英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第271回。
友人の不倫を信じられないでいたら言われた“I smell a rat!”
「あのふたりは不倫しているらしい」
先日、学生時代の友人同士のそんなゴシップを耳にしました。
確かにふたりは学生時代から仲が良く、さらに同じ会社に就職し、部署は違うものの、ずっと同じオフィスで働いています。その間、お互いパートナーを見つけ、今はそれぞれに家庭がありますが、ふたりが出会って20年以上経った今になってそんな噂が流れてきたのです。
「そんなことってあるかな? 確かによく一緒にいるのをSNSで見かけるけど、会社一緒だし仕方なくない? てか若い頃ならまだしも20年も経ってそんなことってある?」
そう別の学生時代の友人に話していたら、こう言われました。
I smell a rat!
彼女は高校時代をニューヨークで過ごし、日本の大学に入学、そこで私と友達になり、現在はシンガポールに住んでいます。彼女が一時帰国したというので久々に飲みに行き、そんな話題になったのです。
日頃から英語に親しんでいるからか、感情的になると英語が先に出てくるのが昔からの彼女のクセでした。そんなところがおかしくて学生時代は「ニューヨーク」というあだ名で呼ばれていたものでした。
「スメル ア ラットって何? ネズミ臭いってこと?」
そう聞いてみたら教えてくれました。
smell a rat=疑わしく思い始めている
猫がネズミの匂いを感じとって、クンクンしている様子からきたイディオムだということ。そう言えば日本語でも「それは匂うな」とか「不倫の匂いがするな」なんて言い方があるので、それと同じことだと思われます。
「だって、会社の同僚と取引先に行くのに、わざわざ写真撮ってタグ付けしてSNSにあげないじゃん。絶対それ匂わせだって」
「匂わせ」だからこそ、彼女はそこに「ネズミ臭さ」、つまり疑念を感じ始めたのでしょう。そう言われればその通りで、私もなんだか疑わしく思い始めました。
不倫をSNSで「匂わせ」する理由は“show off”したいから
しかしひとつ大きな疑問があります。
「お互い既婚者なのに、匂わせるってリスク高すぎない?」
そう素直に疑問を口に出したら、また彼女が感情的になりました。
Just she is showing off in front of us!
Showing offの意味もわからなかったので聞いてみたら「みせびらかす」とか「自己顕示する」みたいなことだそうです。SNSを見ている私たちの前で、自己顕示欲を満たしたい、そういうことを言っていたのだと思われます。
いっときの自己顕示欲で、身を滅ぼさないといいな、そう思いながらも、そんな疑念のおかげで“smell a rat”と“show off”というフレーズを覚えられました。20年来の友人同士のあまりにショッキングなゴシップだったので、しばらくこのフレーズは忘れずにすみそうです。