できるだけ身体にいいものを食べた方がいいとわかっていても、多忙なビジネスパーソンは日々の献立を考えるのも一苦労。手間をかけずに健康的な食事をしたいならば、“最新の研究に基づいた本当に身体いい食事術” を学ぶのが手っ取り早い。医学的に正しい最高の食事とは? チャンネル登録者数約170万人を誇り、これまでに1万冊以上もの書籍を読破してきたという著者がおくる『結局、何を食べればいいのか?』から、一部を抜粋・再編集して紹介する。 【その他の記事はコチラ】
食事次第で驚くほど脳のパフォーマンスが上がる
アミロイドβ(アルツハイマー型認知症の主要な原因の一つと考えられるたんぱく質)が蓄積しないように、ポリフェノールや質のよい脂質を(主に青魚の生食で)とり、糖質のとりすぎを避ける。これらのポイントを押さえつつ、その他の脳によい影響を与える食品をとり、悪影響のある食品を避けることが、脳の健康を守る鍵となります。
私たちの脳は、精密機械のようなものです。適切な燃料と定期的なメンテナンスがあれば、美しいクラシックカーも長年にわたって性能を発揮し、現役で走り続けることができます。脳においては、その燃料とメンテナンスが日々の食事です。
運動や睡眠も大切ですが、食事という燃料がなければ何も始まりません。想像してみてください。毎日の食事を少し変えるだけで、5年後、10年後のあなたの脳が、より健康で、活発になっている姿を。そして、当たり前の話ですが、私たちの脳は、あれあれ症候群になっても、認知症になっても、車のように乗り換えることはできません。元気に、幸せな老後を過ごすために、日々の食事を改善していきましょう。
また、脳によい食事をとり、質のよい睡眠がとれるようになると、驚くほど脳のコンディションが上がります。ですから、将来の認知症のリスクを避けるだけでなく、今現在の仕事や勉強のパフォーマンスも大きく変えることができるのです。本項では、これまでに紹介した内容のまとめも含めて、具体的に脳にいい食品を網羅的に紹介します。ぜひ食生活の参考にしてください。
アミロイドβの蓄積を予防する食品
アミロイドβの蓄積は、アルツハイマー型認知症の主要な特徴の一つです。これらの食品は、その蓄積を予防または軽減する可能性があります。
・ブルーベリー
ブルーベリーは脳の健康に効果的な果物です。豊富なポリフェノールがアミロイドβの凝集を抑制すると考えられています。フラボノイドやアントシアニンといったポリフェノールには強力な抗酸化作用があり、脳細胞を酸化ストレスから守ります。ベリー類のポリフェノールをしっかりととるには皮ごと食べるのが大切で、ブルーベリーは元々まるごと食べるのが一般的。その点でも優れた食品です。実が小さいので、ぶどうなどに比べて糖質のとりすぎを避けやすい点も最高です。
研究によると、ブルーベリーの摂取は認知機能の改善と関連しており、特に記憶力や処理速度の向上が見られます。2019年に発表されたカナダ農業食品省の論文によれば、毎日3分の1カップのブルーベリーを食べることで、重要な病気や症状のリスクを軽減できるとされています。ヨーグルトに加えて食べると、腸への効果も大いに期待できます。
・緑茶
強力な抗酸化作用があるポリフェノール「カテキン」が豊富な上に、日々の習慣として取り入れやすい飲料です。特に、甘い飲料を好んで飲んでいる方は、ぜひその代わりに緑茶を日常的に飲んでほしいところです。緑茶の主成分・カテキンの一種「エピガロカテキンガレート(EGCG)」に、アミロイドβの凝集の抑制効果があると考えられています。
・ぶどう(特に赤ぶどう)
先述したポリフェノール「レスベラトロール」を豊富に含むぶどう。レスベラトロールには神経を保護する作用があり、アミロイドβの産生を抑制する効果も期待されています。この健康効果を得るためには、皮ごと食べるようにしてください。
・ダークチョコレート
チョコレートやココアの原料・カカオ豆に含まれるポリフェノール「カカオポリフェノール(フラバノール)」は、認知機能の改善に効果的です。また、アミロイドβの凝集を抑制する可能性もあると考えられています。しつこくなりますが、どれだけカカオ含有量が高いものでも、砂糖入りのチョコレートは避けてください。
脳に良質な脂質を提供する食品
その多くが脂質でできている脳の健康にとって、適切な種類かつ、良質な脂質をとることは極めて重要です。
・小さめの青魚
