英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第268回。
問題児は“bad apple”
先日でかけた韓国出張の際のできごとです。
夜は、いつもオンラインで話している韓国人の友人に、久しぶりにリアルで会うこともできました。彼女は学校で英語の先生をしているのですが、最近困ったことがあると、参鶏湯を食べながら話してくれました。
There is one bad apple in my class.
(悪いリンゴが私のクラスにある)
「悪いリンゴ」って一体なんでしょうか。教室でリンゴの木でも育てているのでしょうか。しかしよく聞いてみるとこういうことでした。
bad apple=問題児
ドラマ『3年B組金八先生』では、周りに悪い影響を与える問題児のことを「腐ったミカン」と表現していましたが、bad appleはまさにこのこと。同義の表現ではそのままrotten apple(腐ったリンゴ)とも言うということでした。
“One bad apple spoils the barrel”(ひとつの腐ったリンゴが樽の中のリンゴをすべてダメにする)という諺もあり、「ひとつの腐ったミカンは、段ボール箱の中のミカンすべてをダメにする」というあのドラマの中の表現そのものでした。
「樽の中のリンゴ」よりも「段ボール箱の中のミカン」の方が日本人には馴染みがありイメージしやすいので、『3年B組金八先生』ではミカンに変えたのでしょう。
彼女の生徒は、授業中に騒ぎ立て、それを見た他の生徒も一緒になって騒ぎはじめてしまうのだということ。まさしく、他に悪影響を与える問題児です。
しかしこのbad appleはなにも、子供だけに使う言葉ではありません。
コリンズ英英辞典にはこんな例文も載っていました
They made it clear that they were not going to tolerate a bad apple in the United States Senate.
(アメリカ上院議会では、腐ったミカンを容認するつもりはないと明らかにした)
集団の中に、周りに悪影響を与える人物がいれば、それは大人も子供も関係なく「腐ったミカン」といえるでしょう。
韓国で道に迷ったら…
参鶏湯を食べた後は、韓国で人気のフライドチキンを頼み、彼女の愚痴を聞いていたらあっという間に夜は更け、解散となりました。
ちなみに私はハングル文字を読むことができず、さらに韓国ではGoogle Mapがあまり機能しないので、道に迷ったらアウト、そう思ってずっと緊張して移動していました。
けれど一度、どうしてもわからなくなり、道行く男性に意を決して英語で尋ねたことがあります。その男性は、流暢な英語で道案内してくれ、さらには「韓国ではGoogle MapじゃなくてNever Mapがいいですよ」と丁寧に教えてくれ、その優しさにあやうく私は恋に落ちそうになってしまいました。
日本にいる時でも、そんなふうにスマートに道案内ができる、それくらいの英語力をつけたいと思った出張でした。