ゲーテ読者に薦めたいとっておきの1冊をピックアップ! 今回は、藤田晋の『勝負眼「押し引き」を見極める思考と技術 』をご紹介。

藤田晋 著 文藝春秋 ¥1,870
ビジネスにおける勝負事の押し引き・駆け引きのコツ
穏かな眼の方だな。最初に藤田晋氏と企画会議をした時にそう感じた。深く傾聴し、美点を褒め、心地よく相手に語らせるが、おいそれと採用はしない。その柔和な眼差しの奥に宿るのは、常に日本のエンタメ界をひっくり返すような「勝負眼」だった。
サーバーがダウンするほど話題になった「亀田興毅に勝ったら1000万円」、元SMAPの3人を起用した「72時間ホンネテレビ」、歴史的な全試合無料中継「サッカーW杯」など、その眼が見極め、生みだした社会現象となったコンテンツは十指に余る。私はその多くに携わりながら、なぜ藤田氏は、大きな決断、大きな仕事ができるのだろう? と羨望してきた。
本書には、喉から手が出るほど知りたかった答えが詰まっていた。自身の頭のなかにある思考と仕事術を言語化し、ビジネスにおける勝負事の押し引き・駆け引きのコツを「いいの?」と思うほど開帳している。しかも、下敷きになっているのは、社長を退くにあたり氏が、次期社長候補らのために認(したた)めた100項目にわたる「引継ぎの書」だというのだから必読であろう。そこにいたった「覚悟」には、すべてのビジネスパーソンに向けたエールと、やはり愛深き眼差しがあるのである。
桝本壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として数々の人気番組を担当。NSCの講師も務め、令和ロマンなど教え子をM-1に輩出。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が発売中。