まずおすすめしたいのは、イワシやサンマ、サバなどの小さめの青魚です。DHAやEPAだけで言えばマグロも豊富に含んでいます。ただ、大きな魚は生物濃縮によって水銀の含有量が多い問題があります。できれば養殖より天然、加熱調理より生食をしていただきたいところですが、食べないことに比べればサバの水煮缶でも問題ありません。また、刺身が苦手な方は加熱もやむなしですが、揚げるのは可能な限り避けてください。
・サケ
白身魚のサケもオメガ3脂肪酸が豊富です。DHAやEPAを効率よくとるにはサーモントラウトが特におすすめです。こちらも可能であれば生で食べたいところです。また、アルツハイマー型認知症と関連性があると考えられるビタミンDも豊富に含んでいます。さらに赤い身の理由である天然色素の「アスタキサンチン」は、強い抗酸化作用を持っているので、炎症を防ぎ、血管を守る効果もあります。
・亜麻仁油
植物性オメガ3脂肪酸の宝庫で、抗炎症作用もあります。亜麻仁油に含まれる「α-リノレン酸(ALA)」は、体内でDHAやEPAに変換され、脳の健康に役立ちます。サラダドレッシングや冷製料理に使うことで、手軽に良質な油を摂取できます。先ほども書きましたが、熱に非常に弱いので、冷暗所で保管し、加熱調理には絶対に使わないように気をつけてください。
・くるみ
見た目も脳に似ているくるみは、植物性のオメガ3脂肪酸・ALAが豊富です。くるみの定期的な摂取が、認知機能の改善に効果的とする研究があります。おやつや料理の付け合わせとして、毎日少しずつ摂取するのがおすすめです。
・オリーブオイル
ノールなどの抗酸化物質も豊富に含んでいます。これらの成分によって、脳の炎症を抑え、酸化ストレスから脳を守る健康効果が期待されています。たとえば、オリーブオイルの摂取量が多い人ほど、認知機能低下のリスクが低いことを示す大規模な疫学研究があります。また、オリーブオイルに含まれる「オレオカンタール」という成分が、アルツハイマー型認知症の研究で注目されるたんぱく質「タウ」の蓄積を減少させる可能性も報告されています。
・アボカド
オメガ9脂肪酸が豊富で、ビタミンもバランスよく摂取できるアボカド。脳の血流を改善する効果があり、アボカドの摂取が認知機能向上と関連していることを示唆する研究もあります。
これらの食品から良質な油を摂取することで、脳の正常な構造を維持し、機能を向上させることが期待できます。ただし、油は高カロリーなので、適量を守ることが大切です。
脳の炎症を抑える食品
慢性的な脳の炎症は、認知機能の低下や神経変性疾患のリスク増加を招きます。その悪影響を避けるには、抗炎症作用を持つ食品をとることが大切です。
・ショウガ(生姜)
古くから薬用植物として親しまれているショウガ。「ジンゲロール」や「ショウガオール」といったポリフェノールが豊富で、近年は脳への好影響が注目されています。これらの成分が脳の炎症を緩和する可能性を示唆する研究や、ショウガの摂取が認知機能の改善につながるとする研究もあります。すりおろして料理に入れたり、生姜茶を飲むことで簡単に摂取できるのもよい点です。
・ブロッコリー
ブロッコリーは栄養価が高く、特にその抗炎症作用が注目されています。豊富に含まれるポリフェノール「スルフォラファン」が、脳の炎症を抑制する鍵となっています。ある研究では、スルフォラファンが脳の炎症を軽減し、酸化ストレスから脳を保護する可能性が示されています。また、ブロッコリーに豊富に含まれる抗酸化物質や葉酸も、脳の健康維持に重要な役割を果たします。加熱調理をするなら、栄養素を損なわないように食感を残す程度が理想です。
・にんにく
肝臓にもよい「アリシン」が豊富で、抗炎症作用と抗酸化作用があります。脳の炎症を抑制し、認知機能を維持する効果が期待されています。
・トマト
さまざまながんの予防効果などでも有名な「リコピン」が豊富なトマト。リコピンには神経保護作用があり、脳の炎症を抑制し、酸化ストレスから脳を守る効果も期待されています。生で調理しても栄養価が高く、毎日の食事に取り入れやすい食材です。加工品ですが、トマトジュースも非常におすすめです。
・パイナップル
「ブロメライン」という酵素が豊富で、強力な抗炎症作用があります。ある研究では、ブロメラインが脳の炎症を軽減し、認知機能を改善する可能性が示唆されています。
これらの食品を、日々のバランスのよい食事に取り入れれば、脳の炎症を抑制し、認知機能の維持・向上に役立つことが期待できます。