「仕事」にモヤモヤや物足りなさを感じているにも関わらず、現状を変えられずにいるビジネスパーソンは多い。認知科学に基づいたコーチングで10,000件を超えるセッションを行い、多くの人の人生を変えてきたミズカラ代表取締役CEO兼エグゼクティブコーチの村岡大樹氏が、本気で自分を変える方法を伝授。『自分の変え方 認知科学コーチングで新しい自分に会いに行く』の一部を抜粋して紹介する。【そのほかの記事はこちら】

定められた評価軸、他人軸で生きていると、自分の“心の声”が聞こえなくなる
日本の学校や家庭では、自分自身の“心の声”を聞き、それをベースに何かを決めるという機会はあまり多くないように感じます。子どもの頃から、テストでいい成績を取ったか、誰かと比べてよくできていたかなど、誰かに定められた評価軸の中で生きてきました。そのため、“心の声”に耳を澄ませられなくなる人が多いのです。
自分の“心の声”を聞けなくなっている状態で「あなたが本当にやりたいことは何ですか?」「あなたにとって幸せな人生とは?」といったことを尋ねられても、当然のことながらわかりません。そのため、憧れの人の生き方をそのまま真似にしたり、世間がいいというもの、世間に認められるものが自分にとってもいいのだと思ってしまいます。けれども、それらは自分軸ではなく他人軸なわけですから、あなたの“心の声”とはまったく違うものなのです。
さて、あなたはどうでしょうか? 自分の“心の声”を聞き取れていますか? やりたいことはわかりますか? 他の誰かの“声”で厚く覆われ、麻痺してしまい、自分の“心の声”が聞き取れなくなっていませんか? にもかかわらず、他の誰かの“声”を自分の“心の声”と勘違いして生きていませんか?
子どもの頃には、やりたいことがわからないという人はほとんどいなかったのですが、いつの日からかこのような状態になってしまったのです。
自分の“心の声”を聞けなければ、就職活動や転職活動はうまくいかない
こういった他人軸による意思決定は、就職活動でもよく見られます。「同級生の誰もが憧れ、羨むような外資系コンサルティング会社に就職したのに、自分の仕事がまったく楽しいと思えない」というようなケースは、他人軸で選択・行動したために起こる悲劇なのです。
私たちのクライアントの中にも、このような悩みを抱えている方がたくさんいます。世間からすると、超一流と言われるような商社に勤めている女性。しかし実際は、「この会社の看板がなくても自分に価値はあるのだろうか、実力はあるんだろうか」と日々悩みながら転職を考えている。
バリバリの営業で周りに差をつけて、どんどん出世していき、最年少で部長となったが、クライアントを剥がされて、管理職になったら仕事がつまらなくなり、業績が落ちて眠れなくなってしまった。
これらは、実際に私のクライアントに起きていたことです。
また、心の声を聞けない状態の転職活動にも問題が起きています。転職を希望する人の数は、以前よりも飛躍的に増えています。そして、多くの人は転職エージェントなどに登録し、希望の転職先を探しています。けれども、認知科学コーチングの観点から見ると、多くの人が、自分自身を変えることや、自分自身を幸せにすることにはつながらない転職活動をしてしまっています。
転職は「現状起点」ではなく「理想起点」で考えよ
多くの人が、自分を幸せにできない転職活動をしてしまうのは、一体なぜでしょうか? それは、自分の“心の声”をもとにした「理想起点」ではなく、これまでの実績といった「現状起点」で転職先を考えているからです。
転職エージェントの方と話すと、みなさんはおそらく、「あなたの職歴だと、こういう業界の企業に行けますね」「あなたの職歴だと、こういう職種は目指せますね」などと言われるかと思います。
職歴とは、あなたの「今までの実績」ということ。これを起点に転職先を考えるということは、「今までの人生の延長線上」にある仕事しか候補に挙がらないということです。
「今の仕事をしているままでは幸せに生きられない。だから転職したい」と願っているのに、「今までの人生の延長線上」にある転職先に移り、またモヤモヤして転職をくり返してしまうということが起きるのです。
多くの人が行っている「現状起点」の転職活動は、自分が幸せな方向に行くために自分を変えていくという目的から考えると、完全に間違いなのです。
それに対して、「理想起点」の転職活動はどうでしょうか? 「どんな人たちと働きたいのか、どんな仕事をし、お客さんにどんな価値を提供したいのか、どんなことに心から喜びを感じているか?」といった理想をまず明確にし、「そのような人生を送るためには、どのようにキャリアを創っていくのが効果的なのか?」という問いを立て、それを実現させるためにはどうすればばいいのか、と考えていきます。「理想起点」の転職活動は、「現状起点」とは真逆のアプローチなのです。
「現状起点」と「理想起点」。転職活動を行うならば、どちらがあなたの幸せな人生を創っていく上で効果的だと感じるでしょうか。当然ながら、読者のみなさんは理想起点であることに気がつけたと思います。だからこそ、自分の“心の声”を聞くことが重要だということもわかっていただけたのではないでしょうか。
村岡大樹/Daiki Muraoka
株式会社ミズカラ代表取締役CEO兼エグゼクティブコーチ、一般社団法人日本認知科学コーチング協会代表理事。1987年東京都生まれ。2016年、外資系製薬企業で働いていた際にコーチングと出会う。その後、コーチとして独立するも失敗。2021年に合同会社LIMITを設立し、ジム、サウナ、民泊事業を経営(2024年2月事業譲渡)。2022年、株式会社ミズカラに参画し、「キャリアコーチング」「セルフコーチングプログラムREBOOST」を立ち上げる。2023年12月に株式会社ミズカラの代表取締役CEOに就任。キャリアコーチングのセッション数は10,000件を超え、累計受講者数は3,000名を超える。セルフコーチングプログラムREBOOSTの累計は受講者2,000名を突破。現在も、「夢中になれる人生をすべての人に」届けるため、200名を超えるメンバーと共に日々活動している。