」「面倒なことは避ける」「トラブルが起きたら逃げる」といった人がいる。なぜ、彼らはこうして周りを不快にさせるのか? 著書が累計47万部のベストセラーとなっている脳科学者・西剛志が考察する。

あなたの周りの「おいしいところ」だけ持っていく人たち
イベントの本番だけ「自分がやる」とマイクを握る、パスをまわさず自分でゴールする、商談だけ参加して自分の手柄にする、バーベキューで最後の盛り付けをして「自分で作った感」をアピールする――世の中には、こうした「おいしいところだけ持っていく人」と出会うことがあります。
人目につく場面ではいつも前に出てくる。なのに、トラブルの後始末になると、なぜか姿が見えない。実はこうした行動の裏では、ある性格と関係していることがわかってきました。
周りに迷惑をかける「マキャベリズム」という性格
性格研究では、目的のためには手段を選ばず、自分の利益しか考えない悪い性格のことを「マキャベリズム」(正確にはマキャベリアニズム)と呼びます(*1)。
悪の性格として有名なナルシシズム(自己愛傾向)、サイコパシーと並ぶ「悪い性格」の一つです。
2007年の米国・オクラホマ大学が行った606名の従業員(上司や部下を含む)を対象としたリサーチでは、マキャベリズムと「評価の対象にならない自発的な協力行動」(同僚を助ける、ルールにないことまで守るなど)の関係を調べました(*2)。
その結果、マキャベリズムが強い人ほど、評価の対象とならない協力行動が少ないことがわかったのです。
さらに、彼らは“協力そのもの”をしない訳ではないこともわかってきました。相手の記憶に残らない行動はしませんが、「印象操作」のためにみんなに注目される協力は積極的にする傾向があったのです(*2)。
これは、マキャベリズムを持つ人(マキャベリスト)は、地道な作業よりも、自分の評価につながる作業に熱心なことを示唆しています。
以前、私の知り合いから聞いた話ですが、ある大学の学生が、学園祭の屋台企画など就活ポイント狙いでいいところだけはやりますが、普段の授業やゼミでは周りに協力せず困っているという人がいました。
マキャベリストはチーム全体のためではなく、結局自分の利益のためだけに作業をしようとする傾向があるのです。
「いいとこどり」は職場全体にも影響する
実際に、こうした「いいとこどり」の人は、学生など若い世代にもいますが、組織に入ると、最終的に会社に害を及ぼすこともわかってきています。
2012年に米国・ロングウッド大学が約4万4千人分のデータを調べたメタ分析では、マキャベリストは職場での仕事の質が低く、サボりや迷惑行為といった「非生産的職務行動」が多いことが確認されています(*3)。
いいところで目立つ仕事をしても、それ以外でサボっているとしたら、これは会社全体にも悪影響になってしまうでしょう。
また、2000年に香港中文大学が行った293名のリサーチでは、「評価の対象とならない自発的な協力行動」が昇進に大切だと考える人が昇進すると、自発的な協力行動が減ってしまったそうです(*4)。
つまり、最初は親切でいい人に見えても、会社で上の立場になればなるほど、人を助けず、自分の評価に関わることばかりに奔走する人になる――そんな可能性を示しているのです。
会社の面接で目立つ成果ばかり披露する人は魅力的に見えますが、苦労せずに成果を得た可能性もあるため、採用する側ももっと総合的に学生を見ることが必要かもしれません。
実際に海外のリサーチでも、その人が過去にどのように大変なことを乗り越えてきたかなどのプロセスを聞くほうが、就職後のパフォーマンスをより正確に予測できたというデータもあります(*5)。
周りに害を与えない人を見分ける4つのポイント
そういった意味で、会社やプライベートで付き合う人を見るときに、下記の4つをチェックすることが必要です。
- 人目のない場面でも、誰の手柄にもならない作業をしているか
- 評価や昇進の前後で、態度が変わらないか
- 協力する相手が、「得になる人」に偏っていないか
- 成果ばかりでなく、苦労して乗り越えた部分を表現できるか
もちろん、一つ該当するだけで決めつけるのはよくありません。あくまでも確率論ですので、2つ、3つあるほど見極める精度は上がっていきます。
こうした「いいとこどり」する人は、長期的に私たちを“手段”にして搾取する傾向があるため、あまり近づかないほうが得策です。
ただ一方で、マキャベリストは環境への適応力が高いため、思いがけない力を発揮することもあります。2015年のアムステルダム大学などの研究では、マキャベリストはビジョンを示し、部下一人ひとりに目を配る「変革型」の上司のもとでは、職場をよりよくするための提案など、現状を変えようとする自発的な行動が増えることも示されています(*6)。
世の中にはいろいろな人がいます。いい人もいますし、悪気がなくても周りに迷惑をかける人もいます。
しかし、人にはそれぞれどこか得意な部分があります。得意な部分は利用しつつ、社会の利益を最大化できるように共存できれば、世の中はもっといい場所になっていくかもしれません。

脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて4万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』、『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』など海外を含めて累計47万部突破。最新刊は『脳科学×最新研究が解き明かす64のテクニック 「伝える」が「伝わる」に変わるひみつ』。
(*1) Khan, F.M., Khan, A., Ahmed, S.S., Naz, A., Salim, M., Zaheer, A. and Rashid, U. (2025), The Machiavellian, Narcissistic, and Psychopathic Consumers: A Systematic Review of Dark Triad. Int J Consum Stud, 49: e70018
(*2) Becker, J. A. H., & O'Hair, H. D. (2007). Machiavellians' motives in organizational citizenship behavior. Journal of Applied Communication Research, 35(3), 246–267
(*3) O'Boyle EH, Forsyth DR, Banks GC, McDaniel MA. A meta-analysis of the Dark Triad and work behavior: a social exchange perspective. J Appl Psychol. 2012 May;97(3):557-79
(*4) Hui, C., Lam, S. S. K., & Law, K. K. S. (2000). Instrumental values of organizational citizenship behavior for promotion: A field quasi-experiment. Journal of Applied Psychology, 85(5), 822–828
(*5) Taylor, P. J., & Small, B. (2002). Asking applicants what they would do versus what they did do: A meta-analytic comparison of situational and past behaviour employment interview questions. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 75(3), 277–294)
(*6) Belschak, F. D., Den Hartog, D. N., & Kalshoven, K. (2015). Leading Machiavellians: How to translate Machiavellians’ selfishness into pro-organizational behavior. Journal of Management, 41(7), 1934–1956

