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2025.03.17

「クジラの絵」、あなたならどう書く? “伝わらない”の原因は解像度の差にあり

伝えたはずなのに、伝わっていない……。言葉で伝えても、なかなか伝わらない。いくら言葉を尽くしても、自分がイメージすることと伝えた相手がイメージすることが一致しない“うまく伝わらない”現象に頭を抱えるビジネスパーソンは多いだろう。これを解消すべく本当に伝わるコツを、40万部のベストセラー著者でもある脳科学者・西剛志が伝授する。『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』(アスコム)から一部を抜粋して紹介する。【その他の記事はこちら】

結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ

伝わらない人がやってしまっている勘違い

「何度も話したけど、相手が理解してくれなくてうまく伝わらない」仕事でよく聞く悩みです。なんで、何回伝えても、相手は理解してくれないのでしょうか?

理由は、相手のほうが「イメージできていない」からです。 イメージできないことを行動に移すのは難しい。だからうまくいかない。

逆にいえば、相手のイメージをつくってあげることが、イコール伝わると いうことになります。 イメージをつくることをよく「解像度を高める」といいますが、伝わらない場合は解像度が低い状態ということです。

以前、仕事をしていたある編集者からこんな悩みを相談されたことがあります。「本をつくっているときに、ライターさんに原稿をお願いするのですが、これがなかなかうまくいかないんです。『こう書いてほしい』と見本の原稿を渡しているんですが、ライターさんの原稿は見本とはかなり違っていて、いい原稿にならないんです。見本まで見せているのにどうしてうまくいかないんでしょうか?」

悩みというか愚痴というか、そんな感じの話だったのですが、この編集者は大きなミスをしていると思いました。それは、いい見本の原稿だけを見せていたという点です。それを理解してもらうために、私はある問題をこの編集者さんに出しました。

「あなたの思う『クジラ』の絵を描いてください。」

編集者さんに実際に描いてもらったクジラが上です。 一方、私がイメージしたクジラは下でした。 どうでしょうか? 同じ「クジラ」という言葉からイメー ジしているものがこんなに違うのです。

結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ

これは何も私がクジラについて詳しく、編集者さんがクジラに詳しくないということを言いたいわけではありません。要は、同じ言葉に対してイメージしている ものがまったく違うということを実感してもらいたかったのです。 編集者さんの「クジラ」への解像度は低めなので、私の視点でクジラの口やヒレ、質感などを説明しても、理解してもらうことは難しいかもしれません。

実は、今回の書籍を担当していただいている編集者さんに、このような「解像度の高いクジラのイラストをつくっていただけますか?」とお願いしたのですが、一回目に上がってきたものが下のものでした。 もちろん、これでもかなり詳細に描いていただいているので すが、私がイメージしているものは、先ほど見ていただいたようなもっと解像度の高いものだったのです。 編集者さんの悩みも、これと同じ構造です。

結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ
Illustration by Freepick

この編集者さんにとっての「いい原稿」がどんなものかは、 編集者さん自身がよくわかっています。ですから、解像度が高い状態かもしれません。でも、ライターさんにうまく伝わっていないので、ライターさんの解像度が低いままの状態なのです。

そこで、ある方法を紹介しました。それが、いい例だけでなく、悪い例も一緒に見せるという方法です。これを私は「解像度を上げる比較法」と呼んでいます。

この編集者さんはライターさんにいい見本の原稿を見せたと話していました。ただ、いい見本だけを見せても、相手の解像度は上がりません。いい見本と同時に、悪い見本原稿も見せると、相手の解像度が高まります。いいものと悪いものを比較してもらうことで、その差が何かが明確になるからです。「比較」を使うと、伝わる強度がアップします。

この比較法は、こんなときにも活用できます。たとえば、サービス業に就いている人であれば、お客さまへの対応の仕方をいい対応と悪い対応で比較してみる。喫茶店であれば、「いい水の出し方」「悪い水の出し方」「OKないらっしゃいませの言い方」「悪いいらっしゃいませの言い方」「いい料理の盛り方」「悪い料理の盛り方」などです。

あらゆるサービスのシーンで比較をしてみることで、それをまとめれば、その喫茶店のマニュアルができあがります。伝わらないときは、比較を使って相手の頭の中の解像度を高めてください。

脳科学者・西剛志「勝者の思考」
西剛志/Takeyuki Nishi
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて3万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』など海外を含めて累計42万部突破。

TEXT=西剛志

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